新型コロナウイルスの感染拡大を受け、私達の働き方は大きく変化しました。テレワークは働き方の一つとして当たり前となりつつあります。そして同時に、柔軟な働き方をサポートするITシステムの導入が加速しました。

また、急遽始まったテレワークの脆弱性を狙ったセキュリティインシデント増えたことで、分散した職場に適したセキュリティの導入が推奨されるなど、企業のIT化はこれまで以上に早いスピードで進化しています。

IoTやAIが進化し、自動運転などがより現実味を帯びてきている現在、テクノロジーの進化は、労働力人口が縮小傾向にある日本経済の切り札とも言えます。事務作業や会計業務、カスタマーサービス、データ入力といった業務は自動化され始め、「非接触」が推奨されたことにより街中で無人レジも多く見かけるようになりました。しかし、こうした技術の進化は、常に「テクノロジーに仕事を奪われてしまうかもしれない」という不安と隣り合わせです。

2035年、私たちに仕事はあるのか?

AIが労働力を代替し、多くの職務が置き換えられるといったテクノロジーを起因とした大量失業はまだ起きていませんが、労働形態は変化し始めています。終身雇用や年金という概念を信じる若者は減り、フリーランスや副業など、多様な働き方が生まれています。

Citrixはテレワーク環境を実現するITソリューションを提供し、働き方の未来についてさまざまな調査を行ってきました。当社発表した調査「Work 2035」では、「自分の会社の職務の50%以上が2035年までにテクノロジーやAIによって置き換えられると考えるか?」という質問に、YESと答えたリーダーは1人もいませんでした。しかし、従業員の5分の1は個人契約の人員で構成されるだろうと考えています。

フリーランスも含めたチーム作りを

現在、Lancersなどのクラウドソーシングプラットフォームを活用し、フリーランス人材によって業務を進めている企業も増えてきています。また、組織に所属しながら、業務時間外に副業という形で働く人も少なくなく、副業業界に特化した人材マッチング事業などもでてきています。

厚生労働省も、増加する副業や兼業に対し、ガイドラインを発行しています。人生100年時代と言われる現代、政府は私たちにより長い間働くことを推奨し、このガイドラインでも働いている社員が副業を始めたいという意向がある際は、企業は副業を認める方向で検討するべきと記載されています。なぜなら、副業はキャリア形成や、所得増加につながるからです。

オフィスで全員が一緒に働いていた時代から、テレワークによりチームが分散したことで、「今後どのようにチームビルディングをしていくか」などが課題になってきましたが、2035年には同じ会社に所属していない人たちが、どのようにコラボレーションをするかが課題になるかもしれません。

IT環境でも、ライセンスの付与がより柔軟にでき、さまざまなツールを使ったコラボレーションが効率的にできるような環境がますます必要となってくるでしょう。

必要なのは、持続可能な働き方

テクノロジーは私たちをより生産的にしてくれます。しかし、「デジタルデトックス」や「マインドフルネス」などという言葉がよく使用されるようになったのは、いつでもどこでも働けるテクノロジーは働きすぎを助長しているからではないでしょうか?

仕事の裁量を自分で判断するフリーランサーや、副業という働き方は、就業時間を増やす可能性もあります。労働者自身による就業時間や健康の管理もある程度必要になってきます。私たちは、テクノロジーに仕事を奪われることを恐れるのでなく、より長く健康的に働くためにテクノロジーを活用しなければなりません。

國分俊宏 (こくぶん としひろ)

シトリックス・システムズ・ジャパン 株式会社 セールス・エンジニアリング統括本部 エンタープライズSE本部 本部長

グループウェアからデジタルワークスペースまで、一貫して働く「人」を支えるソリューションの導入をプリセースルとして支援している。現在は、ハイタッチビジネスのSE部 部長として、パフォーマンスを最大化できる働き方、ワークライフバランスを支援する最新技術を日本市場に浸透すべく奮闘中。