ここ何年か、個人向けのオンラインストレージに関連してSNSでたびたび話題になるのが、サービス提供元からの十分な説明のないまま、アカウントが凍結され、保存されたファイルにアクセスできなくなるという事件だ。
アップロードした写真が公序良俗に反すると判定されたのが原因と見られるこれらの事件、実際にそうした写真が含まれていたのならまだしも、誤判定も少なからずあると見られるのが厄介だ。つまりユーザ側に非がなくとも、ある日突然こうしたトラブルに巻き込まれないとも限らない状況になっているというわけだ。
こうした背景もあってか、近年新しくリリースされたオンラインストレージは、ユーザーのみがデータを復号できる“エンドツーエンド暗号化”を標準で搭載するサービスが増えつつある。これならば、そうした写真が含まれていようがいまいが、運営側ですら中身を見ることができないので、そうしたトラブルに遭わずに済むというわけだ。
今回はここ2~3年のうちに新登場した、3つのエンドツーエンド暗号化対応のオンラインストレージサービスを紹介する。
機能的にはやや荒削りなサービスもあるほか、いずれも日本語のUIには非対応だが、一昔前は「SpiderOak」や「MEGA」、「Sync」くらいしか対応サービスがなかったことを考えると、選択肢が増えるのはユーザとしてもありがたい。興味を持ったサービスがあれば、ぜひ試してみてほしい。
データを細かく指定してアップできる「ente.io」
「ente.io」は、2019年にリリースされたオランダ発のオンラインストレージサービス。
アップロードできるのは写真とビデオのみだが、iPhoneで「非表示」にした写真だけを自動アップロードするなど、スマホ上の任意のアルバムやメディアタイプを細かく指定できることが大きな特徴。スマホアプリのほかブラウザからのアクセスにも対応しており、二要素認証も設定可能。
無料プランはなく、有料プラン申込前に1GBが無料で1カ月使える試用期間が設定されている。
通常領域と暗号化領域が分かれている「Icedrive」
「Icedrive」は、2019年にリリースされたイギリス発のオンラインストレージサービス。
前述の「ente.io」と違ってストレージ容量は通常領域と暗号化領域に分かれており、前者のみだと通常のオンラインストレージと違いはない。スマホアプリのほかブラウザからのアクセスにも対応しており、二要素認証も設定可能。
無料プランでは10GBが利用可能だが、エンドツーエンド暗号化に対応したストレージ領域を利用するためには有料プランの契約が必要。
メンバーとファイルをやりとりできる「SpiderOak CrossClave」
「SpiderOak CrossClave」は、SpiderOakの派生サービスとして2021年にリリースされたオンラインストレージサービス。
チームを作ってメンバーを招待し、目的ごとの別室(スペース)の中でファイルのやりとりをするという、Slackのストレージ版とでも言うべき仕組みで、上記の2つと違ってビジネス向けの色が濃い。
現時点でブラウザ版およびiOSアプリはなく、Win/Mac用アプリ、およびAndroidアプリのみという変則的なラインナップだが、暗号化は全領域に適用され、また二要素認証もサポートしている。無料プランでは5GBが利用可能。