変化だけが唯一不変である――この言葉は、ほとんど決まり文句になっています。2020年は誰もが変化、混乱、ニューノーマルについて議論した年です。しかし、それは真実です。変化こそがこの数カ月を定義するものといえます。

リモートワーク、デジタルトランスフォーメーションの加速、クラウドサービスの導入。これらは、世界中の企業が2020年に体験した変化の一部です。しかし記憶をさかのぼってみると、こうした「変化」は、過去2~3年の間に既にビジネスの課題として上位に入っていました。

にもかかわらず、パンデミックが発生した時、ほとんどの企業は不意を突かれた状態でした。そして、短期間で 「変化」 を強いられることになりました。

それ以来、多くの学びがありました。現在、われわれはニューノーマルへの対応が求められていますが、ニューノーマルを踏まえて企業が向き合う課題と機会について、各所で議論が交わされてきました。調査会社のフォレスターは、「パンデミックは、アジア太平洋地域のビジネスの自動化、激しいデジタル化、リスク軽減に改めて焦点を当てた」と指摘しました。IDC Japanの調査によると、日本企業は自動化を促すAI/機械学習/コグニティブ、ロボティクスへの投資を増やしているという結果となっています。

そして、今回のパンデミックで得た教訓のひとつに、準備の重要性があります。次の変化を「計画的な見直し」ととらえて、ニューノーマルに備えるならば、企業は将来の混乱に対処するために有用な準備を行うことができます。

変化に対して的確に準備するにはどうすればよいのでしょうか。以下、企業の成長のカギを握るデータを保護しながら、ニューノーマルやさらなる次の混乱に対して計画を立てる際に企業が考慮するべき分野を紹介します。

災害復旧への備え

新型コロナウイルス感染症は、これまで直面したことのない特異な課題を提示しました。今日、世界的なパンデミックから自然災害、さらにはサイバー攻撃まで、広範囲にわたり大惨事が発生しています。これらの中には、ビジネスの中断に始まり、最終的には災害復旧(DR)計画を実行して対応するべきより、より重大な問題に発展するものもあります。

クラウドを活用したDRは、組織が世界中のあらゆる場所からデータを迅速に復旧することを可能にします。例えば、ITリーダーは東京の自宅で作業しながら、物理的なアクセスを必要とせずに、クラウドベースのワークロードを世界中のオフィス、製造工場、またはクラウドベースのサービスにリストアできます。

技術の進歩により、DRは進化してきましたが、まだ完全に変化していない最も一般的な前提は、「ITがコストセンターであり、組織が必要としていることを容易にしているということ」です。DRと事業継続性を見ると、それらはもはや別々のビジネス課題ではなく、同じコインの両面になっています。ITは、これらを可能にする事業運営のステークホルダーとして、重要な投資を行う役割を果たします。

こうしたDRにおける「ニューノーマル」では、 組織はITの実際の価値を認識し、どのように効率的かつ多くのサービスを提供できるのかを認識する必要があります。

ランサムウェアを防御

今日では、ほぼ毎週、新しいランサムウェアのコードネームが登場しています。ランサムウェアとの戦いの中で「ニューノーマル」の定義は、業界全体が動きを止めていないため、現在も進行中です。ランサムウェアが長年にわたって執拗に続いているのは、これらの規範を変更しようとしない企業の惰性が原因です。

しかし、ランサムウェア対策が非常に難しいのは、従来のやり方との大きなずれを突いてくるからです。従来のDRシナリオは、一般的に、端末におけるデータ保護や物理的にデータが利用できない状況に対処することを目的としていますが、ランサムウェアはそれとは違う場合が多いようです。組織のすべてのデータが暗号化されるという緊急事態は、従来の可用性と運用復旧のスキームで収めることができません。

企業は、暗号化されたバックアップ、アラート、異常検出、改変不能なバックアップ、エアギャップ、データ分離のサポートにより、ランサムウェアを防ぐことができます。ランサムウェア攻撃が発生した場合は、迅速なデータ復旧をチームに提供することが重要です。

クラウドサービス導入の加速

ボストンコンサルティンググループ(BCG)の調査は、約3つの組織に1つが、パンデミックの影響を受けてクラウドサービスへの移行が推進されたと報告しています。BCG調査の回答者の34%が新型コロナウイルス感染症に対処するためクラウド移行を加速させたと報告した一方で、46%は今後1、2年の間にクラウド移行が大きな優先事項になると予想しています。

  • コロナ禍の企業のIT投資の状況。テレワークを支えるコミュニケーションおよびコラボレーションツールへの投資は増えている 資料:ボストンコンサルティンググループ「BCG COVID-19 IT Buyers Sentiment Survey」

クラウドの普及が進む中で、クラウドベースのワークロードはクラウドの高可用性に依存するかもしれません。しかし、他のサードパーティからのデータ保護が必要であることを企業は認識する必要があります。エンタープライズレベルのバックアップとリカバリは、クラウドプロバイダーではなく、組織の責任です。

デジタルトランスフォーメーションを加速するツールとしてのクラウドの採用と、クラウドでのデータ保護には自然な適合性があります。バックアップとアーカイブをクラウドに移行することで、企業は従来のハードウェアの保守から、モダナイゼーションとトランスフォーメーションに関する取り組みへ焦点 (および予算) を移すことができます。

同時に、ITのモダナイゼーションにより、データがより多くの環境に置かれる中で、クラウドを活用したデータ保護は、企業が未来のデジタルに向けて前進する際に、時代遅れのサイロやプロセスを継承したり、あるいはさらに多くのサイロやプロセスを生成したりすることを避けるのに役立ちます。

計画的な見直しとして変化を受け入れる

パンデミックにより、組織独自の課題が浮き彫りになったことは間違いありません。人、プロセス、テクノロジーの思わぬ断絶は、最終的にはビジネスの形を変えようとしています。

この新しさを受け入れ、順応していく中で、意識的に「ニューノーマル」を形成し、変化に対応するには、より永続的な課題を認識することが重要です。準備することは、以前よりも簡単になっています。外的要因の結果として変化を受け入れるのではなく、計画的な見直しの一環として変化を受け入れる企業は、将来の不確実性を乗り切るために最善のポジションにいるといえます。

著者プロフィール

Commvault Systems Japan株式会社 セールス エンジニアリング ディレクター 松崎 純

2012年10月 Commvault Systems 入社。セールスエンジニアリング部門の責任者として、日本での営業および市場開拓戦略の加速に努める。IT業界で30年のキャリアを持ち、うち20年間はデータ保護・管理ソリューションの販売拡大・認知向上に携わる。
Commvault入社前はシマンテック株式会社、日本ヒューレット・パッカード株式会社などにおいて、ハードウェアを含め様々なデータ管理製品の新規ビジネスの立ち上げや拡大に貢献。