NTT東日本 栃木支店、岩商、九州テンは12月7日、同1日に発表した「栃木県IoT推進ラボ 地域課題解決のためのIoT等未来技術を活用した実証実験について」で策定された「(4)陸上養殖業における効率的な成育環境管理」のプロジェクトにおいて、温泉水を利用したトラフグ養殖におけるIoT技術を活用した実証実験に参画したと明らかにした。

栃木県那珂川町は陸上養殖業が盛んだが、養殖魚は水温・水質の変化に敏感な種類もおり、人力でデータ取得を行っているものの稼働面で負荷がかかるうえ、情報のリアルタイム性の担保が困難となってることに加え、安定的な生産環境構築に向けた連続的かつ継続的なデータ蓄積も必要であり、課題になっていたという。

岩商においても、温泉水を利用してトラフグ(温泉トラフグ)を養殖する過程において、水質管理が重要となっており、日々の水質検査などに多くの稼働を割いているため、それらの工程を効率的に行うとともに良質な温泉トラフグを供給する方法を模索していた。一方で、九州テンでは無線通信機器の設計開発をコアとしており、ハードウェアからソフトウェアまで公共・一般のさまざまな分野への通信機器の開発・製造を展開。また、NTT東日本では地域のさまざまな企業や団体に対してIoT/ICTを活用した課題解決を目指し、地域に寄り添った取り組みを行っている。

  • 現状の課題と課題解決のイメージ

    現状の課題と課題解決のイメージ

こうした背景を踏まえ、栃木県IoT推進ラボの地域課題解決プロジェクトにおいて、各プロジェクトメンバーの技術・ノウハウを組み合わせることで、水質データの収集・分析と陸上養殖における水質データの有効性を確認する実証実験に参画することにいした。

実証実験は、(1)働き方改革として水質状況の常時見える化による温泉トラフグの成育に伴う稼働の効率化、(2)生産性向上として適切な水質コントロール・維持による温泉トラフグの斃死(へいし)率低下を目的に行う。

具体的には、水質計、QRIoT(キュリオット、九州テンのIoTゲートウェイ)および、NTT東日本のクラウド型カメラであるギガらくカメラを温泉トラフグ養殖場の一部プールに設置し、養殖プール内の水質(pH、酸素濃度、塩分濃度、水温)を常時計測し、データ化。

さらに、通信ネットワーク(フレッツ光)やモニター・タブレットを通じ、遠隔から養殖プールのリアルタイム監視することで、基準値と大きな乖離が発生した場合には早急な対処を可能とし、斃死率低下を図る。加えて、従来方式で水質検査を実施する養殖プールの水質データ比較、養殖魚の斃死率の比較、成長の比較、業務の運営効率性などを比較検証する。

  • 実証実験の様子

    実証実験の様子

今年度の「栃木県IoT推進ラボ 地域課題解決のためのIoT等未来技術を活用した実証実験を踏まえ、次年度以降も業務上計測している他の水質データ(アンモニア、硝酸、亜硝酸など)の項目などを加え、センシングデータを増やしながら分析を深化させ、デリケートな温泉トラフグに触ることなく生育状況を把握するAIを用いた魚体長検知など、温泉トラフグ養殖の生産性・品質向上に繋がる取り組みを検討していく。

また、連携各社の技術力とIoT/ICTの力を掛け合わせ、温泉トラフグ以外の水産業全体の課題解決にも裾野を広げ、地域経済の活性化へ貢献していくことを目指す考えだ。