どういった領域がターゲットですか?
柴田氏:2002年からECの物販に対する後払いサービスを提供してきています。最近では、物販から電子コミックなどのデジタル領域にもサービスを拡大しています。
また、BtoB向けのサービス「NP掛け払い」も堅調に伸びてきています。取扱高でみると約760億円で前年比約30%の成長を続けているので、完全に2本目の柱となっていますね。例えば、印刷会社だと、取引先からの「出来上がった現物を見てから代金を支払いたい」といったニーズに対応するために導入しています。
また、ベンチャーやスタートアップも、経理の人員コスト不足で導入しているケースも多いです。一番アナログな領域でいうと、卸売りの領域もどんどん増えています。卸売り業界は集金がかなり面倒で。その場でお金が無くて、再度訪問しないといけないといったケースが多いです。
ほかにも、サービス分野にも進出しています。例えば、修理・メンテナンスや家事代行、不用品回収などがあげられます。こういう訪問型のサービスって払い方が決まっていないケース多いじゃないですか。後払い決済を導入することで、購入者は当日の現金準備が不要で、事業者も集金・経理業務の手間から開放されます。
さらに、実店舗へのサービス展開にも注力しています。会員制の後払い決済サービス「atone」では、実店舗でQRコードを表示することで後払いサービスが使えます。大手コンビニはどこでも使えますし、アパレルショップにも導入しています。ECの物販からECのデジタル、街中でのリアル店舗での決済、すべてに対応しています。
2018年8月には、BtoC台湾向け決済サービス「AFTEE(アフティー)」も始め、海外にも進出しています。
与信の仕組みは?
柴田氏:一人でも多くのユーザーを通すために開発された独自の与信モデルを構築しています。まず後払いサービス利用時に必要な情報は、名前、住所、電話番号、メールアドレスと、ECでモノを買うとき入力する情報とほぼ同じです。当社においては、与信の通過率は約97%で、未払い率は0.56%と、非常に通りやすいし未回収も少ないというのが現状です。
これを達成できている理由は3つあります。1つ目は、蓄積データ量が国内最大手で、延べ3億件以上取引をこなしてきている実績があげられます。2つ目は、取引の8割~9割がリピーターであるということです。過去にサービスを利用して、きちんと支払ってくれた人は次も同じように払ってくれる可能性が高いからです。
そして3つ目は、20年間与信のノウハウを積み重ねて、システム開発を続けている内部努力のおかげです。AI(人工知能)で99%の自動審査を行い、リスク判断の難しい取引やNGと思われる取引を5人~10人程度のチームが目視で確認しています。
審査を甘くし過ぎると未払い率が上がってしまい、逆に厳しくすると審査通過率が下がってしまう。ここが難しいところです。だからこそシステム開発には注力しています。
テクノロジーと人力を組み合わせて与信の精度のを向上させ、何か発見したことはシステム開発につなげる。このサイクルを20年間ずっと回し続けています。
後払い決済にデメリットはありますか?
柴田氏:一つあるとすると、一取引ごとに請求書を送らなければいけないことです。請求書の発行コストや郵送コストがありますし、コンビニ決済の手数料が一件ごとにかかってしまいます。この手数料がなければ、決済シェアはもっと高まると思います。これは長年の課題ですね。
当社ではこの課題に対応するために「atone」という会員制の後払いサービスを開始しています。会員登録をして使うと、月で取りまとめて翌月一括請求なので、3件4件取引しても請求書が一元化されます。支払いはNP後払い同じくコンビニで行い、ポイントも0.5%分貯まります。
上場の狙いは?
柴田氏:当社のビジネスは加盟店・ユーザーからお金を預かるため信用度は重要であり、その観点で上場は必須と考えていました。その意味で、できるだけ早くに上場したいと考え、実現したのがこのタイミングとなります。
上場を機に全事業を強化していく方針ですが、特に2本目の柱であるBtoBの領域に注力します。足元でも案件が増えてきていて、ここは加速するだろうなと見込んでいます。
それに向けて、マーケティング投資をさらに強化します。知られさえすれば伸びる事業が多いと思っています。購入者様側に知られることも大事ですし、サービス事業者側にも知ってもらうことも大事。2026年の3月期までに、取扱高1.2~1.6兆円を目指します。