KDDIは6月23日、第37期定時株主総会を開催。同社の高橋誠社長が登壇し、株主から寄せられた質問に回答していきました。なお、新型コロナウイルス感染症の拡大防止の観点から議事は短縮し、株主に向けてはインターネットによるライブ中継も並行して行われました。
課題と取り組み
まずは、株主から事前に寄せられた質問について、代表取締役の村本伸一氏が回答しました。
ライフデザイン領域において、他社に遅れをとっている事業をどうするのか、という質問に村本氏は「ライフデザイン領域では決済、金融事業に積極的に取り組んでいます。取扱高は直近で9兆円超になりました。auでんきの契約者数は288万件と、お客様基盤が堅調に拡大しています」と現状を説明。
そのうえで、こうした人々の日常生活に密着したサービスは、au経済圏の中で繰り返し利用を促進できる重要で不可欠な事業であると強調。各種サービスの魅力化を加速することで、今後も経済圏を循環させていくと説明します。ちなみに、スマホ決済サービスのau PAYも、他社に遅れを取った後発のサービスでした。「他社に遅れて2019年にスタートしましたが、この2年間で急速にキャッチアップしています。決済・ポイントを利用可能な場所は約400万箇所に、会員数は3,200万人超に拡大しました」と村本氏。ライフデザイン領域において構築したお客様基盤を強みに、今後もさらなる成長を目指していく、とアピールしました。
ミャンマー事業についての質問には「海外の事業展開においては、これまでも危機管理を適切に行ってきました。今回のミャンマー政変のような状況下では、すべての関係者の安全確保を最優先します。あらかじめ策定していた事業継続計画(BCP)に基づき、緊急連絡体制の確立、リモート勤務への移行などを速やかに行いました。総務省、外務省、在ミャンマー大使館をはじめ、関係各所と情報交換を密に行っています。従業員の安全確保に努めながら、ミャンマー国民の生活に不可欠な社会インフラの維持に努めています」。
本年(2021年)9月にデジタル庁がスタートすることについて、KDDIの方針を聞かれると「弊社では、各省庁に必要な国内のネットワークを長年に渡り提供、サポートしてきました。今後、デジタル庁が進める各施策についても積極的に支援し、社会全体のDXに貢献していく考えです」。なお、全国の地方自治体においては、地方創生の観点で地元企業、ベンチャー企業に投資を行っていく方針とのことでした。
6Gでも先行してほしい
続いて、リアルタイムで寄せられた株主の質問に回答していきました。
NTTドコモでは、6Gに向けてIOWN(アイオン)構想などを打ち出しているが、KDDIは遅れているのではないか、と心配する声に技術統括本部の吉村和幸氏は「KDDIでは、KDDI総合研究所とともに次世代社会構想『KDDI Accelerate 5.0』を策定しています。これは、5Gで持続可能な生活者中心の社会Society 5.0を実現するものです」と切り出します。
簡単に説明すると、7つの分野のテクノロジーを使って、フィジカル空間とサイバー空間でデータを循環させるという内容。ドコモのIOWN構想はネットワークにとどまった話ですが、Accelerate 5.0ではネットワーク、プラットフォーム、ビジネスも含めて進めていると説明します。そのうえで「国内外の大企業からスタートアップまで、さまざまなプレイヤーと一緒になって社会システムを作る」(吉村氏)ことで、5Gの次の動き(つまりBeyond 5G)を推進していくと話していました。
高橋社長は「いま総務省でも、2030年に向けて6Gの検討会を始めており、我々も参画しています。6Gでも遅れをとらないよう進めていきます。もっとも、5Gで成功しないと6Gにもつながっていかない。このあたり、しっかり対応していきます」と話していました。
menu提携で今後の展開は
資本提携したデリバリー&テイクアウトアプリ「menu(メニュー)」の展開について聞かれると、取締役執行役員の森田圭氏は「加盟店の店舗数ではまだUber Eatsには劣りますが、ようやく6万店まで増えました。先行の他社サービスとほぼ遜色のない規模です。プロモーションも加速していきます。今後は、スマートパスプレミアムやau PAYとの連携により、サービスの利用者数の拡大を図り、他社を上回る規模に成長させていきます」と回答しました。
+メッセージが普及しない
大手3キャリアが共同で開発した「+メッセージ」が普及していない、MVNO、サブブランド、楽天でも使えるようにしたらどうか、という趣旨の提案に森田氏は「もともと、携帯電話番号のみで使えるショートメッセージサービスのようにシンプルなUIで、安心安全を掲げたサービスです。本人確認性が高く、また審査に通った企業のみが公式アカウントを提供できるという点でも、なりすまし、フィッシング詐欺が避けられると評価をいただいています」とサービスを強調したうえで、大手3キャリア以外の事業者への提供については「私どもの方から『使え』とは申し上げられない。各社からお申し出いただければ検討します。将来的には海外の事業者とも連携できる可能性があると考えています」と答えるにとどまりました。なお+メッセージの現在の利用者数は、KDDI、NTTドコモ、ソフトバンクの3社合計で2,300万とのことでした。
天下りについて
以前、ソフトバンクグループの孫正義会長は「天下り」について「日本の構造的な癒着問題だ」と興奮気味に批判していました(参考記事:「ソフトバンクGの純利益が5兆円に到達 - 孫会長は『5兆円、6兆円でも満足しない男』」
その考えについて聞かれると、高橋社長は「実は、我々の企業にも在籍しています。我が国の情報通信政策、あるいは技術の発展に寄与するのであれば、雇用することがあってもよいのかなと思っています。採用にあたりましては、当然、国家公務員法に抵触してはならないので、十分に配慮したうえなら。そういうことがあってもよいのでは。大人数ではなく、本当に最適な方がいらっしゃればという話です。いずれにしても、法的なことは遵守しながらということです」と回答しました。
健康管理には気をつけている
経営者の健康管理について聞かれると、高橋社長は笑顔で「プライベートなことなので簡単に話しますが、私はアウトドアが好き。土曜日、日曜日には趣味のジョギングをします。社員には、年間で何kmまで走ると宣言しています。それを実現することで体力を維持しています」と回答。これからも健康に気をつけて参ります、お気遣いいただきありがとうございます、と話していました。