KDDI、三菱重工業、NECネッツエスアイの3社は6月21日、地球環境保全を目的とした消費電力削減および脱炭素化の取り組みとして、液体でサーバを冷却する液浸冷却装置を使用し、それらをコンテナに収容した小型データセンターの実現および国内における2022年度の社会実装を目指して、12月末までの予定で実証実験を開始した。

  • サーバ冷却装置と小型データセンター

KDDIは、2020年7月から台湾で、冷却媒体に液体を利用した液浸冷却技術でIT機器を高効率に冷却をする検証に加え、その冷却技術を利用して20ftのコンテナにデータセンターを収容する検証を行っている。

今回の実証では、3社が業界の枠を超えてそれぞれの強みを持ち寄り、50kVA相当のサーバと液浸冷却装置を12ftのコンテナに収容し、十分な冷却性能を発揮しながらも業界最小水準というPUE1.1以下のエネルギー効率を目指す。

これにより、データセンターとしての消費電力は約35%の削減を見込めるといい、データセンターにおける電力大量消費の課題に応えると同時に、二酸化炭素の排出抑制が期待できるとしている。

また、データセンターの置き場所の選択肢が増え、設置環境や条件を緩和し設置が容易なデータセンターを実現することで、既存のデータセンターの処理を補完し、高速かつ遅延の少ないデータ処理を可能にする。さらに、高性能で高密度に実装した冷却機構は、より大型のデータセンターにもサーバ実装数の増加やエネルギー消費量の低減といったソリューションを提供できるとのこと。

3社は今後も、今回の実証を通じて、国内のデジタルトランスフォーメンション (DX) の発展と共に、脱炭素化および地球環境保全に貢献していく方針だ。

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同実証実験の具体的な内容は、冷却効率の向上、小型データセンターの実現、社会実装に向けた課題の洗い出しと解決策の検討の3点。

冷却効率の向上に関しては、冷媒冷却用ラジエーターおよび外気冷却機構を国内メーカーと開発し、さらなる排熱処理能力の向上と省電力化を実現する。日本の厳気象などを想定し、冷却能力が十分に機能することを確認するとのこと。

小型データセンターの実現については、実装設計や小型装置の開発など、さらに小型なデータセンターの成立性を検討する。

社会実装に向けた課題の洗い出しと解決策の検討に関しては、設置環境での外部影響を評価し、製品化時のコスト見積および商品性を検討する。加えて、準拠すべき法令・規制の洗い出しと適用に向けた課題解決を施し、国内認可をゴールとする。なお、各社の役割は図の通り。

  • 各社の役割