新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の影響が長期化し、テレワークはさらに広がりを見せている。だがその一方で、テレワークの状況下でのコミュニケーションやマネジメント、モチベーションの維持・向上に課題を抱えている企業やユーザーが少なくない。本記事では、8月26日に開催されたデル・テクノロジーズ オンラインイベント「中堅企業 異業種交流会2021 夏 オンライン」から、コロナ禍におけるコミュニケーションの課題と対処法に関する講演を紹介する。
テレワークの課題は技術面から人事面へ
まずプログラムの最初に、デル・テクノロジーズ 上席執行役員兼広域営業統括本部長の瀧谷貴行氏からの挨拶があった。
瀧谷氏が紹介した同社の調査によると、日本の従業員の7割はテレワーク経験があり、長期的テレワークに対応可能と考えているという。その一方で、長期的なテレワークにより仕事とプライベートの境界が曖昧になることを懸念しているとのことだ。
長期テレワークに関する課題では、技術面での改善は進んでいる半面、人事面では未解決の課題が多いという。
同氏は、今の時代にリーダーに求められる組織・社員を成長させるマネジメントの要素を挙げ、その中でも良質なコミュニケーションと良好な信頼関係が、リモートワークにおける課題だと指摘する。
実際、テレワークの課題でシステム面が減少する半面、「コミュニケーションがとりにくい・難しい・時間がかかる」や「モチベーション維持が難しい」といった回答が増えているとのことだ。
最後に瀧谷氏は、今回の講演のテーマはコミュニケーション、マネジメント、モチベーションだと紹介した上で、「皆様とぜひ、積極的な意見交換をさせていただければと思っております」と締めくくった。
コロナ禍以後のあるべきコミュニケーションの形とは
続いて、ことば経営代表で中小企業診断士の中村かおり氏による「テレワークのコミュニケーション」講演が行われた。
同氏は新聞記者や報道記者などを経験し、現在はコミュニケーションを通して人間関係の改善や、会社の雰囲気や組織を活性化する活動を中心に行っている。
講演では、コロナ禍の前後でコミュニケーションがどう変わったのかを振り返り、それぞれの課題と対処法を解説した。
コロナ禍以後は、従来の電話やメールに加えてチャットやWeb会議なども利用されている。中村氏によると、これらの手段では「目的が求められる」という。
また、先の瀧谷氏が紹介したデルの調査では、コミュニケーションを取りにくい、難しい、時間が掛かるという回答が増加を続けている。
中村氏は現在のコミュニケーションにおいて、2つの大きな課題があると指摘する。1つ目は、チームワークを高めるための円滑な意思疎通。2つ目は、ツール類の効果的な活用だ。
円滑な意思疎通のカギは「心理的安全性」の醸成とバイアスの自覚
これらへの対処方法として、まずチームワーク向上にはコミュニケーションしやすい雰囲気作りが必要だと中村氏は指摘する。それには、チームの「心理的安全性」と、自身が持つバイアスの自覚がカギになるという。
心理的安全性とは、チームの中で対人関係のリスクを取っても大丈夫だという、チームメンバーに共有される信念のこと。この醸成には、話しやすさ、助け合い、挑戦、「新奇歓迎」(異質な存在も受け入れること)が必要だと、中村氏は説く。
バイアスを持たないことは困難だが、考え方を変えることで、苦手な相手でも自身の負担が減り、相手にも良い影響を及ぼす可能性があるという。
中村氏はリフレーミングという手法を紹介し、例えば「偉そう」を「堂々としている」、「自分の意見を言えない」を「思慮深い」などとポジティブに言い換える日常的な訓練を勧める。
「伝わるように伝える」がツール共通のポイント
続いてのテーマは、メールやチャット、Web会議といったツールそれぞれの特徴と活用法に移る。
まず中村氏は各ツールに共通する要点として、「伝わるように伝える」ことの重要性を訴える。
「文章に限らず、コミュニケーションの場面において、伝えているつもりの内容はあまり伝わっていません」と指摘する中村氏は、「受け手に分かりやすい言葉で、受け手にわかりやすい構成で伝えることが鉄則です」と強調する。言い換えれば、「受け手の事情を想像して、受け手を思いやること」(中村氏)だという。
ツールはメリット・デメリットを考慮し選択
コミュニケーションツールそれぞれについて、中村氏は特徴とメリット・デメリットにより分類した上で、どのような場面でどのツールが最適かを考え、どういう場合にどのツールを使うかについて「コンセンサスを予め取っておくことが重要です」と語る。
伝わりやすいメールの構成とは?
メールは、コロナ禍以前から広く使われているが、用件が伝わりにくいメールも散見されると中村氏は指摘する。
伝わりやすいメールのポイントとして中村氏は、送る目的の整理、上手い文章を書こうとしない、短文で書く、箇条書きの活用、情報量が多い場合はレイアウトの工夫、用件が伝わりやすいタイトルの6点を挙げる。
Web会議の成功には環境整備と進行の工夫を
コロナ禍以降に急速に利用が広がったWeb会議では、まず環境の整備が重要だと中村氏は強調する。ここで言う環境とは、通信環境に加えて、ヘッドセットの利用や周囲の雑音への対策も含む。
テレワークで自宅からWeb会議に参加する人も増えているが、中村氏はインターホンのミュート設定も意外と効果的だと語る。いずれにせよ、早めにログインして問題が無いかチェックするべきだと中村氏は提言した。
Web会議の進行に関して中村氏は、アイコンタクト、発言前の名乗り、簡潔な発言、進行役が沈黙の時間を恐れないこと、発言してもらう指名テクニックの5点を挙げる。
中村氏は最後に、「コロナ前後でコミュニケーションはどう変わったか。それを踏まえた課題。チームワークを高めるために円滑な意思疎通と、そういった雰囲気が必要だということ。メール、チャット、Web会議、それぞれの特徴と効果的な活用が必要だということをお伝えして参りました」と内容をまとめ、講演を締めくくった。