AI OCR

ペーパーレスへの流れの中で、AI OCRが話題に上る機会が増えている。AI OCRとは、AI(人工知能)を利用するOCR(光学文字認識)だ。

鈴木氏によると、OCRには40年以上の歴史があるものの、AI OCRの歴史はまだ5年ほどとのこと。OCRにAIを組み合わせ、より高い識字率を得たり帳票認識やレイアウト認識を高度化したりしようという方向で、現在も開発が進んでいるという。

このように技術は発展中なのだが期待値が上がり続け、実力とのギャップが生じてしまっていると鈴木氏は語る。

鈴木氏は、従来型OCRとAI OCRそれぞれに長所短所があるため両方を検討することが重要で、情報を調べるよりは目星を付けたベンダーに絞って実証実験を行うことを勧めている。

AI OCRには識字率が向上する可能性はある一方で、クラウドサービスを使用しないとあまり現実的には使えず、コストも上がるという。そのため、従来型も含めて検討すべきだと鈴木氏は説く。

さらに鈴木氏は、AI OCR検討時の推奨事項として、まず期待値ほどには容易には進まないため、簡単で種類が少ない定型帳票から小さく始めるべきだという。また識字率は8割程度を目指し、人手による照合作業が発生する前提で検討し、その容易さも考慮すべきだとしている。

しかし、理想はOCRそのものを使わないこと、つまり最初からデジタルで使わないことだと鈴木氏は指摘した。

これまでの解説に続けて、鈴木氏はペーパーレスやファイル活用の将来像を示した。実は、ペーパーレスやプロセスの電子化、ハンコレスといった内容は部分的な話に過ぎず、スタート地点なのだという。

ではその次に何をすべきか。鈴木氏はシステム連携を挙げる。ワークフローを繋げることでプロセスをより楽に進められるようになり、SaaS連携も視野に入って来るという。自動化もRPAを使用する方法もあり、これらの連携が次のゴールだと鈴木氏は語る。

さらに、AIでデータ分析を行いビジネスプロセス自体を変革しようという流れが生まれてきているという。

AIや高度なダッシュボード、より賢い自動化を使うことがその次に目指すべきゴールであり、鈴木氏は世界的な業界のトレンドもそうした動きにあると紹介した。

しかし、こうした流れも最初のスタート地点から一歩ずつ着実に進めていくことが肝要であり、今はペーパーレスやプロセスの電子化、ハンコレスを急ピッチで進める必要があると鈴木氏は強調する。

鈴木氏はさらに、ビジネスをデジタル部品で組み立てるという考え方を示した。実はこれは、新しい話ではないという。

ビジネスの各プロセスを部品に見立て、その中にはOCRやRPA、人手などがあり、また近年ではIoTもあり、加えて他の基幹システムもあり、これら各所からデータを取得したいとの考え方だと鈴木氏は解説した。

高度なダッシュボードを使用して、自社のビジネスプロセスがリアルタイムで一目瞭然に把握できれば、経営層にとっての価値が非常に大きくなるという。

現時点ではまだ具現化しているとは言えないが、そのような世界を目指して具体的な検討を進めている企業が増えており、その手始めとして電子化やハンコレス、ペーパーレスを考えていくことが重要だと、鈴木氏は繰り返した。