米Microsoftは1月18日(現地時間)、米ゲーム大手Activision Blizzardを買収すると発表した。Activision Blizzard株1株に95ドルの現金を支払い、買収総額は687億ドルになる。規制当局による審査などを経て、2023年度に買収手続きが完了する見通し。成立すれば、Microsoftにとって過去最大の企業買収になり、同社はTencent(騰訊控股)やソニーに次ぐ世界第3位のゲーム企業になる。
2010年代以降のMicrosoftによる大型買収は以下の通り:
- 2011年5月:Skype Technologies(コミュニケーション):85億ドル
- 2012年6月:Yammer(企業向けソーシャルネットワーキング):12億ドル
- 2013年9月:Nokia携帯電話事業:72億ドル
- 2014年11月:Mojang(ゲーム:「マインクラフト」):25億ドル
- 2016年12月:LinkedIn(ビジネス用SNS):262億ドル
- 2018年10月:GitHub(ソフトウェア開発プラットフォーム):75億ドル
- 2020年3月:Affirmed Networks(5Gネットワーク): -
- 2020年9月:ZeniMax Media(ゲーム:「フォールアウト」など):75億ドル
- 2021年4月:Nuance Communications(音声認識):197億ドル
- 2022年1月:Activision Blizzard(ゲーム):687億ドル
Activision Blizzard買収は、これまでの過去最大だった2016年のLinkedIn買収(262億ドル)を大きく上回る。2020年には「フォールアウト」や「Doom」といった人気ゲームを開発するBethesda Softworksを傘下に持つ米ZeniMax Mediaを買収(75億ドル)しており、高品質なゲームコンテンツを成長の原動力にしようとするMicrosoftの姿勢が伝わってくる。
Activision Blizzardは、「コール・オブ・デューティ」シリーズ、「オーバーウォッチ」、「ディアブロ」シリーズ、「ウォークラフト」シリーズ、「ギターヒーロー」、「キャンディクラッシュ」といった数々の人気ゲームを手がける著名ゲームスタジオを傘下に持つ。月間アクティブプレイヤー数は約190カ国で4億人に達しようとしている。
MicrosoftのCEO、Satya Nadella氏は発表の中で「ゲーミングは、今日の全てのプラットフォームにおいて、エンターテインメントの中で最もダイナミックでエキサイティングなカテゴリーであり、メタバース・プラットフォームの発展において重要な役割を果たすことになるでしょう」と述べている。
MicrosoftはActivision Blizzardのゲームタイトルを、同社のゲーミングサブスクリプションサービス「Xbox Game Pass」「PC Game Pass」でも提供する計画を明らかにしている。Game Passには「Ultimate」プランも用意されており、同プランでは多くのゲームをXbox、Windows PC、モバイル(Android)、クラウドゲーミング(Macを含むPC、iOSを含むモバイル)で遊べる。同社はActivision Blizzard買収の発表で、Game Passの登録者数が2500万人を超えたことを明かした。前回、昨年1月の公式発表(1800万人)から1年で700万人の増加を達成した。Game Passの有料メンバーが増えるほど、Microsoft Gamingのゲーム開発力が高まり、またGame Passに参入するゲーム会社が増えるプラス循環が期待できる。
ゲーム市場では、従来のゲームハードウェアに分類された競争からゲーミングサービスの競争に市場の勢力争いがシフトし始めている。それゆえに、巨大テックの独占への逆風が強まる中で、Windowsやクラウドサービスも展開するMicrosoftによるゲーム大手の買収は規制当局による厳しい審査に直面する可能性が指摘されている。一方、Activision Blizzardは昨年から、Blizzard Entertainmentにおけるセクハラや差別など倫理・コンプライアンスを巡る相次ぐ不祥事で社内外から批判を浴びている。一部の従業員や株主がCEOのBobby Kotick氏の解任を求め、従業員の退職や流出も続いている。Microsoftによる買収は、そうしたActivision Blizzardが抱える重大な課題の解決につながる可能性も指摘されている。
買収完了後にActivision Blizzard事業はMicrosoft Gamingに組み込まれ、Microsoft GamingのCEO、Phil Spencer氏に事業報告を行う。MicrosoftはActivision Blizzardの倫理・コンプライアンス問題への対応には言及していない。Bobby Kotick氏がActivision BlizzardのCEOを継続するが、買収完了後のMicrosoftへの移行期間を通じて体制が見直されるとみられている。