日本電気(NEC)とNECプラットフォームズは4月5日、NECプラットフォームズ甲府事業所にSub6(4.7GHz帯)帯域のローカル5G(第5世代移動通信システム)環境を構築し、製造現場のリモート化・自働化に向けた実証実験を実施し、ピッキングロボットの遠隔操作と、映像・音声の共有による遠隔作業支援の有効性を検証したと発表した。
実証実験では、5Gで映像伝送しながら1人で2台のロボットを制御し、遠隔から8種の部品のピッキングを実現。また、映像表示・ロボット操作における遅延を検証し、ストレスなく遠隔操作するための目標遅延時間0.2秒以下を達成し、実用化に向けた操作性を確認したとしている。
今後はピッキングロボットの作業の高速化に加え、5Gの特長を生かして多数のロボットとの接続や無人搬送車との連携を図り、生産ラインへの導入を目指す方針だ。
映像・音声の共有による遠隔作業支援では、現場作業者が着用したスマートグラスを通じて映像・音声を共有するNEC遠隔業務支援サービスを使用し、支援者や熟練者は現場に赴くことなく遠隔からリアルタイムで作業支援を行った。データ量が大きい映像も5Gにより通信の安定性を図り、現場作業者の作業効率や正確性の向上につなげるという。
実証実験では、リアルタイムに状況を把握して作業指示を出すことでライン停止時間と後戻り作業が削減でき、製造現場における遠隔作業支援の有効性を確認できたとのこと。また、フルHD映像とより高精細な4K映像のそれぞれについて遠隔作業支援の効率性を比較して評価したところ、4K映像の方が支援時間を平均で約20%短縮できたとしている。
今後は高速大容量といった5Gの特徴を生かし、4K・8Kなどの高精細な映像の共有やAR(拡張現実)を利用したコミュニケーションを製造現場で実現することで、さらなる生産性の向上を目指す意向だ。
なお、今回の実証実験において、NECはローカル5Gのコア・基地局など無線設備の構築や運用、5Gを使用する製造業向けソリューションの提供を行った。NECプラットフォームズは、同社甲府事業所内での試験設備の構築とソリューションの実用化に向けた検証を担当した。
両社は今後、実用化に向けて2022年度までにロボットの操作台数増加など実証規模の拡大を図りながら、生産ラインへの本格導入を目指す。