自分で選ぶ?選んでもらう?買い物の新スタイル

実態のある物を買うタイプのサブスクが「定期購買型」と「キュレーション型」だ。どちらも短期で消費するタイプの物を扱うが、買い方で分かれている。

「定期購買型」は同一の消費財が定期的に届くサービスで、新聞や雑誌の定期購読が含まれる。毎朝配達される牛乳などもここに入るだろう。サブスクという言葉が登場する前からずっと利用されてきたサービススタイルだが、最近では健康食品や化粧品、おむつ、コンタクトレンズといった各種消耗材の定期購買サービスが増えている。ユニークなものも増えていて、ダロワイヨのマカロンサブスク、コカ・コーラの自動販売機のサブスクなどが話題になった。

  • コカ・コーラは今年4月、全国の「Coke ON Pay」対応自販機を対象に、月額料金2700円で同社の好きな製品を1日1本交換できる定額サービス「Coke ON Pass」を開始した

物を買うのは同じでも、自分選ぶのではなく選んでもらうことを楽しむのが「キュレーション型」だ。特定のテーマに基づいて、専門家やAIがキュレーションした商品が届く。これは単なる消耗品というよりは少し華やかな印象のものや、専門家の知識に価値が感じられるタイプのものが多い。

例えば、日比谷花壇の「ハナノヒ 365days」はフローリストがセレクトしたブーケが毎月届く。花のキュレーション型サービスは豊富で、専門家が選んでくれることはもちろん、「自分では花を買う習慣がない」「花を選ぶのが照れくさい」という人にも使いやすく、比較的低価格で生活が華やぐことから人気がある。

  • 2020年12月に提供が始まった日比谷花壇の「ハナノヒ 365days」。今年4月からは「パティスリー・サダハル・アオキ・パリ」とのコラボレーションによる新コースも提供している

そのほか、ビューティーアドバイザーが選んだビューティープロダクトが届く「istyle:BLOOMBOX」や、健康的なおやつを指定した好みを参考に送ってくれる「snaq.me」なども人気だ。また、子育て世代向けには知育玩具を年齢別に選んでもらえる「HappyToy」、選書のプロが名作絵本を届けてくれる「絵本クラブ」など、専門家に頼れるのが嬉しいサービスもある。

この2つのタイプは関係性があり、定期購買型を利用していた人が一歩進めてキュレーション型を利用するようになる、という動きもあるようだ。フルーツや化粧品を自分で選んで買っていた人が、専門家やAIに選んでもらう楽しみを体験したいと考えてサービスを乗り換えたり併用したりするような可能性があるという。

「借りる」もサブスク! 短期&長期&消耗材購入で3分類

リアルな物品を手にするタイプで、消耗品ではなく比較的大きな物を扱うものとして挙げられているのが「メンテナンス型」、「長期リース型」、「短期レンタル型」だ。どれも物を買うのではなく借りるサービスとなっている。

「メンテナンス型」は繰り返し使える本体部分を無償または安価で借りて、消耗品部分を従量課金で購入する。昔からあるオフィスのコピー機や、家庭にも普及しているウォーターサーバーなどがそうだ。高額なものが安価に利用できる、いろいろなものが試しやすいなど手軽さが特徴だろう。

「長期リース型」と「短期レンタル型」は期間が主な違いではあるが、扱う物品の価格帯もかなり違う。「長期リース型」はアートや家具、自動車といった高額商品を数カ月から年単位など長期的にわたって利用できる。例えば、家具を年単位で借りる良品計画の家具月額サービス、自動車を月額で利用する「Honda Monthly Owner」などがある。購入するより低価格であるだけでなく、家具ならば処分の必要がないこと、自動車ならば自動車保険やメンテナンス費用がかからないことなど新しい魅力も多い。

一方で、その日やその瞬間に使いたいアイテムや空間を利用できるのが「短期レンタル型」だ。洋服を借りられる「airCloset」、高級時計を利用できる「KARITOKE」などは、安価な料金でいろいろ選べることや高額商品が試せることがポイントだ。保管場所やメンテナンスコストが不要で、気分やシチュエーションに合わせて常に新しいものを利用できるのも嬉しい。

いずれも、昔ならばレンタルやリースと呼ばれていたサービスだが、最近では内容そのままにサービス名が変わったり、少し内容の違ったサービスになっていたりして、サブスクを名乗るものが増えている。

美容院も家事サポートも! 多彩なサブスクを上手に使おう

オンラインでサービスを月額利用するように、リアル店舗や自宅などで対面サービスを受ける権利が得られるものは「インストアサービス型」にあたる。美容室の定額使い放題サービス「Jocy:MEZON」や、家事から家族の見守りまで幅広く対応する家関連サービスの「KAJIER」などがこれだ。いずれも、定額を支払ってしまえば安心して利用できるのがユーザーのメリットだ。

少し毛色の違うものが「プロモーション型」。特定の店舗やオンラインストアに訪問するたびに、特典や割引を受けることができる。サブスク単体で利益を出すのではなく、サブスクを理由に定期的な接点を持つことでロイヤルティーを高めることを狙っている。1日1杯のコーヒー、1日1回の無料ガチャといった形で訪問するたびに得を感じられるサービスで、利用者はブランドを身近に感じるようになり、結果として、店舗やサービスの利用が増えるというわけだ。

さまざまなサービスがサブスクとして登場している。今回紹介したものは比較的大規模なサービスばかりだが、個店が提供するサブスクサービスも増えている。固定費になるため使い方によっては得なばかりではないものの、面白いサービスも多い。情報収集をして自分の買い物や所有のスタイルを見直せば、魅力的なサブスクに出会えるかもしれない。どんなサービスが自分に合うのか、今利用しているものが何にあたるのか、9類型を確認しつつサービス選びをしてみてほしい。