ソフトバンクが4日に開催した2021年3月期 第3四半期 決算説明会では、4月1日より新しく社長に就任する代表取締役 副社長の宮川潤一氏が登壇して挨拶しました。毎年、増収増益を続けてきた順風満帆のソフトバンクですが、どのような経緯で今回の社長交代が決まったのでしょうか。

  • ソフトバンク社長交代

    「僕たちは唾液のPCR検査を毎朝行っていますので握手しても大丈夫なんです。そのこともしっかり書いておいてください」と笑う代表取締役 社長執行役員 兼 CEOの宮内謙氏(左)と代表取締役 副社長執行役員 兼 CTOの宮川潤一氏(右)

企業は永遠のバトンタッチリレー

報道陣から、なぜこのタイミングで交代なのかと聞かれた宮内社長は「企業は永遠のバトンタッチリレーだと思うんです。私はソフトバンク創業から3年目くらいに入社しました。そして、会社が永遠に発展していくために、うまくバトンタッチすることが重要だと常々思っています。Zホールディングスの社長には川邊健太郎くんが就任し、LINEも3月から合流する。全体を総括するソフトバンクが掲げるBeyond Carrier戦略も、まだ完成はしていませんが、相当、ほぼ姿が見えてきたところです。ソフトバンク全体としてはこれから本格的に、単なるキャリアから完全なるプラットフォーマー、インターネットテクノロジーカンパニーになっていくでしょう。交代のタイミングは、いまを逃したらない、と思っていたんです」と説明します。

そして「我々には指名報酬委員会というものがあるんですが、そこで社外取締役、社外監査役の方からも『きちんと次の世代を作っていくべきではないか』とご提言があった。こうした経緯を踏まえて、最後に孫正義会長に『こういう結果ですが、どうですか』と聞いたら『そうだな』という返事だった。タイミングとしては、私はすごく良いと思うし、私自身も晴れやかな気持ちで……、といってもリタイアするわけではなく、これからは新規事業に集中したいと思っているところなんです」と経緯を明らかにしました。なお、宮内社長は4月1日より代表取締役会長に就任する予定です。

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    これまでソフトバンクを引っ張ってきた宮内社長

続いて挨拶のため登壇した宮川氏はまず、ソフトバンクの歴史を振り返りました。現在のソフトバンクはインターネット企業として成長し、やがてモバイル事業にも参入。世の中にスマートフォンが普及し、これからは5Gの時代となります。

ここで宮川氏は、5Gは「通信インフラ」としての側面だけでなく、MECやネットワークスライシングといった「プラットフォームの構造」もあわせ持っていると説明。そこでソフトバンクでは今後、その両方を提供する「総合デジタルプラットフォーマー」になると宣言しました。

これらの取り組みは「ソフトバンクが5年、10年、15年と大変革するプログラムの根幹になる」と言葉に力を込めます。このあとも、技術者として業績を積み重ねてきた宮川氏らしさが感じられるプレゼンが続きました。

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    これからソフトバンクを背負っていく宮川氏

「宮内社長にはBeyond Carrier戦略を通じて、Yahoo、LINE、ZOZO、PayPayなど、さまざまなプラットフォームに種を撒いていただきました。僕の代では、実をならして刈り取っていくイチバン美味しい時期を迎えます。そのために、デジタルプラットフォーマーとしての取り組みを社業として遂行していきます。テーマは『テクノロジーを羅針盤にして新たな常識をつくる』。今日の挑戦が明日の常識となる、挑戦し続け進化し続ける、そんな企業にしていきます」と、宮川氏は目標を語ります。

ソフトバンクの歩む道筋は?

社長交代についての質疑応答では、報道陣からさまざまな質問が宮川氏に寄せられました。プレゼンの中で「挑戦」というキーワードを出した背景について聞かれると、宮川氏は「孫さんが始めたソフトバンクという会社は、常に挑戦し続けてようやくここまで来ました。挑戦し続ける=進化につながるということは常々、口すっぱく聞いてきたし、実行もしてきました。私にも、いつまでもベンチャーでい続けたい思いがあります。私の次の代まで、挑戦しつづけることが進化につながる、と言い続けようと思っています」と答えます。

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    報道陣の質問に回答する宮川氏

就任前に取り組むべき課題について聞かれると、宮川氏は3つのポイントをあげて説明しました。「まずは料金プランの値下げがあり、これがコンシューマ事業に影響するのではないかと言われています。これまでも我々は常に増益し続けることにこだわって経営してきました。引き続き、その志を引き継ぎます。法人、その他の事業なんでもありで稼ぎまくって、増益をしていきたい」と意欲を見せます。

そして「5Gが始まり、大きな転換期を迎えます。人と人の通信だったものが、モノとモノがつながる時代になります。あらゆる産業が再定義される、大きく変わる時期になるでしょう。そうした産業改革のなかにソフトバンクが入っていけるか、チャレンジしていきたい。それが大きなテーマになります。いままでの通信会社とは違う構造の会社になっていかなくてはいけない」と考えを示しました。

最後に「グループ全体をあげてAIに注力しています。LINEさんが合流してくれたことで、たくさんの技術者が仲間に加わりました。テクノロジー部隊で、まずはAIの知見を深めていきます。そしてAIの部分で業界のリーダーになれるようなポジショニングをつくっていく。来年度以降、総合デジタルプッラットフォーマーになると言いましたが、骨子の部分ではAIを中心に展開していきたい。そのためにチャレンジすることかなと思っています」と展望を述べます。

社長就任を打診されたとき、どんなシチュエーションだったのか、と聞かれた宮川氏は「宮内社長から話を告げられたのは昨年(2020年)10月末でした。その直後に孫会長からも打診がありました。ソフトバンクという会社は、営業が引っ張って大きくしてきた会社。だから私は営業がリーダーとして引っ張るべきではないか、と申し上げたんですが、『これからはテクノロジーで引っ張っていけ』と言われ、お受けした次第です。孫さんには何度か呼んでいただき、『こういうときはこうすべきだ』という帝王学を色々と教えてもらいました。これから先の糧にしていきたいと思っています」と振り返りました。