IIJは、2019年5月より運用を開始している白井データセンターキャンパス(千葉県白井市)内に、最新のモバイル技術を体感できる実験施設「白井ワイヤレスキャンパス」を開設し、2020年11月9日より企業向けに公開している。このたびメディア向けにも公開された。
同社によると、ローカル5GやプライベートLTE(sXGP)など先進的な無線通信技術を、実務に活用してみたいという企業は多いが、具体的な利用シーンや導入要件の検討まで到っていないケースがほとんどだという。その背景には、先進的な無線通信技術の多くは標準化や製品開発、法整備等が進行中であることが挙げられる。
そこで、多種多様な無線通信技術を一カ所に集め、デモや展示を通じてそれぞれの特徴や実力値を体感する場として白井ワイヤレスキャンパスが開設された。また同キャンパスは、端末や通信機器メーカーには、新製品の動作検証や、コアネットワーク設備との相互接続性の検証環境の場や、企業と共同で無線通信ネットワーク運用の実証実験を行う場としても活用できる。
プライベートLTEとパブリックLTEの自動切替
IIJは19年6月から20年3月までの期間、東京大学と共同で同社がフルMVNO(Mobile Virtual Network Operator:仮想移動体通信事業者)として提供する公衆無線通信ネットワーク「パブリックLTE」と、通信事業者以外の企業などが自営する無線通信ネットワーク「プライベートLTE(sXGP)」の統合連携に関する実証実験を実施した。同実証で検証できた通信の自動切替を同キャンパスでデモとして公開している。
プライベートLTEとは、自ら無線基地局やコアネットワーク設備を運用する自社専用の無線通信ネットワークのこと。
今回のデモでのプライベートLTE機器は富士通製で、外部ネットワークに接続することで、Webブラウジングや音声通話が可能だ。またパブリックLTEに関しては、同社はフルMVNOとして、MNOであるNTTドコモと相互接続を行っている。
デモでは、スマートフォンを用いて、プライベートLTEからパブリックLTEの電波に自動で切り替わる瞬間を確認した。
屋内から屋外に出て、100メートルほど離れると......
同社は今後、プライベートLTEの延長線にあるローカル5GとパブリックLTEの発展系となるキャリア5G(公衆網)との連携を進める方針だ。
プライベートLTE活用の警備ロボットの遠隔監視と制御
また、プライベートLTEの利用例として、同キャンパスで警備ロボット(ALSOK製フィジカルロボットREBORG-Z)をプライベートLTEにより制御し、巡回監視や来訪者アテンド業務に活用している点を公開していた。
警備ロボットは、データセンター内を巡回し、カメラでとらえた映像をモニターに映し出す。関係者以外立ち入り禁止エリアでの施錠の確認も行う。
今後も引き続き、複数のプライベートLTE基地局で、館内・屋外における警備ロボットのシームレスな移動や、閉域接続によるセキュアな通信環境での実証を行う予定としている。
IoT向け無線通信技術である「LoRaWAN」を活用したIoTプラットフォーム
また、LoRaWAN対応のIoTセンサーやIoTプラットフォームを紹介していた。具体的には、 腕時計型GPS・心拍数センサーや振動センサーなどの各種センサーや、屋内用・屋外用LoRaWANゲートウェイが展示されていた。
データセンター屋外には、同社が農林水産省の平成28年度公募事業「革新的技術開発・緊急展開事業」で受託した、「低コストで省力的な水管理を可能とする水田センサー等の開発」の実証実験で活用している水位管理センサーも展示されていた。
ローカル5G SA(StandAlone方式)を模した有線接続による映像伝送
さらに、3Dモーションセンサーを利用し、手や指の挙動によってコンピュータ操作ができるデモも公開されている。
5G SAのモバイルシステムとMEC(端末に近い位置にサーバを分散配置することでデータ処理を超低遅延で実行できるようにする技術)による3次元動態解析を組み合わせたリアルタイム処理により、ローカル5Gの低遅延性と上り方向の大容量通信を体験することが可能だ。
Wi-Fi5とWi-Fi6の通信速度比較
Wi-Fiの通信環境についても、企業が活用イメージを考えやすくするために、混雑環境下における通信効率を大幅に向上させたというWi-Fi6の実力値を、Wi-Fi5とのスピード比較で紹介していた。
Wi-Fi6により、Surface 7 Proで、アップロードとダウンロードの双方が1Gbpsの速度を実現していた。