セキュリティ機能も含むことをブランド名で明示。一方、永続ライセンスは廃止

アクロニス・ジャパンは9月9日、これまで「Acronis TrueImage」として展開してきたバックアップ&セキュリティソフト(個人向けサイバープロテクション製品)を「Acronis Cyber Protect Home Office」としてリブランドし、オンラインでの販売を開始しました。

既存のAcronis True Imageサブスクリプション契約ユーザーに対しては、アップデート提供が始まっています。リセラーや店頭販売は10月15日からを予定。また、リブランドを記念して、10月15日から一部量販店とネットストアにて「Acronis Cyber Protect Home Office 500GBクラウドストレージ付き」を8,048円(限定2万本)で販売します。

  • Acronis Cyber Protect Home Office

    店頭販売用パッケージ画像。名前の変更は会社にとってリスクと判断しているのか、前製品名も出しています

  • オンライン発表会でプレゼンしたアクロニス・ジャパン 代表取締役社長 嘉規邦伸氏

Acronis Cyber Protect Home Officeの価格(Acronisネットストア価格、1年間サブスクリプション)

  • Essentials版:5,580円(PC1台)、8,940円(PC3台)、11,180円(PC5台)
  • Advanced版:10,060円(PC1台)、14,540円(PC3台)、21,270円(PC5台)
  • Premium版:13,980円(PC1台)、21,270円(PC3台)、23,510円(PC5台)

Essentials版は従来製品と同様に、アドバンスセキュリティ機能が30日間のみである点と、クラウドバックアップ機能がない点に注意です。

  • モデルごとの機能比較表

「Acronis True Image」として知られていた本製品は、PCのバックアップソフトとしてスタートしました。2017年にはランサムウェア対策、2018年にはクリプトジャッキングに対応し、単なるバックアップソフトにとどまらないサイバーセキュリティ製品となっています。ファイルプロテクション(バックアップ)とサイバーセキュリティの両方を持つという意味において、サイバープロテクション製品と位置付けています。

前CEOのセルゲイ・ベロウゾフ氏が「SAPAS」(※)を提唱しており、これを個人向け製品にも反映させたというのが、今回ブランドを変更した背景です。バックアップとサイバーセキュリティの両輪、そしてバックアップ先としてローカルストレージだけでなくクラウドストレージを含めたことで、アクロニスの業績は順調に拡大していると嘉規氏は説明しました。

※:SAPAS データ保護の5つのベクトル。「Safety(安全性)」「Accessibility(アクセシビリティ)」「Privacy(プライバシー)」「Authenticity(真正性)」「Security(セキュリティ)」の頭文字を合わせた造語。

  • アクロニスは2003年に創業し、前CEOのセルゲイ・ベロウゾフ氏が掲げた「SAPAS戦略」で事業が急成長。従業員数も2020年末から1.6倍なっています

  • 会社規模の拡大に対応するため、2021年7月に新CEOとしてパトリック・プルヴァミュラー氏が就任。前CEOのセルゲイ・ベロウゾフ氏はCRO(最高研究開発責任者)を務めます。製品の方向性や開発スタイルは継承されます

大きく変わったのは名称だけではありません。従来のAcronis True Imageはアップデートがない代わりにずっと使える「永続ライセンス」と、契約期間だけ使える&機能アップデートが配信される「サブスクリプション契約」が用意されていました。

しかし、サイバーセキュリティの世界は日々の更新が必要になるということで、新しいAcronis Cyber Protect Home Officeは永続ライセンスを廃止。サブスクリプション契約のみとなりました。

  • 旧製品のAcronis True Image 2021と新製品のAcronis Cyber Protect Home Office、大きな違いは永続ライセンスがなくなったところ。価格も「Essentials版(デバイス1台版)で比較すると多少安くなっています」(嘉規氏)

  • セキュリティを前面に押し出した結果、継続的なアップデートが必要となり、サブスクリプションモデルへと全面的に移行

見かけは変わらず機能も変わらず……2022年上半期までに機能強化を予告

筆者はAcronis True Image Premiumを使っており、オンライン発表会前日(9月8日)にアップデート通知が来たのでアップデートしてみました。

従来と変わったのは名称だけのようで、リリースノートを見ても新機能はありません。アップデートですから、以前の設定も引き継いでいます。スマートフォンのバックアップ上限が20台となっていましたが、個人ではこれ以上の必要性はまずないでしょう。従来はモバイルデバイスのインストール数は無制限と案内していましたが、内部的には20台だったようで、今回それを明示したという説明でした。

  • 発表会の前日、寝る前にアップデートの告知が。アップデーターの名称が新しくなっているところがポイント

  • リリースノートを見たところ、機能の追加はなく、基本的に名称変更のみのよう。後日、強化されるという機能が楽しみ

Acronis Cyber Protect Home Officeの特徴は、わかりやすいダッシュボードにあります。バックアップではどのタスクがどのように稼働しているか、次回のバックアップはいつ実行されるのかなど、一目でわかります。

サイバーセキュリティに関しては、過去のチェック回数や検査数、攻撃の阻止回数をダッシュボード画面に表示。また、既知の脆弱性を持つアプリケーションをワンクリックで確認できます。

今回のオンライン発表会では、2022年上半期までに、Acronis Cyber Protect Home Officeの大きな機能強化を行うことが予告されました。また、2021年9月下旬をめどにWindows 11対応版が登場する予定です。旧製品のAcronis True ImageのWindows 11対応はありません。

  • UIも以前と変わりません。緑のチェックマークは設定どおりバックアップが行われていることを示します。青い「!」マークがいくつかありますが、これは古い設定をそのまま残しているだけで問題なし

  • 保護の画面……おや、保護情報のアップデートがされていないようです。これは設定を見直すべきですね

  • 設定を修正して、保護情報が最新版になりました

  • インストールしているアプリケーションに既知の脆弱性がある場合、ここに一覧が表示されます。どちらも常用していないアプリケーションですがアップデートしました

  • アップデートして再スキャンすると既知の脆弱性のあるアプリケーションがなくなりました

バックアップは実体験として痛い目に遭わないと、なかなか積極的に行う気にならないものです。一方でサイバーセキュリティに関しては、日々の報道もあるため、関心を持っている人は多いでしょう。バックアップとサイバーセキュリティの合体を明示した「Acronis Cyber Protect Home Office」は、個人PCのバックアップとセキュリティの両方を確保するよい製品。今回の名称変更によって、製品の特長がよりわかりやすくなりました。