ICT教育推進のためプログラミング教育が必修化され、教育関連企業も教育現場の要望に応えて様々な教育ツールのラインナップがされるなか、地図でプログラミングという一風変わったプログラミング教育を開発、提案するのが地図業界の老舗ゼンリンだ。5月12日から14日まで東京ビッグサイトで開催された教育関連業者のための展示会「教育 総合展(EDIX)東京」内の「第2回 STEAM教育 EXPO」に同社の製品「まなっぷ」が出展されていた。地図の会社が作った教育ツールとはどのようなものかレポートする。

  • 「第2回 STEAM教育 EXPO」ゼンリンブースより

    「第2回 STEAM教育 EXPO」ゼンリンブースより

地図業界の老舗であるゼンリンは、その蓄積された地図データを元に様々なITビジネスを展開、カーナビゲーションから、位置情報を活用したIoTソリューション、行動支援サービスやエリアマーケティング、デジタルサイネージまで幅広い分野で業務展開しており、そんな同社が新たな事業として狙いを定めたのが初等教育分野。その足掛かりとして提案するのが今回の地図で学ぶプログラミング教材「まなっぷ」だ。

「まなっぷ」は、小学校の社会科の授業を通して地図を活用しながらプログラミング的思考を身に付けていくことをコンセプトに同社が開発する教育ツールで、主に小学3年生から6年生の社会化の授業を中心に5年生の算数や全学年の総合学習などでの活用を視野に入れている。

災害に対応して力を入れている防災教育において、地図を使ったフィールドワークと合わせて活用できる点もユニークで、実際に現地に赴き学習した内容を教室に戻って地図上にプログラミングとして表現しながら災害の知識とプログラミング的思考の二つを同時に身付けていくことを目的としている。

「まなっぷ」は、三つのステップで完了するシンプルなもの。まず地図上に出発地と目的の指定を行う。次に、地図に実際に訪れた場所のマーキング及び移動ルートの記述を行う。あとは設置した線やマーキングにカラーリングの変更や、コメントの掲載、写真や動画の設置やイベントの追加などの作業を行っていく。完成したプログラムは、始点の位置にいるキャラクター「まにゃっぷ」が地図上の指定したルートを移動しながら、プログラミングしたイベントを実行していく。課題に関する発表と意見交換、実際のプログラミングを通して、利用者に災害の知識、コミュケーション能力、プログラミングの知識の養成と多くのことを楽しく学べる仕組みだ。

  • 「まなっぷ」のメイン画面。左側にScratchに準拠したプログラムブロック、中央にプログラム用のキャンパス、右側にプログラミングする対象の地図を配置している

    「まなっぷ」のメイン画面。左側にScratchに準拠したプログラムブロック、中央にプログラム用のキャンパス、右側にプログラミングする対象の地図を配置している

プログラミングは、代表的な初等教育用プログラミングツール「Scratch(スクラッチ)」のUIを採用したもので命令の単位をブロックとして積み重ね、その組み合わせで命令を実行させていく。水色カラーで表示されたブロックが同社オリジナルのもので、地図記号などの地図に関連した複数の独自ブロックが搭載されている。

  • まず、実際に歩いたルートを地図上にマーカーで記す

    まず、実際に歩いたルートを地図上にマーカーで記載

  • 写真や動画撮影、注目のポイントにマーキングしていく

    写真や動画撮影、注目のポイントにマーキングしていく

  • 左側のプロックパーツを中央のプログラミング用のキャンパスにドラック&ドロップして積み木を組み上げていくようにプログラミングする

    左側のプロックパーツを中央のプログラミング用のキャンパスにドラック&ドロップして積み木を組み上げていくようにプログラミングする

  • パーツをクリックしながらプルダウンメニューでイベントなどを指定できる

    パーツをクリックしながらプルダウンメニューでイベントなどを指定できる

  • 完成したプログラミングを実行するとキャラクター「まにゃぷ」がルートを移動。移動に合わせて記入したメモをポップアップ表示するなどイベントを実行しながら終点まで移動していく

    完成したプログラミングを実行するとキャラクター「まにゃぷ」がルートを移動。移動に合わせて記入したメモをポップアップ表示するなどイベントを実行しながら終点まで移動していく

ゼンリンならではの豊富な地図も重要なアイテムだ。いろいろ書き込める白地図、小学生でも馴染みやすい航空地図、浸水地帯やがけ崩れが起きやすい山岳地帯なども理解しやすい標高地図など授業や用途に合わせて使い分けられる。

  • 標高地図は、浸水地帯のハザードマップと組合わせた災害学習だけでなく、遠足などのフィールドワークでも活用できる

    標高地図は、浸水地帯のハザードマップと組合わせた災害学習だけでなく、遠足などのフィールドワークでも活用できる

  • 地図に馴染めない子どもには視覚的に理解しやすい航空地図が学習の助けに

    地図に馴染めない子どもには視覚的に理解しやすい航空地図が学習の助けに

また、現場の実際の利用に役立つように教材を活用した指導法をまとめた「学習指導計画案集」も提供している。指導計画案は福岡教育大学 小田泰司 教授が監修、「まなっぷ」を使った指導方法やプログラミングの具体的方法や事例などが掲載されている。すでに世田谷区立の小学校で総合学習の地域防災の教育において使われており、同社は「まなっぷ」の普及拡大のため2022年3月末まで無料でのトライアルを提供している。