世界最大のモバイル関連展示会「MWC Barcelona 2021」が、この2021年はスペインの都市バルセロナの展示会場、およびオンラインでハイブリット開催となりました。イベント初日の6月28日に開催された基調講演「Future is Digital」に登壇したクアルコム社長・次期CEOクリスティアーノ・アモン氏は、モバイル向けフラグシップSoCの強化版「Snapdragon 888+ 5G Mobile Platform」を発表しました。

  • 最新のSoC「Snapdragon 888+ 5G Mobile Platform」を発表。搭載端末に関する見通しが語られました

  • オンラインイベントに登壇した米クアルコム社長・次期CEOクリスティアーノ・アモン氏

Snapdragon 888+搭載デバイスの登場は間もなくか?

Snapdragon 888は2020年末にクアルコムが開催したオンラインイベントで発表されたモバイル向けフラグシップSoCです。

その名前に「+/Plus」を関する新しいSoCは、Kryo 680 CPUの処理性能を2.84GHzから3GHzにクロックアップ。機械学習処理を支えるAIエンジンのパフォーマンスは26TOPSから32TOPSへ、約20%ほど高くなりました。

アモン氏はその効果が特にデジタルイメージングやモバイルゲーミング、コンテンツストリーミングなどクリエイティブ、エンターテインメントの体験に表れるだろうと説いています。

  • Snapdragon 888+ 5G Mobile Platformのイメージ

  • CPUは処理性能を強化しています

  • 機械学習処理のパフォーマンスも約20%向上します

Snapdragon 888とSnapdragon 888+は既に発表済みか、または開発中である130機種のデバイスに搭載される見込み。クアルコムはSnapdragon 888+を載せたデバイスについて、2021年の第3四半期(7月〜9月)に発表される見通しを示しています。既にASUS、Honor、Motorola、vivo、Xiaomiなど中国を中心とする端末メーカーが、積極的に新プラットフォームの採用に名乗りを挙げているようです。

5Gネットワークの拡大を後押しするクアルコムのソリューション

5G関連では、他にもスモールセル基地局向けの「FSM(フェムトセル・​ステーション・モデム)」シリーズから第2世代のソリューションが発表されました。4nmプロセスルールにより製造されるFSM200xxシリーズのチップは消費電力効率を高めながら、そのサイズを前世代の約半分にまで小型化しています。

  • スモールセル基地局向けの5Gソリューション「FSM200xxシリーズ」を発表

データスピードは最大8Gpbsとし、5Gの周波数帯を広くカバーします。仮想化されたRANアーキテクチャーとの互換性も確保。アモン氏は産業用5Gプライベートネットワークへの関心が高まる中で、5Gの高度化技術仕様をまとめた3GPP Release 16をサポートする最も信頼性の高いソリューションであると、FSM200シリーズの特徴を語りました。

同社は今年(2021年)の春、下り最大10Gbpsのデータスピードを実現する第4世代の5G対応モデム「Snapdragon X65 5G Modem-RF System」を発表しています。アモン氏は、新しいX65モデムを搭載するコンシューマー用デバイスの登場について「今年中に商品化されることを期待している」と述べています。

アモン氏はまた、同社がこの最新のモデムチップを使って5G SAモードでのミリ波とSub-6を束ねたスペクトラム・アグリゲーションの技術による高速通信に成功したことについても触れ、「ビデオ会議や大容量ファイルのやり取りなど、ビジネスシーンに必要不可欠な無線通信をクアルコムの5Gプラットフォームが実現する」と強くアピールしていました。

5Gの普及が世界経済の巻き返しを実現する

基調講演の壇上で、アモン氏は「新型コロナウィルスによるパンデミック後から人とデバイス、サービスをリアルタイムに常時接続できる5Gネットワークのメリットがより多くの人々に強く認識されている」としながら、クアルコムの5G向けソリューションがコンシューマー向けのモバイルデバイスにとどまることなく、コネクテッドな交通制御システムにオートモーティブ、工場で稼働する産業向けロボットのオペレーションにまで変革をもたらすものであると見解を語りました。

  • 5G対応のコンシューマー向け機器のカテゴリーが今後さらに増えるという予想が示されました

新型コロナウィルスによるパンデミックは世界各国における5Gのローンチに少なからぬ影響を与えたものの、徐々に落ち着きが見えてきた世界各地ではモバイルネットワークのエコシステムが再び順調に拡大しつつあるようです。

今から16カ月前には、世界で50社の通信事業者が5Gの展開に乗り出しました。2021年6月現在では165社以上の通信事業者が5Gのテクノロジーを導入済みであり、また今後に向けて270以上の事業者が投資を強化しているため、今後はさらに5Gの普及がコンシューマーの体験を伴う形で広がるだろうとアモン氏は語りました。

クアルコムがソリューションを提供するコンシューマー向けの5G対応端末はスマホやタブレット、モバイルPCの枠を超えて、今後は家電製品やXRヘッドセットにも拡大するかもしれません。

基調講演ではクアルコムが予測する5Gネットワークの拡大による経済効果についても言及されました。欧米では5Gの普及により、2025年までに数兆ドルのGDP拡大がもたらされるといいます。また中国では5Gの商用化が350万以上の新たな雇用形態をつくり、5Gを中心に世界経済の巻き返しが予測できるとの強い期待感も示されました。

  • 5Gミリ波を活用する商用サービスは日本も含む世界各国に勢いよく展開しています