Windows 11の「Microsoft Edge縛り」が一部の間で物議を醸していた。ことの始まりはWindows 11の「既定のアプリ」だ。Windows 10で既定のアプリを切り替えるには、Webブラウザーを1つ選択すればよい。だが、Windows 11はWindows 10の「アプリごとに既定値を設定する」が標準化し、ファイルの種類およびプロトコル単位で切り替えなければならない。

  • Windows 11の「既定のアプリ」。対象アプリ(たとえばGoogle Chrome)を選択してから、ファイルの種類やプロトコル1つ1つ既定のWebブラウザーを切り替える

筆者は既定のWebブラウザーとしてCanary版Microsoft Edgeを選択しているが、1つ1つ安定版Microsoft Edgeから変更するのは煩雑な作業である。Microsoftは海外のIT系ニュースサイトThe Vergeに対応を約束していたが、その間に発生したのが、「microsoft-edge」プロトコル問題だ。

Windows 11のウィジェットなどに表示されたリンクはmicrosoft-edgeプロトコルを使用してWebブラウザーを起動する。だが、Windows 11にGoogle Chromeをインストールしても、同プロトコルを変更する設定項目は現れない。そのため利用者はGoogle ChromeとMicrosoft Edgeの併用を迫られる。Windows 10でも同プロトコルは使用されていたが、Windows 11の煩雑な設定操作で露見した形だ。

そこで、プロトコルをフックする「EdgeDeflector」が注目を集めたが、Windows 11 Insider Previewでブロックされてしまった。EdgeDeflector作者であるDaniel Aleksandersen氏による怒り声はブログ記事に投稿されているので、一読してみてほしい。

MicrosoftがMicrosoft Edgeを熱心に推奨し、利用をうながすのは理解できる。Bing利用率の向上とともに、収集したデータを機械学習に用いるなど、多様なデータ活用が目的の1つにあるのだろう。だが、ユーザーは好きなWebブラウザーを使いたいのだ。たとえばMicrosoft EdgeとGoogle ChromeはChromiumベースのため大差はない。しかし、スマートフォンでも保存したパスワードを利用したいなど、情報の統一を目的にGoogle Chromeを選択するユーザーもいるだろう。Microsoftの強引な姿勢は同社を長年追いかけてきた筆者から見てもいただけない。

と、ここまでがWindows 11が登場した2021年10月から最近までの流れだ。Microsoft開発陣の意思がすばやく反映されるWindows 11 Insider Previewで変化が確認できたのは、現地時間12月1日にリリースしたビルド22509だ。「既定のアプリ」に、任意のWebブラウザーを既定のアプリとして設定するボタンが加わっている。ただし、冒頭で述べた既定Webブラウザーの変更は簡単になったものの、Google Chromeなどを選択した場合は、変更対象のプロトコルにmicrosoft-edgeは含まれていない。つまり、Microsoft Edge以外のWebブラウザーをメインに使っているユーザーは、Microsoft Edgeの併用を強いられることになる。

  • Windows 11 Insider Preview ビルド22509の「既定のアプリ」。一括変更する「Set default」が加わった

筆者はMicrosoft EdgeがメインWebブラウザーのため、特段の不都合は受けていない。だが本件に限らず、移動できないタスクバーを1つ取っても、Windows 10からの移行を妨げる要因となるのは確かだ。引いてはスタートメニューのWeb検索やウィジェットといった、microsoft-edgeプロトコルを使用する機能も敬遠されかねない。MicrosoftはWebブラウザーに関して、さらに門戸を開くべきだ。