Intelが今年1月のCES 2022で発表したモバイル版のAlder Lakeだが、このうち、絶対性能を重視した45W枠のAlder Lake-Hシリーズにおける最上位モデル、「Core i9-12900HK」を試す機会を得たのでレポートしたい。今回は、このCore i9-12900HKを搭載するMSIのゲーミングノートPC「GE76 Raider 12U」でテストを行った。

  • Alder LakeなCore i9-12900HKの実性能、RTX 3080搭載のMSI「GE76 Raider 12U」で試す

    Core i9-12900HKを搭載するMSIのゲーミングノートPC「GE76 Raider 12U」。GeForce RTX 3080 Ti Laptopも入って価格は50万円くらいになり高価だが、史上最速の称号は魅力

GE76 Raider 12UはMSIから日本市場向けモデルも発表されている(製品ページはこちら)。ただ、今回テストしたGE76 Raider 12Uはこの発表済みのどのモデルとも微妙にスペックが違っていたので留意いただきたい。テスト機のスペックは以下表に載せておくが、GE76-12UHS-222JPのディスプレイをフルHDの360Hzに変更したあたりが違いとなる。

GE76 Raider 12U
ディスプレイ 17.3型 フルHD(1,920×1,080ドット) 360Hz
CPU Core i9-12900HK
メモリ DDR5-4800 32GB(16GB×2)
GPU GeForce RTX 3080 Ti Laptop
ストレージ PCIe 4.0 NVMe SSD 1TB
OS Windows 11
  • デスクトップのハイエンドゲーミングPCクラスの性能が持ち運べるのだと考えればアリ寄りのアリなわけだが、それでも17.3型で重量も2.9kgともなると、やはりデカさへの覚悟は必要

  • ゲーミングPCということで、光り物も充実

対比としては、ちょうど前世代の最上位にあたるCore i9-11980HK(Tiger Lake)を搭載する同じくMSIのゲーミングノートPC「GE76 Raider 11U」の昨年8月のベンチマークスコアを再掲載する。こちらの11U、ディスプレイは17.3型フルHDの360Hzで、GPUはGeForce RTX 3080 Laptop、メモリはDDR4-3200 32GB(16GB×2)、ストレージはPCIe 4.0のNVMe SSD 1TBという当時最高峰のスペックを誇る。

比較に際しては、OSやドライバの世代違いがあり、GPUがRTX 3080 Tiに強化された分も差し引く必要があるので、とりあえず新旧の最高峰でどのくらいの性能差が出るのかの目安程度として欲しい。今後、例えば近日中にリリースされるであろうAMD Ryzenの対抗モデルなどと並べる機会があれば、改めて再テストしてみたいと思う。

  • CINEBENCH R23のスコア

CPU処理によるCGレンダリングを実行することでストレートにCPU性能を計測してくれる「Cinebench」の結果をご覧いただきたい。Core i9-12900HKはP-Core×6+E-Core×8の14コア/20スレッド、一方のCore i9-11980HKの8コア/16スレッドという構成だ。Core i9-12900HKの方がコア数もスレッド数も多く見えるが、内容はP-Core(Performanceコア/高性能コア)とE-Core(Efficientコア/省電力コア)の混成なので、実際どうなるのか気になるところだったが、シングルコアのスコアで約16%増、さらにマルチコアでは約22%増とかなり優秀な結果になった。

Core i9-12900HK Core i9-11980HK
開発コード名 Alder Lake Tiger Lake
コア数 14(P-Core×6+E-Core×8) 8
スレッド数 20 16
Max Turbo Frequency 5.0GHz(P-Core) 5.0Ghz
L3キャッシュ 24MB 24MB
  • PCMark 10のスコア

続いてはPCMark 10の結果。内訳は一般アプリ処理の「Essentials」、オフィスアプリ処理の「Productivity」、クリエイティブアプリ処理の「Digital Content Creation」で、どれもスコアは伸びているが、CINEBENCHの後だといまいちパッとしない。以前にデスクトップ版Alder Lakeをテストした際の結果も確認(そのグラフはこちら)すると、物理コア×8基のCore i9-11900K(Rocket Lake)に対して、P-Core×8基のCore i9-12900K(Alder Lake)のスコア向上は10%無い程度だったので、もしかすると、まだE-Coreが効果的に動かないテストなのかもしれない。

そしてゲーミング性能については3DMarkのスコアを掲載する。あとは実際のゲームタイトルのベンチマークテストで、FINAL FANTASY XV WINDOWS EDITION ベンチマークの設定項目を、せっかくなので全て最高値にした場合のスコアも採ってみた。

  • 3DMarkのスコア。GPUがGeForce RTX 3080→GeForce RTX 3080 Tiになった分も考えると相応なスコアアップだろう

  • 項目別で見ると、Core i9-11980HKはTime Spyでおおむね1万に届かないCPUスコアが、Core i9-12900HKだとこんなスコアになっていたり、差がかなり大きく出る部分もある

  • FINAL FANTASY XV WINDOWS EDITION ベンチマーク。ここまで盛って4Kにしても「やや快適」で踏みとどまる

というわけで、Alder Lake-HはWindowsゲーミングノートPCの最高峰を更新しているわけだが、これで益々楽しみになるのがZen 3+ベースのモバイル版Ryzen 6000シリーズ、中でも45W枠の最上位モデルとして予告されているRyzen 9 6900HXとの頂上対決だ。AMDは先日、Ryzen 9 6900HXがCore i9-11980HKに対して1.08倍~1.47倍高速だという比較データ(資料はこちら)も出している。デスクトップにおいては昨年末、IntelがAlder LakeによってAMDのZen 3への逆襲を果たすという構図であったが、今年の春には、再び熱い最速争いを見ることができそうだ。

  • 参考までにSpeedometerも試したが、M1 Maxとトップ争いをするようなスコアが出せた