愛媛大学、東京大学、琉球大学の共同研究チームは、妊娠中の大豆摂取が生まれた子の多動問題と同年齢者との関わりである仲間関係問題に予防的であり、納豆およびイソフラボンの接種が多動問題に予防的であることを確認したと発表した。
同研究は、愛媛大学大学院 医学系研究科疫学・予防医学講座の三宅吉博 教授、同医学系研究科統合医科学講座の田中景子 准教授、同疫学・予防医学講座の時信亜希子 助教授、国立保健医療科学院の大久保公美 主任研究官、東京大学大学院 医学系研究科 公共健康医学専攻疫学保健学講座の佐々木敏教授、琉球大学国際地域創造学部 観光地域デザインプログラムの荒川雅志 教授らによるもの。詳細は学術誌「International Journal of Food Sciences and Nutrition」の電子版に4月1日付で掲載された。
今回の研究は、2007年に九州・沖縄に居住している妊婦1757名を対象に調査を行った「九州・沖縄母子保健研究」を活用し、子どもが5歳になった際の追跡調査に参加した1199組の母子を対象として実施。妊娠中に食事歴法質問調査票を用いて栄養データを取得し、大豆、イソフラボンの摂取量が低い人から並べ、人数が均等になるよう4グループに分け、5歳時追跡調査で取得した、子どもの情緒問題、行為問題、多動問題、仲間関係問題、向社会的行動の5つの尺度を評価することができる「Strengths and Difficulties Questionnaire(SDQ:子どもの強さと困難さアンケート)」の回答結果と統計解析を行った。
統計解析の結果、妊娠中の総大豆摂取が多いほど、5歳児における多動問題および仲間関係問題のリスクが低下することがわかったという。また、大豆製品ごとの解析では、納豆摂取とイソフラボン摂取に多動問題のリスク低減が認められたとしている。
なお、研究チームでは今回の研究成果について、妊娠中の総大豆、納豆、イソフラボン接種が生まれた子の多動問題に予防的であり、また、妊娠中の総大豆接種は生まれた子の仲間関係問題に予防的であることが示唆されたが、諸外国からの報告がないことから、今回の結果を確認するためには今後のさらなる研究が必要としている。
また、研究チーム自身としては、これまではさまざまな栄養と子供の行動的問題の関連性の研究を行ってきたとするが、今後は、個々の栄養素や食品だけでなく、食事パターン(dietary pattern)という摂取する食品の傾向を総合的にとらえる方法に着目し、妊娠中の食事パターンと子の行動的問題の関連を調べる予定だとしている。