オウガ・ジャパンのスマートフォンブランド「OPPO」から、最新のハイエンドモデル「Find X3 Pro」が登場しました。ディスプレイの10億色表示をアピールするするほか、カメラを含めた「色」にこだわったモデルで、ハイエンドながら持ち運びしやすいモデルです。

キャリアではauの取り扱いで、6月30日から発売されています。価格は122,095円。SIMフリー版もあり、家電量販店などで発売中。価格は118,000円です。MVNOではgoo Simsellerが取り扱っています。ここでは、Find X3 Proの大きな特徴である色彩関連と、カメラ機能を中心に見ていきましょう。

  • 5G対応のハイエンドスマートフォン「Find X3 Pro」。au版のほか、SIMフリー版やMVNO版もあります

豊かな色彩を再現するディスプレイ

Find X3 Proは、約6.7インチで解像度が3,216×1,440ドット(QHD+)の大型・高解像度ディスプレイを搭載。ディスプレイはAMOLED(有機EL)で、コントラスト比は500万:1、最大輝度は800nit、HDR再生時の最大輝度は1300nit、色域はDCI-P3で100%カバー、リフレッシュレートは120Hz、タッチサンプリングレートは最大240Hzに対応します。

この高いディスプレイ性能が特徴のひとつ。世界初(OPPO調べ)という10bitフルパスカラーシステムを実装し、カメラの入力(撮影)から保存、ディスプレイ表示で10bit処理を行うことで、最大10億色(10bit)という色数を誇ります。

  • 約6.7インチのAMOLEDディスプレイでは10億色の色再現が可能

これまでも、カメラの静止画はRAWやHEIF形式で保存することで10bit記録が可能でしたが、Find X3 Proでは表示するディスプレイも10bitに対応した点がポイントです。一般的なディスプレイは8bit(1,677万色)の色数ですが、10bit表示ではより多くの色を表示して、より滑らかなグラデーションを表現できることになります。

  • ディスプレイのカラーモード設定。色域の広いDCI-P3での表示に対応。10bitの表示能力を生かすにはこのモードが最適でしょう

実際にそこまでの違いが区別できるかどうかは別として、明るく見栄えのよいディスプレイであることは間違いありません。

ディスプレイの表示モードにはさらに、ブリリアント、穏やか、シネマティック、鮮やかの4種類があり、色域はブリリアントでNTSC比104%、DCI-P3比100%をカバー。穏やかはNTSC比71%、sRGB比100%、シネマティックはNTSC比97%、DCI-P3比100%、鮮やかはNTSC比97%、DCI-P3比100%といった具合に、色表現だけでなく色域も切り替えて表現されます。

画面表示では「色補正」機能も注目。日本人では男性の20人に一人、女性の500人に一人の割合で色覚多様性があるといわれており、異なる色の見え方をする人もいるため、自分の見え方に合わせて画面表示の色を制御する機能です。画面に従って似た色を選んでいくと、その人に合った色に補正してくれます。

  • 色覚多様性に対応する色補正機能。プリセット設定もありますが、パーソナライズした色補正に設定することもできます

動画の解像度を向上させる「動画の鮮明化」、SDR映像をHDR映像に変換するビデオカラーエンハンサーといった動画に関する「ウルトラビジョンエンジン」も搭載。既存の映像をより高画質で見たい場合に有効です。ちなみに鮮鋭化とエンハンサーは共存せず、切り替える必要があるため、よく使う方を設定しておくといいでしょう。

  • 細かな操作性を改善するジェスチャー機能も搭載。3本指でのスクリーンショットは使いやすく便利でした

  • UI面では、アプリアイコンのカスタマイズ機能なども。単に丸角だけでなく、細かくデザインを変更できます

ディスプレイは大画面ですが、本体はそれほど重くありません。本体サイズは縦163.6×幅×厚さ8.26mm、重さは約193gです。200gを切っているため、決して重すぎず、カメラがある上部にやや重心を感じるものの、バランスは取れています。

  • 滑らかでミラー処理された背面は未来的

背面はなだらかでカメラ部が盛り上がる個性的なデザイン。グロスブラックは背面がミラーのように反射し、独特の雰囲気です。宇宙船をモチーフにしたというデザインですが、流体金属のような印象で未来感があります。今回は試用していませんが、ホワイトモデルは反射がなく、指紋なども付きにくいので扱いやすいのですが、インパクトはグロスブラックが上でしょう。

  • 流線形でなだらかな膨らみのあるデザイン。柔らかな曲線ですが、メタリックな外観によって未来的な印象も

カメラ部の出っ張りはなだらかで、何かにぶつかったとき傷が付く心配が少ない点もメットです。ディスプレイ側も背面も、側面がカーブした形状となっていて、手にフィットしやすいデザインでした。

  • 本体側面。薄型で手のひらにフィットするカーブ

  • 底面にはSIMカードスロットとUSB Type-C端子。薄型ボディのためか、イヤホン端子は搭載されていません

現代的なスマートフォンカメラは「顕微鏡」が楽しい

カメラは、メインの広角、超広角、望遠を搭載。広角カメラと超広角カメラで同じセンサーを利用します。レンズが異なるので描写が同じとはいえませんが、スマホカメラは「メインカメラは高画質だけどほかのカメラは画質が落ちる」場合が多いため、それに比べればセンサー性能で差がないことは、メインカメラに近い画質で超広角カメラも撮影できるメリットがあります。

実際、メインカメラと超広角カメラの画質に大きな差はなく、両方を積極的に使いたくなりました。

  • カメラは超広角、広角が右側に並び、左側にあるのが顕微鏡カメラ。その下にある小さいカメラが望遠カメラです

  • メインカメラ(写真上)と超広角カメラ(写真した)で撮影。写る範囲は大きく異なりますが、特に中央付近の画質を見比べると、大きな差は感じません

  • 望遠カメラに切り替えて2倍ズーム(写真上)と5倍ズーム(写真下)を見ると、画質は変化しています。窓ガラス越しとはいえ、メインカメラに比べるともの足りない印象。5倍では拡大して確認するとやや厳しい画質です

メインと超広角のカメラは、いずれもソニーと共同開発したという有効5,000万画素の1/1.56インチセンサーを搭載。PDAF(Phase Detection Auto Focus:位相差検出オートフォーカス)用のセンサーも備え、メインカメラは光学式手ブレ補正も持っています。

写真の画質はかなりインパクトのあるくっきり・はっきり系。HDRとシャープネスも強めです。スマホカメラらしい画質で、SNSなどで映える写真が撮影できるでしょう。かといってレンズの描写は雑ではなく、メインも超広角もよく解像しています。

  • メインカメラで撮影。シーンにもよりますが、晴天下で色ノリのいい被写体を前にすると、かなり派手な色彩になります。HDRもよく効いて、現代的な画質といえるかもしれません

  • 超広角カメラでは周辺の歪みは仕方ありません。細かい部分までよく解像しており、メインカメラと同じように活用できます。シャープネスは強めです

  • 安定した描写が大きな特徴。手軽に撮影しても破綻がほとんどないので、スマホカメラとしては優秀です

望遠カメラは、1,300万画素のハイブリッド5倍ズームを搭載。最大20倍のデジタルズームまで対応します。ハイブリッドズームということで、実際の焦点距離は2倍となり、5倍まではデジタルズームになるようです。カメラのUIとしては、0.6x、1x、2x、5xという形で倍率が変わります。メインカメラと超広角カメラに比べて、望遠カメラの画質が落ちる点は残念なところ。

  • メインカメラと比べると画質差はありますが、望遠カメラも2倍ズームならまずまず見られます。細かい部分も再現しようとしているせいか、シャープネスはかなり強めです

  • 望遠カメラで5倍までズームしていますが、もともとデジタルズームかつセンサーサイズも小さいため、あまりボケはありません。その分、失敗は少ないのですが、画質はメインカメラと比べて落ちます

  • デジタルズームは最大20倍まで。20倍ズーム(写真下)になると、5倍ズーム(写真上)と比べても画質はかなり劣化します。用途に応じて使いどころが肝心

Find X3 Proのカメラ機能で大きな特徴なのが「顕微鏡」モード。理科の実験で使ったような30倍と60倍という倍率の顕微鏡として使えるのです。マクロカメラとデジタルズームを併用しているようですが、とにかく被写体に対してカメラをギリギリ(1mm程度)まで近づけると、目には見えないミクロの世界が画面に広がります。

  • その他のモードから顕微鏡モードを選択すると1:1のアスペクト比になり、被写体に思い切り近づいて撮影できるようになります

  • 被写体にほぼ密着させて、そこからFind X3 Proの左上(カメラと反対側)をわずかに浮かせるようにするとうまくピントが合うようです

  • 顕微鏡モードで撮影。布の繊維を拡大しています

  • マクロカメラが顕微鏡カメラを兼ねており、レンズ周辺にリングライトを配置

手近なところだと布や花、ディスプレイなどを撮影するだけでも面白い写真が撮れます。マクロカメラの周辺にはリングライトもあり、ほぼ密接した状態でも被写体を十分に写しとってくれます。光量はさほどでもないリングライトですが、被写体に近づけた状態であれば十分です。

  • 有機ELディスプレイを撮影。ドットが見えて、黒の部分はまったく発光していないのが分かります

  • 60倍で撮影。さらにアップになりますが、画質は劣化してしまうので判断が難しいところ

顕微鏡モードの画質的には、倍率30倍だと拡大してもそれなりに見られる画質ですが、60倍になるとデジタルによる処理で画像は荒れてしまいます。ただ、拡大しなければ違和感のないレベルに処理されており、手軽な顕微鏡として十分に楽しめるでしょう。

ただし撮影はそれなりに難しく、Find X3 Proをきっちり固定しないときちんと撮影できません。Find X3 Proをしっかり持ち、被写体にカメラ部をピッタリとくっつけてから、気持ちカメラと反対側を浮かせるようにすると比較的安定します。夜景で手ブレを抑えるときより、さらに慎重な気持ちで撮影するといいでしょう。

扱いは難しいが将来性のある10bit撮影

Find X3 Proのカメラでもうひとつの重要なポイントが、色深度10bitへの対応です。一般的にカメラは8bit(1,677万色)で画像を保存します。これはJPEG形式(圧縮)の限界で、RAW保存では10bit以上ある色深度が、JPEG保存時には8bitへ圧縮されます。

前述の通りFind X3 Proでは、この処理をカメラのセンサー入力からディスプレイ出力まですべて10bitで行う点がウリです。保存に関しては、JPEG形式では10bit保存ができないので、HEIF形式を利用しています。

10bitのHEIFファイルは手元のWindows環境では扱えず、Find X3 Pro以外のデバイスで活用したい場合は注意が必要です。単純なHEIFファイル(8bit)であればWindowsでも扱えますが、これが10bitになるとアプリケーションや外部ディスプレイの10bit対応も必要になってきます。

  • 設定で「10ビットカラー」をオンにすると自動的にHEIF形式で保存され、10bitカラーになります

  • 撮影した写真を確認すると「10bit」の表記が現れます

もちろん、Find X3 Proのディスプレイは10bitに対応しているので、10bit HEIFの色をすべて表示できます。なお、Find X3 Proで撮った写真をSNSなどで利用する場合、共有機能で出力するときには自動的にJPEG画像(8bit)に変換してくれるので、あまり心配はいりません。

もともとFind X3 Proのディスプレイは明るく色彩豊かに表現してくれることに加え、カメラも派手目の色再現をします。結果として色が飽和しやすいため、色数の多い画像処理にはメリットがあります。

ただ、「10bitと8bitの違い」はそれほど明確ではありません。どんなシーンでも見分けが付くというわけではありませんが、基本的にカメラは最高品質で撮るべきだと思いますので、10bit HEIFで撮影しておいて損はないでしょう。将来的に10bitが一般的になったときに本領が発揮されます。

ハイパフォーマンスなハイエンドスマートフォン

SoCはクアルコムのハイエンドチップセット「Snapdragon 888」です。メモリは12GB、ストレージは256GBを内蔵。一般的な使い方からゲームなどのパフォーマンスが必要なシーンまで、快適に動作します。

ベンチマークテストの結果も良好で、3DMarkやGFXBench、GeekBenchでも優れたスコアでした。Snapdragon 888は重い処理を続けていると熱くなりがちですが、Find X3 Proの背面はそれほど熱くならず、カメラのある本体正面が熱くなります。上方に向けて放熱しているように思われ、ゲームで本体を横にしてコントローラーのように持った場合、片側が熱くなりました。持てないほどの熱さではありませんが、ちょっと注意が必要かもしれません。

  • ベンチマークでは十分以上の性能を発揮。これはGeekBenchの結果

  • 3DMarkのストレステストを実施すると、スコアは良好ながら変動が大きめ。パフォーマンスとバッテリー寿命のバランスともいえますが、ベンチマーク中はスマートフォンの上面がそれなりに熱くなりました

幅広いネットワークに対応している点も魅力で、SIMフリー版なら5GのSub6はドコモ、KDDI、ソフトバンク、楽天モバイルの周波数帯域をカバー。デュアルSIM、eSIMもサポートしており、auのpovoをはじめとした各社の低価格プランでも利用しやすくなっています。

独自性能あるデザイン、大画面でありながらスマートで薄く、軽量なボディ、優れたパフォーマンスと機能、見栄えのする画質と楽しいカメラ機能と、Find X3 Proはスキのないスマホです。au限定ですがキャリアで買ってもよし、SIMフリーで買ってもよしというのもうれしいところでしょう。