日本HPは12月8日、個人向けプレミアムPCの新製品発表会を実施。「HP Spectre x360 14」「HP ENVY x360 13」「HP Chromebook x360 13c」の大きく3製品を紹介した様子をレポートします。HP Spectre x360 14は、12月8日発売で直販サイト「HP Directplus」での税別価格が149,800円から。
ニューノーマル時代を見据えた新しいデザイン
冒頭で日本HPの九嶋俊一専務執行役員は、「かつてパソコンは死んでいく市場だと言われた時期もあったが、2019年ごろから潮目が変わって再び重要な位置を占めるようになり、コロナ禍はこの流れを後押しした」と話します。
HP Inc.が米国、英国、中国、オーストラリア、フランスで実施した消費者動向調査によれば、この一年間でPCの利用が増えた人は25%以上となり、57%はPCが家族や友人との距離を縮めると考えていることが分かりました。特にZ世代と呼ばれる若い世代では、PCの利用時間が週に10時間以上も増えているそうです。
日本HPの2020年第4四半期業績における対前年比売上を比較すると、日本でもこの傾向は同じであることが見て取れます。プレミアムPCは29%、ディスプレイとアクセサリ類は59%、ゲーミングPCは23%の成長を果たしており、ユーザーが目的の用途にきちんと使える高性能なPCを選ぶようになってきているのでしょう。
九嶋氏は「そのような環境下、当社がこの冬に投入する新製品は、持続可能な社会(サステナビリティ)に貢献するニューノーマル時代のパソコンとして、『優れたデザイン』『ツールとしての使いやすさ』『世界で最も持続可能なPCポートフォリオ』の3つを共通の特徴として掲げている」と紹介。
この3つの特徴、具体的な内容については、HP Inc. デザイン部門のグローバル責任者であるステイシー・ウルフ氏が開発の背景も踏まえて語り、次いで日本HPの沼田綾子氏が各製品の日本市場向けにカスタムされた部分や、スペック面の詳細などを解説しました。
アスペクト比3:2の画面が主流に回帰?
ウルフ氏がデザインの観点から強調したのは、「数年たっても最初の強い印象が失われない製品を目指している」ということ。「ローカルな市場に縛られないデザイン」にするため、デザイナーの幅を広げ、多様な意見を取り入れているといいます。
サステナビリティについては、素材の96%をペットボトルから作ったというスリーブケースを新たに考案し、廃棄物を資源として再活用するなど、すべての製品で取り組みを強化しているそうです。一例として、2021年以降はPC本体の塗装に水性コーティング剤の採用を広げていく予定と述べました。
ウルフ氏によれば、今回の新モデルは「開発のアプローチを変えた」とのこと。変更された仕様には、「その必要があったからそうなった」という、ユーザー本位な手が加えられているとします。
例えば、フラグシップであるコンバーチブルタイプの13.5型ノートPC「HP Spectre x360 14」では、360°回転するディスプレイが大きく変わりました。
アスペクト比を従来の16:9から3:2とし、13インチのポータビリティのままで高さは15インチ相当に広げています。縦の表示面積が増え、Webサイトなど縦長のコンテンツを見たとき、スクロールを少なくできます。
ユーザーがPCでどんなアプリケーションを使ったり、どんなサイトにアクセスしているか調べると、多くはWebコンテンツやSNSだったそうです。
このためアスペクト比は、横長の動画視聴に適した16:9の画面より、ソーシャルネットワーキングが快適な縦に余裕ある3:2画面のほうが使いやすいはずと考えて決定。後述のHP Chromebook x360 13cでも採用していますが、ユーザーの反応を見ながら今後の製品にも展開をつなげていく考えです。今後は再び、3:2画面がノートPCの主流になるかもしれません。
日本人ユーザーの使いやすさに配慮したキーボードレイアウト
HP Spectre x360 14では、日本市場向けのキーボードレイアウトを採用しているのも大きな特徴です。
写真を見ると、右端にあったPgUp、PgDown、Home、Endキーの配置を変更して、利用頻度の高いEnterやBackspace、Tab、Shiftなどが大きくなっているのが分かります。特にEnterキーの右側に並ぶPgUp、PgDown、Home、Endキーは、日本では不評の声が大きかったため(もちろん独立キーの多さを好む人もいます)、大きな変化といえるでしょう。
沼田氏によれば、このレイアウトは日本のチームがHP Inc.に提案したそうで、キーボードの中央で作業しやすく、タイプミスを減少することで、ユーザー満足度の向上が期待できるとしています。
キーボード上には、電源、マイクミュート、指紋リーダー、カメラシャッターなども、ホームポジションから指を大きくずらすことなく利用できる位置に配置されています。
カメラシャッターは指で操作する物理的なキルスイッチだけでなく、電子回路を遮断するボタンも採用しており、ファンクションキーで操作できます(Windowsのデバイスマネージャーから消えるため、アプリケーションからも認識されません)。また、従来機種ではカメラシャッターが作動しているかどうか分かりにくいという声もあったとのことで、ひと目で確認できるよう改良しています。
これは自宅でのテレワークや、シェアオフィスやカフェで不特定多数に見られかねない環境で利用することも考慮して盛り込んだ、シームレスでセキュアなコミュニケーションを実現するための改善の1つです。
ほかにも「HP Sure View Reflect(Gen 4)反射型プライバシースクリーン」を内蔵し、F1ボタン押下で液晶の視野角を狭めて左右からののぞき見を防ぐほか、F8ボタン押下でマイクのミュートを簡単にオンオフできるようになっています。
HP Spectre x360 14は、CPU、メモリ容量、ストレージ容量、OSなどの違いで、ベーシックモデル、ベーシックプラスモデル、スタンダードモデル、パフォーマンスモデル、パフォーマンスプラスモデルの5モデルを用意。さらに各モデルで本体カラーはアッシュブラックとポセイドンブルーの2色を用意しています。いずれもIntel Evo プラットフォーム対応です。
最上位モデル(パフォーマンスプラスモデル)の主な仕様は、CPUがIntel Core i7-1165G7 プロセッサ(最大4.70GHz)、メモリがDDR4-3733 16GB、ストレージが1TB SSD(PCIe VNMえ M.2)、Optaneメモリーが32GB(NVMe M.2)、グラフィックスがIntel Iris Xe グラフィックス(CPU内蔵)。OSがWindows 10 Pro 64bit。
通信機能は、IEEE802.11ax/ac/a/b/g/n対応無線LAN、Bluetooth 5.0。インタフェースは、USB Type-C×2、USB Type-A×1、microSDメモリーカードスロットなど。バッテリー駆動時間は最大10時間30分。本体サイズは約W298×D220×H17mm、重さは約1.36kg。
Chromebookでもプレミアムモデルを展開
発表会では、プレミアムPCの中でもデザイン性にこだわったENVYシリーズのコンバーチブルタイプ「HP ENVY x360 13」や、Chromebookの「HP Chromebook x360 13c」も紹介されました。
HP ENVY x360 13はCPUに第11世代Intel Coreプロセッサを搭載するモデルと、AMDのRyzenn 4000シリーズを搭載するモデルが用意されています。Intelモデルは12月8日発売で、HP Directplus価格は税別99,800円~。AMDモデルは12月9日発売でHP Directplus価格は同じく税別99,800円~となります。
HP Chromebook x360 13cは、日本HPのChromebookのシリーズに新たに追加されたラインナップで、13cはIntel Coreプロセッサを搭載したハイクラス向けの仕様。4G LTE通信モジュールを搭載します。12月8日発売で、HP Directplus価格は税別128,000円~。
沼田氏は「Chromebookでもプレミアムな製品が広がっていくと考えている」と述べ、HP Spectre x360 14と同じく、アスペクト比3:2で画面占有率90%の13.5インチディスプレイや、プライバシースクリーンを備えている点や、オーシャンバウンド・プラスチックを使用したスピーカーハウジングなどの搭載によって、総重量の29%が再生素材で構成されている環境に配慮したモデルであることをアピールしました。
このほか新製品として、カジュアルクリエイター向けの28インチ4Kディスプレイ「HP U28 4K HDR ディスプレイ」と、13.5インチノートPC向けのスリーブケースの「HP RENEW スリーブケース14」もお披露目されました。スリーブケースは素材の96%が再生素材でできており、500mlペットボトル10.7本分に相当するとのことです。
ディスプレイは12月8日発売で、HP Directplus価格は税別49,800円。スリーブケースは2021年1月の発売予定で、HP Directplus価格は税別5,400円となっています。