CDISC-SDTM Blockchain Teamの「ブロックチェーン技術を用いた臨床データの共有プラットフォーム」

CDISC-SDTM Blockchain Teamは、複数の製薬会社、CRO、システム会社から結成した8名のチーム。本業は臨床試験に関するデータマネージメント、統計解析などを行っている。臨床データはデータベース化されており、それらを統合解析することでさまざまな知見を得られる可能性があるが、臨床データの2次利用などは個人情報保護の観点で課題が多いという。匿名化処理には限界があり、匿名化しすぎると正しい解析ができないという。そこでこのプロジェクトでは、データのアクセス権ややり取りをブロックチェーンで管理し、データの二次利用プロセスの向上案を検討し、運用の妥当性を検証。得られた知見を選択肢の1つとして製薬業界に提案しようとしている。

現在、IPFSIPFS(Interplanetary File System)を使った仕組みを検証しており、技術検証および実用化案の検討を行い、カンファレンスまたは論文に投稿するとともに、特許出願を行う予定だという。

  • 着目している仕組み:IPFS × Blockchain × ABE

  • 進めている技術検証

イグスの「AIによるデータ精度向上及び災害対策サービス」

ケーブル保護管、可動ケーブル、樹脂ベアリングなどの樹脂製の機械部品の開発・製造・販売を行うイグスの課題は、英語で記載された製品名などを日本語する際、文字化け、誤字や脱字が発生している点。また、日本企業においても、社名、住所、郵便番号の間違いが発生しており、こういった文字のチェックや修正は1日あたり500-1000件あり、これをゼロにすることが目標。そこで、AIを活用したデータミスの洗い出し、チェック、自動修正のシステムの開発を進めている。

同社は現在は、名寄せの開発を行っているという。会社名関連では、プロトタイプを作成し、レビューを経て4月から検証を開始している。作業時間は9日で約2.5hが約2.0hとなり、変換結果を検証している為、工数としてはあまり減っていないが、約0.5hながらも1カ月(稼働日20日想定)で約10hの削減効果を見込んでいるという。今後は変換可能なデータを追加し、データ精度の向上をさらに目指すという。

住所関連では、日本郵便のダウンロードデータを使って、現状の仕組みをPythonで作り直すという開発方針を決定したという。

  • イグスの中間報告

ヴィッツの「次世代工場の安全化と効率化を実現するIoT、AIソリューション(「SF Twin」)」

組込みソフトウェアの研究・設計・開発、リアルタイムオペレーティングシステムの研究開発、ITソリューションソフトウェアの設計を行うヴィッツでは、「次世代工場の安全化と効率化を実現するIoT、AIソリューション「SF Twin」」によって、工場の安全化、高度自動化、効率化を目指している。監視画像センサや運搬ロボットなどの情報を集め、データ解析を行い、AIで効率化の提案を行いたいという。

現実の工場と仮想の工場をつなぎ、現実の工場をセンシングして、仮想の工場でシミュレーションすることで、現実の工場にフィードバックしていくという仕組みを構築しようとしている。現在は、効率的な導線や生産ラインを自動化するアプリや、原料の在庫を最適化するアプリの作成を考えているという。

人とロボットが安全にかつ生産的に活動できる生産設備を実現する国産ソリューションとを目指し、現在は基礎となる5つの技術の育成を行っている。5つのうち、SF Twinのプラットフォーム、設備の安全標準、ルールからの逸脱予測技術は完成しており、進捗が一番あったのは、仮想工場の構築技術で、今後は残り2つの開発を加速させていくという。

  • 5つの技術のの開発進捗

  • 「SF Twin」のいま

ピーチ・ジョンの「社内AIポータル構想」

女性向け下着を主力にEC、店舗を展開するピーチ・ジョンは、勘、経験、度胸といった古い意思決定ではなく、AIを駆使してエビデンスベースで意思決定できるシステムを目指す。社員向けのAIポータルを構築し、SaaSサービスとして利用できるようにして、EC受注予測、店舗受注予測、在庫消費予測、顧客行動分析、トレンド分析に役立てようというものだ。

同社はまず、需給予測と需給予測に基づいた最適な在庫数量の算出を行う予定で、これまで購買情報や在庫情報、ECサイトの検索データを利用し、相互相関係数で使えるデータの調査を行っている。ECサイト商品説明分のベクトル化し、コサイン類似度を測ることで、使えるデータ分析を行っているという。

  • 現在の進捗状況

平井精密工業「歩留まり向上のための製造工程AI解析サービス」

金属エッチング加工を行っている平井精密工業は、製造工場における歩留まり向上を図るシステム構築を進めている。

このシステムは、現在は紙ベースで管理している製造条件、パラメータなどの情報をIoTで収集し、歩留まりとの相関関係をAIで分析し、不良の種類・歩留まりと製造条件・パラメータとの相関関係を分析し、歩留まり向上に寄与する製造条件・パラメータを見つけ出すものだ。

現在、不良の種類や歩留まりと製造条件・パラメータとの相関関係をAIで分析し、製造条件と歩留まりの相関関係の高い要素を抽出しようとしている。ただ、取得できないパラメータもあるため、パラメータを取得可能となる設備を導入するかどうか、蓄積している過去数年分の歩留りデータより傾向やパラメータとの関連を調査、「温度」や「湿度」など現在取得可能なパラメータを継続的に収集し影響を調査するなどしていくという。

  • プロジェクトのステップ

  • 現在の状況

水上の音声マイニングによる、受注電話応対の自動化への挑戦

金物店への卸や住宅や建材メーカヘ製品や部品の供給を行っている水上は、スマーフォンGPSによる行動データを収集して営業活動の可視化。得意先データの取集・分析などをして、ルートの最適化、効率化を実現する予定だったが、現在は、音声マイニングによる受注電話対応の自動化に変更したという。

見えてきた課題としては、同社の電話設備がモノラル録音しかデータ取れない点で、モノラルでできるところまでやり、AI COMUNISの自社製AI 認識エンジンでは、どこまで文字起こしができるかが課題だという。最終のゴールは受注センター化することだという。

  • 見えてきた課題

  • 目指すべき方向性

アズワンの「適正在庫AIモデル」

研究者向けの理化学機器、産業機器専門商社のアズワンは、AIを活用して多品種、少量出荷のクイックデリバリーを実現することを考え、具体的には、在庫の推移、入出庫のリードタイム、受注予測をグラフ化。このグラフと最適な状態のグラフをAIで比較し、最適な状態にするための方策をAIに提示してもらうというプロジェクトを実施している。

同社ではまずは、受注予測モデルの精緻化に取り組んだという。現状、過去数年分の時系列データをPython上で予測し、その他の変数の取込可能性検討。同業他社決算資料テキストデータ利用モデル、Google Trends 、時系列受注データ利用モデルの2つを作成した。

  • プロジェクトの進捗状況

同業他社決算資料テキストデータ利用モデルでは、Google自然言語処理エンジンBERTを使いながらスコア化と感情分析を行ったという。その結果、同社のあるセグメントの受注額と同業他社2社の四半期分析結果に相関がることがわかったという。

Google Trends時系列受注データ利用モデルでは、社内サイトで検索されたワード一覧からTop50をGoogle Trendsでデータ取得して分析した結果、50製品のうち、17製品がこの方式で受注予測モデルとして利用可能だとわかったという。この結果を適用すると、月に9000万円ほど在庫の減らすせることがわかったという。

  • Google Trends時系列受注データ利用モデルの効果検証

今後は、この2つのモデルの精度を上げていく予定だという。

ユーネットランスの「最適運行ダイヤの自動作成システムによる輸送業全体の効率化 」

貨物輸送を行っているユーネットランス の「最適運行ダイヤの自動作成システムによる輸送業全体の効率化 」は、運送業界の過度な残業やドライバー不足の解消に向け、物流設計段階で最適運行ダイヤを他社も巻き込んで作成し、効率化を図ろうというもの。完成後は他社にも提供し、30%の効率化を目指すという。

現在は第2フェーズで、サブツールの試用、シミュレーション、導入準備、顧客への理解活動、効率化・最適化評価スキームの検討・構築を行っている。

サブツールは、荷量データ( csv )を投入し、最適なパレタイズイメージと車載イメージを出力する。細かな手動調整やツールのカスタマイズは必要であるが、意図するイメージの出力が可能だという。

  • サブツールのイメージ

  • サブツールの出力イメージ

まずは、検証ツールを構築・試用し、欲しいデータが作成できるかを検証。AIの想定範囲としては、最適なパレタイズ・車載イメージ、どれだけ搭載可能かを判断させるという。

顧客への理解活動では、日々の荷量データを事前に提供頂けないか依頼した結果、日々荷量データを提供するメリットが思いつかないなど、残念ながら、なかなか理解は得られない状況だという

効率化・最適化評価スキームの検討・構築では、効率化・最適化効果が数値的に明示できるよう、評価スキームを検討・構築するという。

今後は評価スキームのテスト運用と顧客への理解活動を中心に活動するという。

奈良先端科学技術大学院大学 特任助教およびdTosh 代表取締役社長 平尾俊貴氏

発表会の最後には、メンターを務める奈良先端科学技術大学院大学 特任助教およびdTosh 代表取締役社長 平尾俊貴氏が総評を述べ、「前回よりもさらに具体的な施策、実現に向けた取り組みができていると感じた。PoC検証に関しても、定性的、定量的に検証が行われていると感じ取れた。今回が本プログラムの中間地点となっているが、残り半年は、実際のビジネスにインパクトを与えるかを定量的に明確に示す必要がある。それに対してデルさんや他のメンターの方々と一緒に進めていきたい」と語った。