ある日、メーカー各社から日々発表されているゲーミングディスプレイのラインナップを見ていると、「27インチ」「WQHD解像度(2,560×1,440ドット)」「リフレッシュレート165Hz動作」というスペックを満たした製品がちらほら出始めていることに気づきました。少し前よりも高速なリフレッシュレートで、しかも高解像度。27インチの大型サイズはゲーム以外に使うにしても快適そうです。

筆者がこの3年くらい使っていたゲーミングディスプレイは、24インチ曲面/フルHDで144Hzというもの。特に不満を感じていたわけではありませんが、一度気になると解像度とサイズが小さく感じられるようになってしまいました。ふと価格比較サイトをチェックすると、なんと同サイト限定モデルが39,800円(消費税、送料込)で販売されています。うっかりその場で購入してしまいましたが、大人気のためか国内在庫が払底しているようで、注文してからしばらく待つこと約1カ月後の到着となりました。というわけで今回は、27インチWQHDゲーミングディスプレイ HP「OMEN 27i」をレビューしてみようと思います。

  • フルHD/24インチから卒業!WQHD解像度の27インチディスプレイ「OMEN 27i」レビュー

    HP「OMEN 27i」

マットブラックで均一な厚みのシンプルデザイン

届いた箱は27インチなりの大型サイズ。取り出すのは少し大変ですが、設置に複雑な手順は必要なく、かんたんに組み立てられました。1つ欠点を挙げるとすれば、アームとディスプレイの固定を六角棒レンチで行う点で、しかも少し小さい口径だったことでしょうか。工具は付属していましたが、破棄したり紛失すると手持ちの工具がドライバーしかない場合は困りそうです。

  • 曲面でもウルトラワイドでもないので、思ったよりはコンパクトな製品パッケージ

  • 付属の六角レンチ

スタンドは正方形を斜めに傾けたような"◆"型。手前が表示部から若干張り出しており、やや邪魔です。エレベーター型のアームは上下の可動域がかなり広く、角度も86~110度の範囲で調節できます。スイーベルやピボットはできないので、もし必要な場合は別途ディスプレイアームを使いましょう。スタンドの張り出してくる位置には反射板を備えており、ディスプレイ底部のLEDライティングを跳ね返して光ることができます。

ライティングは本体OSDの他、PCに勝手にインストールされる「OMEN Command Center」からも設定できます。いらないかなと思って削除しましたが、消しても消してもMicrosoft Storeから入ってくるので、諦めて入れておくと良いでしょう。このユーティリティがディスプレイの設定を上書きするようなので、PCを再起動するたびにライティングが勝手についてしまう場合はこのユーティリティでオフにすると消灯できます。

  • スタンドは正方形をしています

  • 高さはかなり自由に調整できます。余談ですが、奥のディスプレイはPCとつながっておらず、Fire TV Stick専用です

  • アーム上端はヘッドホンスタンドとしても利用可能

  • イルミネーションはディスプレイのOSDとユーティリティから設定できますが、本体ではなくユーティリティが設定を上書きするようです

  • ゲーミング製品なのでもちろん光ります。よほど暗い部屋では間接照明としても使えるかも

  • ディスプレイ下部からスタンドに照射されるLED。用途はよくわかりません(リーディングライト?)

本体のデザインは、パネル部と端子部で2枚の板が組み合わさったようなシンプルな外観でなかなかお気に入り。非表示領域はベゼルを含めて10mm程度と十分に狭額縁で、パネル部と高低差のないシームレスなデザインは、画面が映る一枚板がテーブルに浮いているようなスッキリとした印象です。

また、端子部は斜めに接続するようになっており、スタンド根本のスルーホールで軽くまとめられるようになっています。一般的なディスプレイ製品には端子部で内側のダイキャストフレームを晒しているものも少なくありませんが、本製品ではそのあたりのあしらいにも気を配られており、とても好感触です。

  • あしらいも美しい端子部。HDMIとDisplayPortそれぞれ1つずつしかない点は必要最小限と言えそう

表示品質としての性能に寄与するものではありませんが、オーディオ出力の音質がなかなか良い点も特筆事項です。ボリューム調節機能はありませんが、ラインアウトとして使用すれば十二分に良好な音質を楽しめます。

27インチWQHDはフルHDよりも大きくて快適

さあてどんなもんか、と電源ケーブルとDisplayPortケーブルをつないでいざ点灯。大きい!! これまで長い間24インチを愛用してきた筆者にとって、27インチが眼前に迫る大迫力は相当のものでした。前まで使っていた製品が曲面ディスプレイだったこともあり、その大きさは3インチ差という文字では言い表せないものがあります。

大きさで精細さが損なわれてしまうのでは? という心配も杞憂でした。フルHD/24インチの画素密度は92dpiですが、WQHD/27インチの画素密度は109dpi。たった17dpiの差といえど、割合で言えば約16%。実際目で見れば明らかに差があり、くっきりしていてキレイです。ちなみにスケーリングも必要なく、100%表示で問題なく使えています。

フルHD比で横に640ピクセル、縦に360ピクセル分表示領域が広がったことで、ずいぶん広くいろんなウィンドウを使えるようになりました。個人的にはフルHDのウィンドウをフルスクリーンではなく、ウィンドウモードで表示できる点がとても快適です。

  • 等倍表示のマイナビニュース。左右に余白が大きく広がりますが、慣れるとこのくらいがすっきりして見えるように感じます

  • フルHD表示のアプリケーションをウィンドウモードで使えるところが特に便利に思いました

リフレッシュレートも165Hzともなると非常に高速でまさに"ヌルヌル"。マウスカーソルは吸い付くように移動し、ブラウザのスクロール中でも文字が読めるレベルです。とはいえ、もともと144Hzディスプレイを使っていたので向上幅といえば微妙なところ。差はあるかないかでいえば若干違うような気がしないでもありません。使い始めてしばらくすると、慣れてわからなくなりました。

このあたりで製品の詳しいスペックについておさらいしておくと、サイズは27インチで、解像度はWQHD(2,560×1,440ドット)、垂直走査周波数は最大165Hzで、輝度は350cd/平方メートル、コントラスト比は1,000:1、DCI-P3を98%カバーします。非光沢nano IPSパネルを採用しており、3辺狭額縁のフレームレスデザインで、上下左右のベゼル部は約3mm、パネル内に非表示領域が約6mmあります。

i1Display Proでキャリブレーションに挑戦

発色も申し分なく、白いページを見ても変に色が転んでるようには見えません。箱出しで十分な品質の画面表示が得られているように見えます。このまま使っても問題なさそうですが、せっかくなので編集部にあったi1Display Proを使用し、キャリブレーションしてみました。

デバイスをUSB端子に差し込み、エックスライト公式サイトからキャリブレーションツール「i1Profiler」をインストールします。最新バージョンは記事制作現在v3.2.0でした。フローとしてはまずディスプレイの素性を調べ、そのデータをもとにICCプロファイルを作成し、適用して完了という流れになっています。

  • i1Display Proのメイン画面。デバイスをUSBにつなぐとライセンスが認証され、機能が利用できるようになる

  • さまざまな色が表示され、それを評価していくのを眺めています(撮影の都合、モアレが出ています)

キャリブレーションを行った結果は以下のようになりました。あまりに明るくても眩しいので目標輝度を100cd/平方メートルに設定して行いましたが、この輝度ではコントラスト比が906.532:1と、公称値の1,000:1に届かないようです。ホワイトバランスは良好で発色も十分に良く、気になるほど黒が浮いて見えるわけでもないので、このまま使っています。

  • 明るさが変わっても十分に均一な色表現が行われています

  • ディスプレイプロファイルが登録される

GeForce GTX 1070にはやや荷が重いWQHDゲーミング

ところで、購入したのは目下FPSゲーミング用途。24インチディスプレイを長い間使っていたので、慣れられるか不安でしたが、2時間ほどマウス感度を調整しながらプレイしているとほとんど気にならなくなりました。それどころか視界いっぱいにゲーム画面が広がって没入感が高まり、かなり良い感じです。

そして最も重要なのが高速な描画性能です。ディスプレイ側の解像度とリフレッシュレートが上がったので、描画負荷の軽めなCSGO(Counter-Strike: Global Offensive)やVALORANT、Overwatch、Rainbow Six Siegeを用い、ディスプレイが誇る165Hzがちゃんと使えているかをチェックしてみました。グラフィックスカードにはGeForce GTX 1070を用い、いずれも簡易的な確認ということで、ゲーム内のFPSカウンターを表示しています。

  • CSGO(Counter-Strike: Global Offensive):272fps

  • VALORANT:278fps

  • Rainbow Six Siege:111fps

  • Overwatch:130fps

競技性の必要から、極めて高いパフォーマンスを備えたCSGOとVALORANTでは十分高いフレームレートで描画できているようですが、軽めなタイトルであるR6SやOverwatchですら165fpsに届きません。これ以上パフォーマンスを高めるにはレンダースケールを多少落とす必要がありますが、そうなると描画品質が著しく低下してしまうのが悲しいところ。

超軽量ゲームタイトル以外でディスプレイの本領を発揮するには、倍以上のグラフィックスパワーが必要になりそうです。特にいま一番楽しんでいるApex Legendsがかなり重く、エフェクトが多いマップの一部エリアを避けて通る必要があったりする点が不便です。

  • Apex Lengends(Steam版):78fpsしか出ていません

80fpsというと60Hzディスプレイでは飽和して十分に高速に見えますが、165Hzディスプレイで垂直同期を切っていると、ティアリングがはっきり見えてかなりカクカクしています。困ったなあと思いつつ武器を集めて戦っても、乱戦で各種エフェクトが画面いっぱいに飛び散ると描画負荷がかなり大きく、当たる弾も当たらなくなってしまいます。

GeForce GTX 1070を導入した時は、あまりのパフォーマンスの高さにこれでずっと遊べるなあと思っていたのですが、もう購入から丸4年以上経過しており、日進月歩のゲーミング環境で言う"ずっと"はすっかり終わりつつあるようです。Pascal世代のグラフィックスカードはリアルタイムレイトレーシングやDLSSにも対応しておらず、このあたりが潮時なのかもしれません。折しも近頃、NVIDIA GeForce RTX 3000シリーズとAMD Radeon RX 6000シリーズが発売されており、さまざまな新機能が利用できることはもちろん、"1440p Gaming"と銘打たれた製品が登場するたびに否が応でも目に付きます。

フルHDのPCディスプレイ、かなり前から使っていませんか

以上、27インチ/WQHD/165Hzディスプレイについてお送りしました。一点申し添えておくとすれば、ディスプレイの高い性能をすべて引き出すためにはDisplayPort接続と、十分なパフォーマンスを備えたグラフィックスカードを揃える必要があるということです。よほど描画が重いゲームをしない限り問題ありませんが、ノートPCの一般的なHDMIではうまく動作しなかったり、内蔵グラフィックスと小規模なメモリの組み合わせでは、画面の描画がもっさりしてしまう場合があります。

とはいえ、この27インチ/WQHD/165Hzというスペックはなかなか良いバランスだと感じます。4K解像度ほど要求スペックが高くもなく、大きすぎず設置性も良好で、高解像度すぎず等倍表示が可能。高速リフレッシュレート表示はあらゆる描画が"ヌルヌル"になり、ゲーミング以外のあらゆる用途でも抜群に快適。ゲームをPCでやらない人にも高リフレッシュレートディスプレイはとてもオススメです。

また、筆者はこれまでなんとなく保守的で、24インチからのサイズアップをあまり考えてきませんでしたが、27インチでのゲーミングは意外とすぐに慣れることができます。24インチ/フルHDでストイックなゲーミングに挑んでいるPCゲーマーは、ぜひ27インチ/WQHD/165Hzディスプレイの導入を検討してみて欲しいです。ゲームを含むすべてのPCライフが、とても快適になるので。