ゲーミングデバイスの中でもディスプレイの性能向上はかなりのペースで進んでおり、2020年の冬に「WQHDが流行ってきた」などと感じていたのも今は昔。日々新製品情報を眺めていると、4K(3,840×2,160ドット)という高解像度で144Hzの高速駆動に対応し、さらに27型よりも大きい32型だったり、さらに大きいものでは48型の製品も出てくるようになりました。

こうなってくると、いちゲーマーとして気になるのはその使い心地。どうせなら“最強”なもので体験してみたいなと思ったので、今回はASUSの「ROG Swift PG32UQX」で最新ゲーミングディスプレイを体験したレポートをお送りします。

  • ASUS「ROG Swift PG32UQX」

まず今回試した製品についておさらいしておくと、ROG Swift PG32UQXは32型の大画面で4K解像度(3,840×2,160ドット)、144Hz駆動に対応するという「大画面/高解像/高リフレッシュレート」が三拍子揃ったゲーミングディスプレイのフラッグシップモデル。パネルはIPSで、さらにバックライトにはローカルディミングに対応するミニLEDを組み合わせています。もちろんHDR(DisplayHDR 1400)にも対応し、G-SYNC ULTIMATEも利用可能。気になるお値段は35万円前後という超ド級プライスとなっており、まさに最強の称号にふさわしい仕様となっています。

  • やってきた「ROG Swift PG32UQX」のパッケージ。32型というだけあって巨大でした

  • 開けたところ。大きい面がガバリと開くタイプで中身にアクセスしやすいです

  • 付属品は超豪華。高性能なディスプレイに対応する映像ケーブルがすべて付属し、ライティングのカスタマイズグッズやケーブルホールを隠すカバーもついていました

  • ケーブルはROGのエンブレムが入っているこだわりよう。汎用品ではありません

  • 驚いたのはiPhoneよりも大きな充電器。なんと最大280Wもの出力に対応するとあり、消費電力の大きさを伺わせます

  • 底面ネジ一本だけでかんたんに固定できる足を装着したところ。足は左右に30度ずつくらい方向を変えられて便利です

  • 天面には三脚穴があり、カメラを据え付けて快適に利用できそう

  • 映像入力端子部。HDMI 2.0×3とDisplayPort 1.4×1を備え、USBハブ機能もあります

  • 操作部はジョイスティックではなくダイヤル式

  • OSDメニューの操作レスポンスは高速で快適そのもの。ぼやけたり滲んだりしているOSDメニューを搭載した製品が多い中、くっきりした表示に驚きました

32型ともあってパネル自体がとてつもなく大きく感じましたが、それを支える脚もまた巨大。上下左右の可動域をそれなりに確保するため、前後に大きく脚が張り出しています。マウス用にデスクのスペースをしっかり確保したい場合は、ディスプレイアームの用意が必須になりそう。脚を除いた重さは約7.6kgとあるので、耐荷重10kg以上のしっかりしたアームを選んでおくのがベターです。

4KとHDRを初体験。超プレミアムなゲーム体験に感動

筆者が普段愛用しているのは27型ディスプレイで、解像度はWQHD(2,560×1,440ドット)。普段使いはもちろん、ゲーミングでも全く不便に感じることはありません。フルHDディスプレイからの乗り換えにあたっては「文字がくっきりしたなあ」と感じており、快適に使ってきました。

しかし、いざ4Kディスプレイを使ってみると“WQHDよりも”段違いに高精細でビックリしました。27型から32型に大型化したことを差し引いても、画素ピッチで言えば約109DPI(27型)から約138DPI(32型)へと向上。割合でいうと約30%も精細感が増したことになり、情報量の増加はひと目見てわかるレベルです。

  • ゲーム本来の高解像度テクスチャを堪能。あまりに美しい

また、個人的に驚いたのは意外と4Kでもゲームが普通に動いたところ。『BF 2042』を主に試しましたが、GPUにボトルネックがないゲームタイトルの場合はあまりフレームレートが低下しませんでした。もちろんGeForce RTX 3080 Tiという強力なGPUを組み合わせているのもありますが、それでもパフォーマンス面での悪影響はそこまで感じません。『Apex Legends』なんかも4Kで普通にプレイできたので、これまであった4Kゲーミングへの畏怖感は少し薄れることになりました。

さらに、ROG Swift PG32UQXではHDRも利用可能。ピーク時1,400cd/平方メートルの大輝度や、1,152エリアで分割されたローカルディミング機能によってDisplayHDR 1400に準拠し、かなり輝度差の大きな画面表示が楽しめます。

さっそくWindows 11の設定からHDRを有効化したところ、デスクトップ画面が白くかすみました。疑心暗鬼になりつつゲームを起動したところ、ゲーム内のHDR設定項目が有効化され、HDR機能を利用できるようになりました。

  • 『BF 2042』の画面表示が特に美しい。空はどこまでも晴れ渡り、戦闘車両が泥濘に刻んだ轍はその柔らかさが伝わってくるかのようです

このHDR表示のインパクトもかなりのもの。上空を飛行する戦闘ヘリコプターを見上げてみれば、太陽が画面に映って少し眩しく感じるレベルです。暗部は不必要なバックライトがカットされて引き締まり、それでいて視認性を損ねていません。建物の中と外で明暗が極めて大きくなる戦闘環境では、特にダイナミックレンジの広さを体感することができました。

なお、バックライトを細かく制御するローカルディミングは設定でオフにもできます。普段使いではマウスカーソルを照らすためにバックライトがそこだけ点灯し、ブルーミングでボンヤリ光ってしまうので、OSDから適宜設定を変更しておくと良さそうです。

30万円オーバーのフラッグシップモデルは格が違った

ゲーミングディスプレイとして、おおよそ思いつく限りほとんど最強モデルと言っても良い「ROG Swift PG32UQX」で、最強ゲーミングディスプレイについて体験してきた本記事。27型WQHD/165Hzディスプレイで満足していたのに、32型4K/144Hzディスプレイのすごさは想像を超えていました。解像度の精細感はWQHD比でもはるかに上で、HDRの表現力にはビックリ。

個人的にネックだと感じたのは、脚(スタンド)が大きすぎて設置性に難がある点と、55v型の4K有機ELテレビすら購入できる超ド級プライス、最大280Wにもなる莫大な消費電力、HDMI 2.1非搭載で最新ゲーム機には向かないところの4点くらいでしょうか。ちなみに、PCゲーミングに特化した本製品に対し、似たようなスペックでHDMI 2.1も搭載する「ROG Swift PG32UQ」もラインナップしているので、PlayStation 5などと組み合わせて使いたい場合はこちらがオススメです。

【4K HDR】World’s First Mini LED Gaming Monitor- ROG Swift PG32UQX | ROG