スマートロック「Qrio Lock」などを販売するQrioは11月18日、新製品兼事業戦略発表会を開催し、スマートロックの新製品6種類を発表した。今後はスマートロックを中心としたプラットフォーム化を目指していくという。
スマートロックの利用シーンが広がる新製品
電子的な鍵を使ってスマートフォンなどから鍵を開閉できるスマートロックは、鍵をなくす心配がない、一時的に利用可能な合鍵を作れ、柔軟に運用できるのが特徴だ。日本では2015年にスマートロック市場が立ち上がって以来、企業や集合住宅などを中心に普及が進んでいる。
Qrioは2015年に最初のスマートロック製品「Qrio Smart Lock」を、2018年に現行の第二世代製品「Qrio Lock」を発売して以来、これまでに累計20万台以上を販売。日本のスマートロック市場での売り上げやシェア、認知度もナンバーワンであるとアピールしている。
スマートロックには、キーシリンダーごと交換するタイプと、既存の鍵のサムターン部に被せて使用するタイプの2種類があるが、Qrio Lockは後者のタイプ。複雑な工事は必要なく、ドアに両面テープで固定するため、剥がせば原状回復でき、賃貸住宅などでも利用しやすいといった特徴がある。
今回発表された新製品は、いずれも、Qrio Lockの機能を拡張し、利用シーンを拡大するタイプの製品となる。
「Qrio Pad」は、Qrio Lock(Q-SL2)と組み合わせて使用する、ドアの外側に装着するカードリーダー/ナンバーパッドユニットだ。ドアのロック自体は、内側のサムターンに装着するQrio Lockが担当し、Qrio Padは付属する非接触型カードキー「Qrio Card」のためのインターフェースを提供する。従来、Qrio Lockの解除にはスマートフォンかリモコンキー「Qrio Key」が必要だったが、Qrio Padを使えばカードキーも選択肢に加わる。ただし独自形式なので、FeliCa搭載スマートフォンにキーを登録してスマホのタッチで解錠、というわけにはいかない。
本体上部にはタッチパネルが用意されており、ナンバーロックのような暗証番号による解錠も可能になっている。例えばカギを家に置き忘れたまま自動ロックで締め出されてしまったというような場合でも、ナンバーパッドで解錠できるわけだ。
取り付けはQrio Lockと同様に両面テープでの接合なので、賃貸住宅などでも工事を必要とせず、原状回復できるかたちで装着できる。なお、Qrio Pad自体はサムターンを回すわけではないため、必ずしもドアに着ける必要はなく、電波の届く範囲であればどこに設置しても構わない。
Qrio Padはリチウム電池(CR123A)2本で動作するが、予備の電池を2本追加でき、片側が切れると自動的に予備に切り替わる。予備を含めて約1,040日の駆動が可能だ。
Qrio Padの価格は2万2,000円で、Qrio Cardが1枚付属する。またQrio Lock(2万5,300円)とのセット(4万7,300円)も発売される。今回Qrio LockとQrio Padのどちらもブラックに加えて新色のブラウンが追加された。
「Qrio Card」はQrio Padと組み合わせて利用するカードキーだ。仕様としてはFeliCaをベースに、セキュリティを考慮して独自仕様の専用カードとなっている。非接触型なので、財布などに入れたままでもしっかり認識してくれる。Qrio Padに1枚付属するほか、単体(2枚組)での販売も行われる。
Qrio Pad1台に対して最大1,000枚まで追加できるので、スマートフォンを持っていない子供やお年寄り用の鍵として手軽に増やして渡せる。企業で会社のドアの合鍵を社員に配布したい場合にも最適なソリューションとなる。
「Qrio Key S」はQrio Lock専用のBluetooth接続リモコンキーだ。リモコンキーとしては「Qrio Key」(Q-K1)が既発であるが、Qrio Keyの機能に加えてジャイロセンサーを内蔵しており、ドアの近く(約1m以内)で約1秒程度静止することで「近くでカギが開くのを待っている」と認識し、リモコンのボタンを押さなくても解錠される「ハンズフリー解錠」に対応している。
ハンズフリー解錠は従来、スマートフォンとの組み合わせでの利用が可能だったが、Qrio Key Sを使えばスマートフォンを持っていない子供やお年寄りでもハンズフリー解錠が利用できる。
なおQrio Key、Qrio Key Sともに、アプリから権限を削除できるため、万が一紛失した場合は権限を削除してしまえば、第三者にカギを解錠される恐れはない。
マンション向け「Qrio Lock R」&「Qrio Pad R」
マンション向けには、大がかりな工事不要のため、新築だけでなく既存建築向けにも販売が行われる。マンション専用としてキーシリンダー(サムターン)に被せて使用する組み付け型の「Qrio Lock R」と「Qrio Pad R」が提供される。また、共用玄関向けに、専有部と同じカギで開けられる「Qrio Pad Entrance」も販売される。
Qrio Pad Rはキーシリンダー部にカバーが被さるため、防犯効果も高くなる。また、電源がリチウム電池で2系統あるのも同じだが、さらにカバーを外したところに9Vの角形アルカリ電池(6F22)用の接点があり、電池を押し付けることで緊急時の給電ができるようになっている。
また、不動産事業者向けのスマートロック管理システム「Roomon」がアップデートして2.0となった。賃貸物件の内見用のカギの手配や、入退去時のカギの受け渡しなどがすべてリモートで行えるようになる。2022年2月からサービス提供が開始される。
法人向け鍵管理サービスもアップデート
法人市場向けには、Qrio LockとQrio Padがセットで提供される。また、鍵管理サービス「カギカン」がバージョンアップして「3.0」になり、それに専用サービスを組み合わせた形で展開する。
カギカンを使うことで入退室管理が正確に行えるようになり、セキュリティの向上に加えて退勤管理との連動も可能になるほか、会社ではスマートフォンやカードキー、民泊やレンタルスペースなどでは暗証番号(PIN)による解錠など、利用シーンに合わせた合鍵の発行ができる。
カギカン3.0は2021年12月からサービス提供が開始される。
スマートロックを中心としたIoTプラットフォームへ
発表会では、鍵製造・販売大手のゴールと協業し、建築業界チャネルへの拡販や、全国221店のゴールメンテナンスステーション(GMS)をサービス拠点として利用するといった方針が明らかになったほか、Qrioを中心としたIoTプラットフォーム化構想が発表された。
IoTプラットフォーム化することで、例えばサードパーティ製のカメラやセンサー、あるいは顔認証/指紋認証といった技術とQrio製品との組み合わせでセキュリティサービスを提供するといったことが可能になる。斬新な発想による新たなサービスの登場に期待したい。