NECは7月12日、政府が進めるスーパーシティ構想に向けた取り組みを加速させるべく、今後の事業計画を発表した。同社は全国31都市のスーパーシティの公募に応募し、スマートシティの事業者として13都市に参画しているが、2025年度までにスーパーシティおよびスマートシティの取り組みを全国200都市に展開し、海外も含めて500億円の売上を目指す計画だ。

  • NECのスマートシティとスーパーシティの参画状況

スーパーシティ/スマートシティの社会実装を見据えた社内体制やソリューションの強化など、新たな取り組みを推進すべく、NECは約100 名から成る専門組織「スーパーシティ事業推進本部」も新設。

スーパーシティ事業推進本部長を兼務する同社執行役員でスーパーシティ事業推進本部の本部長も務める受川裕氏は、「本部組織だけでなく、NECグループ全国114 カ所の営業・開発・保守拠点と連携し、地域に寄り添ったスーパーシティ/スマートシティに取り組んでいきたい」と語った。

  • NEC執行役員 クロスインダストリーユニット担当 受川裕氏

スーパーシティは国家戦略特別区域法の改正法案(スーパーシティ法案・2020年5月可決)などに基づき、10年先のより良い生活を先行的に実現する「まるごと未来都市」を国や地方自治体、地域と事業者が一体となって目指す取り組みだ。ICTなどの新技術を活用して、都市計画や管理の高度化や都市固有の課題解決などを目指す「スマートシティ」の特別版と位置付けられている。

NECが掲げるスーパーシティのビジョンは、『世界に誇れる「地域らしい」まちの進化』となり、「経済基盤の活性化」、「住む人・集まる人のQOL向上」、「地域特有課題の解決」をビジョン実現のための3つの柱と捉えている。

3つの柱の実現、そしてスーパーシティの社会実装のための3つの重点施策として、NECは「効果検証に基づく都市経営サービス」、「住民を中心とした共創プロセス」、「暮らしに寄り添う分野間データ利活用」を掲げる。

  • NECスーパーシティ実現のための3つの重点施策

重点施策について受川氏は、「今後は都市の経営という観点で歳出改善、歳入拡大を実現できるかを念頭に、コンサルティングとサービス実装のトータルコーディネートを進めていく。地域との共創を重視し、住民の意見を聞くことはもちろん地場のパートナー企業とも連携し、複数の分野にまたいだ複雑な課題をデータ利活用によって解決していきたい」と意気込む。

スーパーシティ/スマートシティの実現において、技術面では複数分野間でのデータ連携が重要で、異なるサービスやソフトウェア間で必要なデータを迅速に連携・共有するためにはオープンAPIによるデータ連携基盤、つまり都市OSの整備が欠かせない。

NECは欧州発のグローバルスタンダードなデータ利活用基盤「FIWARE」をベースにパーソナルデータ利活用サービスを組み合わせたデータ連携基盤を提供。AIによる分析、生体認証技術を用いた個人認証、トップレベルのセキュリティ技術に基づくID管理・連携などを実装した都市OSを提供する。

  • NECが提供する都市OS

都市OSと組み合わせた先端的サービスの提供もスーパーシティの特徴だ。例えば、防災の領域では、NECのAI技術を活用して機械学習を用いた河川の水位などの分析・予測や人工衛星を用いた地表の変化の観測、スーパーコンピュータによる津波浸水・水被害推計といった災害の変化に即したリアルタイムな防災情報の提供などが期待できる。

また、観光の領域では、NECの顔認証技術を用いた本人確認や混雑度検知、群衆行動解析など、感染症リスクを低減した安全で快適な周遊の提供が可能だ。将来的には、量子コンピュータを活用した最適化(渋滞の緩和や再生可能エネルギーの利用効率性の向上など)の実装もありうるという。

北海道更別村での高齢者のQOL向上に向けたサービス提供のほか、富山県富山市の産官学民の領域連携などでFIWAREをベースにしたデータ連携基盤が活用され、スマートシティ、データ利活用の先進市場である欧州、及びインドでも実績がある。今後、NECは日本国内の先進事例をインド・ASEAN・豪州に拡大していく予定だ。