米Mozillaは、11月2日(現地時間)にFirefoxの新バージョンとなるWebブラウザ「Firefox 94」をリリースした。Firefox 94から4週間でのバージョンアップである。途中、マイナーバージョンアップは行われなかった。
Firefox 94のインストール
すでに自動アップデートが可能な状況になっているが、ここでは手動でアップデートする方法を説明したい。Firefoxメニューの[ヘルプ]→[Firefoxについて]を開くと更新が自動的に開始される。[再起動してFirefoxを更新]をクリックする(図1)。
アップデート後のFirefox 94は、図2のようになる。
新機能のカラーテーマ「Colorways」の選択ダイアログが表示されている(後述)。新規に、Firefox 94をインストールする場合、FirefoxのWebページからインストーラをダウンロードする(図3)。
[今すぐダウンロード]をクリックし、保存したファイルをダブルクリックして、インストールを開始する(図4)。
画面の指示に従い、インストールを進めてほしい。以下では、新機能や変更点のいくつかを具体的に見ていこう。
Firefox 94の新機能
続いて、新機能であるが、今回のリリースでは、以下の新機能の追加が行われた。
- Firefox 94では、6種類の季節感あふれる配色の組み合わせ(Colorways)のカラーテーマ選択が可能となった(期間限定で利用可能)。その時々において、ユーザーの気分に合う(または気分が向上する)配色を見つけることができる。興味深い事実として、Firefox 89においてカラーテーマをカスタマイズできる機能を実装したところ、ユーザーの32%がカラーテーマをカスタマイズしていた。そこで、Mozillaは、新しくColorwaysを導入し、「ユーザーにもっと愛してもらうことにした」とのことだ。
- macOS版では、YouTubeやTwitchなどのサイトのフルスクリーンビデオにAppleの低電力モードを使用するようになった。これにより、長時間の視聴セッションでのバッテリー寿命が大幅に延長される。
- Firefox 94では、about:unloadsを使用し、タブを閉じずに手動でアンロードすることにより、システムリソースを解放できる。
- Windows版では、Firefoxが更新のプロンプトを表示を廃止し、ダウンロードによる中断が少なくなる。代わりに、Firefoxが閉じている場合でも、バックグラウンドエージェントがアップデートをダウンロードしてインストールする。
- Linux版では、多くのケースでWebGLパフォーマンスが向上し、消費電力が削減された。- サイト分離ソリューションを実装し、Spectreなどのサイドチャネル攻撃からすべてのFirefoxユーザーをより適切に保護する。
- MozillaVPNと統合されたFirefoxMulti-AccountContainers拡張機能を展開。この機能で、コンテナごとに異なるサーバーの場所を利用可能に。
- Firefox 94では、メニュー、ボタン、または3キーコマンドを使用してブラウザを終了したりウィンドウを閉じたりしたときに、デフォルトで確認ダイアログを表示しなくなった。これにより、歓迎されない通知が削減される。表示させたい場合は、メニューの[設定]→[一般]の「同時に複数のタブを閉じる前に確認する」にチェックを入れると、確認ダイアログが表示されるようになる。
また、修正・変更点は以下の通り。
- パフォーマンスエントリのセットでperformance.mark()およびperformance.measure()APIを使用するオーバーヘッドを削減
- サイト分離モードでのウォームロードのパフォーマンスを大幅に向上させるために、ロード中のペイント抑制を変更
- Javascriptのメモリ使用量がわずかに減少
- Javascriptプロパティの列挙も高速化
- ガベージコレクションのスケジュールを改善し、ページロードのベンチマークを改善
- HTTPS接続のソケットポーリング中のCPU使用率が低下
- ストレージの初期化が高速化
- メインスレッドのI/Oを削減し、コールドスタートアップを改善
- devtoolsを閉じることで、これまで以上に多くのメモリが再利用されるように
- 画像の読み込みと表示の優先度を高く設定することで、ページの読み込みを改善(特にサイト分離モードの場合)
Firefox94の新しいColorways
Colorwaysは、今回のバージョンアップでもっとも見た目に訴求する新機能といえるであろう。新機能でもふれたように、カラーテーマはFirefox 89でオプションとして導入されたものだが、ユーザーの利用度が高かったことから、今回、より充実させたColorwaysを期間限定で実装する。提供されるColorwaysは、
- Abstract
- Cheers
- Foto
- Lush
- Graffiti
- Elemental
の6つである。
それぞれで、
- ソフト
- バランス
- ボールド
を選ぶことができ、あわせると現時点で計18種類が選択可能ということになる。初回起動時に選択可能であるが、メニューの[設定]→[拡張機能とテーマ]の[テーマの管理]からも設定可能となる。
これらの利用可能な期間であるが、当面、Firefox 94と95で利用できる。なお、ここで設定したColorwaysは、その後も継続して利用可能とのことである。
Mozillaでは、「Webブラウザのような、ユーザーが日々利用しているツールを自分らしく感じさせ、新鮮に感じ、さらに刺激的であるといった、小さな喜びの瞬間をもたらしてくれることは、ブラウザとして自然な延長」と説明する。自分好みにカスタマイズできる、昔からのFirefoxの魅力の1つであった。それを実現したものといえるだろう。
また、これらが期間限定である以上、次があるはずだ。どのようなエクスペリエンスを提供してくるか、期待したい。
セキュリティアップデート
同時に行われたセキュリティアップデートであるが、修正された脆弱性はCVE番号ベース で13件である。深刻度の内訳は、4段階で上から2番目の「High」が7件、上から3番目の「Moderate」が4件、もっとも下の「Low」が2件となっている。
「High」では、
- iframeサンドボックスルールがXSLTスタイルシートに適用されない問題
- ファイルピッカーダイアログでのメモリ解放後使用
- Windows 10 Cloud Clipboardが機密性の高いユーザーデータを記録している危険性
- 通知や警告なしにフルスクリーンモードになるように誘導される危険性
- HTTP2の日和見暗号化を使用して、他のポートでホストされているサービスの同一生成元ポリシーをバイパスしてしまう
- QRコードURLを介したAndroid版FirefoxのユニバーサルXSS
- Firefox 94とFirefox ESR 91.3で修正されたメモリ安全性の問題
などが対応された。最高レベルの「Critical」はないが、早めのアップデートをすべきであろう。