撮影した写真を「感熱紙」にプリントできる異色のトイカメラをご存じですか? ケンコー・トキナーの「モノクロインスタントカメラ KC-TY01」で、実売価格が6,300円前後とお手ごろなのがポイント。富士フイルムのインスタントカメラ「チェキ」と比べれば、モノクロでプリントされる写真のクオリティはだいぶ劣るのですが、大人が持っても似合うレトロ風のデザインと価格の安さ、用紙がシールなのでノートや手帳に簡単に貼り付けられる楽しさが話題になっています。

  • ケンコー・トキナーのユニークなインスタントカメラ「モノクロインスタントカメラ KC-TY01」。後述しますが、左に見えるレンズのような部分は実はレンズではありません。実売価格は6,300円前後

デジカメだけど写真の保存機能はナシ、“世界で1枚のプリント”

KC-TY01は、撮影した写真を感熱紙にプリントできるインスタントカメラ。仕組み的にはデジタルカメラなのですが、撮影した写真をSDカードや内蔵メモリーに保存することはできません。つまり、感熱紙へのプリントが唯一のアウトプットということになります。そのうえ、1回のシャッターでプリントできるのは1枚だけなので、出てきたプリントが“世界で1枚の写真”というわけです。

  • 撮影すると、コンビニなどのレシートでおなじみの感熱紙にモノクロで写真がプリントされます。1回の撮影で1枚しかプリントできないので、唯一のプリントとなります

フィルムにしろデジタルにしろ、簡単に複製できるのが写真の特徴の1つですが、このカメラにはそれがありません。そういう意味では、デジカメではあるけれども、フィルムのインスタントカメラと同じ感覚のカメラといえるでしょう。

本体の大きさは約137×90×51mmとすごく小さいわけではないですが、重さは約226gと軽量です。カラーは、今回試用したスカイブルーのほかに、ブラック、ブラウン、コーラルピンクがあります。クラシックカメラを思わせるデザインは、まさに「おしゃれ」という言葉がぴったりです。

  • 背面にはファインダーや電源スイッチなどがあります。液晶パネルはありません

本体のレンズに見える部分は、感熱紙を入れる部分のフタの取っ手になっており、実はレンズではありません。本当のレンズはストロボの下にある小さな黒い丸の部分ですから、撮影時にこの部分をふさがないようにしましょう。

  • 本物のレンズはこれ! 小さい!!

ストロボといえば、本機のストロボは撮影時にLEDが軽く光る飾りで、照明の効果は実際ほぼありません。そうしたギミックをわざわざ取り入れたところがまた面白いと感じます。

充電式のバッテリーを内蔵しており、撮影前にUSB micro-B端子で充電しておきます。ここは、時代を考えるとUSB Type-Cであってほしかったところではあります。

  • バッテリーはmicroUSB経由で充電します

撮影機能やファインダーは、まさにトイカメラの仕上がり

撮影する前に、肝心の感熱紙をセットします。ダミーレンズを持って引っ張るとフタが開くので、感熱紙のロールを挿入します。感熱紙が少し表に出るようにしてフタを閉め、飛び出た感熱紙をカットすれば準備OKです。筆者は迷うことなく簡単にできました。

  • 用紙収納部のカバーを開けたところ。中にも説明が書いてあります

電源を入れてシャッターを切れば、すぐにプリントが出てきます。このあたりの動作は思ったよりも速くて好感が持てました。

  • 写真はこのようにプリントされます。プリントが完了したら、内蔵のカッターでビリッとカットして切り離します

【動画】写真をプリントしているところ。初めて見る人には驚かれそう

ちなみに、カメラとしてのスペックは、いわゆる「トイカメラ」そのもの。画素数は約31万画素(640×480ドット)。レンズは35mm判換算で44mm相当、F2.8の単焦点タイプです。フォーカスは固定で、ピント合わせの必要はありません。カメラから約30cmまではピントが合わないので、それより遠くのものを被写体にする必要があります。シャッタースピードは1/100秒、感度はISO100にそれぞれ固定されています。ファインダーは素通しで、正確性はありません。かなりアバウトな感じです。

  • 上面はシャッターボタンのみ

  • ファインダーは素通しです

  • 幅広のおしゃれな柄のストラップが付属しています

感熱紙でどう表現されるかを考えながら撮るのが楽しい

さて、プリントされる写真を見てみましょう。本機で使用する感熱紙は幅約57mmで、ほぼ4:3である約62×47mmの大きさでプリントされます。

画素数がたったの31万画素であることや、プリントがモノクロの感熱紙ということで、期待値が低かったせいもあるのでしょうが(失礼!)、想像していたよりもしっかりした写りというのが正直な感想です。ドットはとても粗いものの、被写体はしっかり写っていました。粒子の粗さも味わい深いというか、現代の高画質カメラに慣れた身としてはとても新鮮に感じました。

  • プリント例。粗いドットがいい味を出しています

  • 遠くの景色などは、少しごちゃごちゃして分かりにくい表現に…

  • 背面のダイヤルでプリントに好きなフレームを付けられます

  • フレームを加えた例。集中線などもありました

このカメラで撮っていると、「この景色はどんな風に写るんだろう?」という気持ちが湧いてきて、思わずどんどんシャッターを切ってしまいました。このカメラで「変換」された景色を見るのが楽しくなってきたのです。

気になった点といえば、電源のON/OFFとシャッターを押した時に派手な電子音が出るのですが、これがOFFにできないので静かな場所では困るかもしれません。また、撮影時に用紙の出口に指が掛かっていると用紙が中で詰まってしまうのも気をつけたいところです。

インスタントカメラの代表格といえる富士フイルムの「チェキ」は、カラーのプリントに対応していて画質も比べものにならないほど優れますが、チェキフィルムは10枚入りで実売800円前後と、フィルム代が結構かかります。その点、KC-TY01用の感熱紙は3本セットで実売1,700円、シールタイプの感熱紙は3本セットで実売2,000円ほど。1本で約80枚プリントできるので、1枚あたり約7~8円とかなり安く、用紙代を気にすることなくバンバン撮影できるのが魅力的だと感じました。

  • こちらは別売のカラーシールペーパー。背面がシールになっていて、ノートなどにそのまま貼ることができます

シールタイプならば、プリントした写真を手帳や壁に貼ったりとおしゃれに活用できるので、女性には特に好まれそうです。プリントをスマホで撮影してSNSでシェアするのも面白いと思います。カラーの感熱紙も用意しているので、アイデア次第でいろいろ楽しめるでしょう。王者チェキにはないチープ感が若年層に響きそうで、クリスマスや誕生日などギフト用にも向いているカメラだと思いました。