WWDC21の基調講演では、各OSの大きなアップデート以外にもさまざまな情報が発表されました。その中から、ライフスタイルやQOL向上に関わるものをいくつかご紹介します。

リビングでのコンテンツ視聴体験を向上させるtvOS

今回の発表における「FaceTime」刷新に見られるように、コロナ禍におけるビジネスやライフスタイルの変化に対応した機能が求められています。離れた人と視聴体験を共有する「SharePlay」や、増大する「メッセージ」でのやり取りからコンテンツを整理しておける「Shared With You(あなたと共有)」もこの流れにあると言え、tvOSも両機能に対応します。

  • さまざまなアプリでシェアされたコンテンツをまとめて確認できる「Shared With You(あなたと共有)」。tvOSもこれに対応します

さらに、「All of You」では見ているメンバー全員の興味関心に合わせたレコメンドを表示。また、基調講演では触れられませんでしたが、iPhoneやiPadのFace ID/Touch IDで購入や認証が可能になります。

  • 見ているメンバーに合わせて共通するレコメンドを表示する「All of You」

AirPods Pro/AirPods Maxを使った3D空間オーディオがサポートされ、映画館のような没入感あるサラウンドサウンドを提供。使用中に位置や向きが変わっても、ヘッドトラッキング機能によって常に一定の位置から音が聞こえる環境が維持されます。

HomePod miniをApple TV 4Kのスピーカーとして接続したり、リモコンに触れなくてもHomePod miniからSiriに頼むだけでコンテンツの再生や操作が可能になります。

「大きな画面で見る」ために求められる配慮が、さまざまな形で追加されています。

「ホーム」は共通規格「Matter」に対応

「ホーム」アプリについては、Apple Watch版が大幅にアップデートされ、「インターコム」機能で対応機器に音声メッセージを送ったり、状況に応じて必要な機器にすぐアクセスできるよう使い勝手が向上します。カメラの映像確認も可能になります。

  • HomeKit対応カメラは、人・乗り物・動物に加え荷物の認識も追加。認識されると通知が届き、カメラの映像を確認できます

また、サードパーティ製のHomeKit対応機器をSiriで操作できるようになります。例えば「30分後に証明を消して」というように、時間を指定した操作も可能です。さらに、HomeKit対応ドアロックで使える「ホームキー」は、Walletに鍵を追加し、iPhoneやApple Watchをかざすことでロック解除ができます。

  • Walletが自宅やオフィスの鍵に。エクスプレスモードに設定すれば使用の際の認証が不要。他人に貸すことも可能です

これに加え、AmazonやGoogleなどが創設企業として名を連ねるスマートホーム共通規格「Matter」への参画により、今年後半から対応機器が登場することがアナウンスされました。対応機器が大幅に広がることが期待されます。

  • Matter対応機器はホームアプリから操作が可能。国内メーカーでは三菱電機やパナソニックなども参加している

「ヘルスケア」の記録を健康維持に役立つものへ

身体に関するさまざまな記録を一元的に管理する「ヘルスケア」アプリには、新たに「トレンド」機能が追加され、単に記録だけでなく、値を分析し変化の兆候が通知されるようになります。

これは、活動量、運動時間、歩数、血中酸素など、iPhoneやApple Watchで自動的に計測されたものだけでなく、血糖値、体温、インスリン投与など、連携する機器や手動で入力されたデータにも対応します。蓄積から活用へ、アプリの役割が転換します。

  • 「トレンド」機能はヘルスケアデータの変化の兆候を通知。各項目の意味を理解するために役立つ詳しい情報も追加されます

また、自分のヘルスケアデータを他の人に共有することが可能になります。例えば、離れて暮らす親や、介護が必要な家族などのデータを共有してもらい、遠隔でデータを確認したり、トレンドに変化があった際に通知を受け取ることができます。

  • ヘルスケアデータの共有には、提供する側から設定が必要。共有する項目も細かくカスタマイズできます

新たな計測項目として「歩行安定性」が追加されます。これは、iPhoneのモーションセンサーにで計測した歩幅やスピードなどの値から、独自のアルゴリズムでバランスや筋力の状態を読み取り、転倒リスクの変化を検知するというものです。歩行安定性は「OK/Low/Very Law 」の3段階で評価されます。また、歩行安定性が低下する理由の説明や、向上させるためのエクササイズ動画も提供されます。

  • 歩行時のバランス変化をiPhoneの計測データから監視。早い段階で転倒リスクを避ける対策を取ることができます

アクセシビリティ

先月のプレスリリースで発表された新たなアクセシビリティ機能が、この秋のアップデートで各OSに搭載されます。例えば、Apple Watchのアシスティブタッチとしてクリンチ(握る)やピンチ(つまむ)など手の動作で操作する機能、iPhoneでボイスオーバー(音声操作)を使用する際に写真に写っている内容を音声で伝える画像説明機能などです。

  • 「人の顔を少し右から見たところ。茶色の巻毛がかかり、微笑んでいる」のように写真の内容を音声で説明。「マークアップ」メニューから手動でテキスト入力されたものを読み上げることも可能

iPadOSでは、サードパーティ製のアイトラッキング(視線追跡)デバイスに対応します。目線でカーソルを動かしたり、長く見続けることでタップするといった形で、iPadの操作が可能になります。

さらに聴覚障害のある方向けに、ヘッドフォン調整機能でオージオグラム(聴力検査の結果を示すグラフ)の認識がサポートされます。これにより、聞こえ方の状態に最適化したオーディオ設定にカスタマイズすることが可能です。また、新たにマイク付きの補聴器がMFiパートナーから年内に提供される予定です。補聴器を使いながらハンズフリーで通話が可能になります。

  • 紙やPDFで提供されるオージオグラムを読み取り、聴覚の状態に最適化したオーディオ設定にカスタマイズ