IoTプラットフォーム事業を展開するソラコムは6月23日、セルラー通信の利用が前提であったSORACOMの各種プラットフォームサービスをWi-Fiや有線通信、衛星通信といったあらゆるネットワークから利用可能にする新サービス「SORACOM Arc(ソラコムアーク)」の提供を開始した。
6月22日に開催された発表会にて、ソラコム最高技術責任者の安川健太氏は、「2021年は、SORACOMがあらゆるネットワークから接続可能なIoTプラットフォームへと進化する年だ」と、説明した。
ソラコムでは、世界中で利用できるIoT通信とともに、IoTシステムの開発および運用を支援するプラットフォームサービスを提供している。IoT通信回線数は、提供開始から5年間で300万回線を超え、顧客数は世界全体で2万社を超えた。
SORACOMのプラットフォームにより、ユーザーコンソールやAPIを用いた回線管理、IoTデータの収集や可視化、認証や設定情報をSORACOM側で管理・付与するクラウド連携などが可能で、開発にかかる期間を短縮することができる。しかし、これまで同プラットフォームサービスの利用にあたっては、同社が提供するデータ通信サービス利用が前提となっており、他の通信では利用できなかったという。
そこで同社は、Wi-Fiや有線通信などのセルラー以外の通信手段からも、SORACOMプラットフォームサービスの利用を可能にするセキュアリンクサービス「SORACOM Arc」を発表。同サービスは、仮想SIMを各デバイスに対して発行し、仮想SIMを使って認証を行うことで、デバイスとSORACOMの間で安全で保護された通信経路を確立する。認証および安全な通信回線の確立には「WireGuard」を採用し、同プロトコルに対応したデバイスで利用可能だ。
「SORACOM Arc」では、仮想SIMを各デバイスに対して発行し、仮想SIMを使って認証を行うことで、デバイスとSORACOMの間で保護された通信経路を確立する。認証および安全な通信回線の確立には、最新の暗号化技術を利用するオープンソースのVPNを実装している「WireGuard」を採用しており、同プロトコルに対応したデバイスで利用できる。
同サービスの利用シーンとしては、セルラーとWi-Fi対応の2つのデバイスが混在しているが、クラウド側は同じ環境を使用したい場合などが考えられる。例えば、配送用ロボットを想定したユースケースでは、屋外のロボットにはセルラー通信、屋内のロボットにはWi-Fiを使い分けながら、同じ設定でユーザー企業のシステムに連携するケースや、同じロボットでも移動中はセルラー通信経由でクラウドに位置情報のみを送信し、配送拠点に滞在中はWi-Fiネットワークを利用して大量のログデータをアップロードするケースなどが想定される。
どちらのネットワークを通じて送られたデータも、SORACOMプラットフォームサービス上では単一のIDにひもづけて扱われることから、デバイス認証、クラウド接続、API管理の一元化が行えるとしている。
ほかにも、クラウド上のイントラネット環境に接続するのに閉域網サービスを使いたいが、コスト削減のためセルラー回線とインターネット回線を併用したい場合や、SORACOM IoT SIMを利用しているが、データ通信料を削減するために、可能な環境では Wi-Fi を併用したい場合などは、「SORACOM Arc」が活用できるだろう。
「SORACOM Arc」の利用料金は、仮想SIMの作成手数料が初期費用として55円かかり、基本料金が、1つの仮想SIMあたり55円/月(1GBの通信量を含む)。しかし、従来のSIMである「SORACOM IoT SIM」とひもづけることなく、仮想SIMを単独で作成した場合、1仮想SIMあたり88円/月(1GBの通信量を含む)。
データ通信料金は、SORACOMプラットフォームへのデータ通信量に応じて仮想SIMあたり22円/GB が発生する(上り/下りの合計。データ通信量は1GB単位に切り上げて課金)。