理化学研究所(理研)、理研鼎業、JSOLは10月23日、共同で「株式会社理研数理」(りけんすうり)を同1日付で設立したと明らかにした。理研では初となるベンチャーへの出資となる。

  • 理研数理と出資者の関係(資本構成)

    理研数理と出資者の関係(資本構成)

近年、AI(人工知能)、ビッグデータ、スーパーコンピュータ、量子情報など、数理科学に関連した基礎研究・応用研究が世界的に著しく発展しており、それに呼応して国外では多くの数理科学者がGAFAなどで活躍し、アカデミアと企業の明確な境界が急速に薄れている。

一方、日本では数理科学分野におけるこのような境界が依然として存在し、イノベーション創出の芽が生まれにくい環境となっており、この状況を打破するためにはアカデミアと企業が協業して数理技術の開発とその活用を行い、GAFAをはじめとする巨人らと対抗し得る数理科学の新しい社会展開モデルを構築することが必須だという。

理研は2016年に数理創造プログラム(iTHEMS)を設立し、数学や原子核物理、計算科学など若手の理論研究者が化学やライフサイエンス、医科学分野の研究室と協力して、数理科学研究を発展させているほか、JSOLをはじめ企業との共同研究を実施してきた。

特に、JSOLとは金融データを用いた銀行業務としての企業の業況分析から、取引ネットワークの分析といった点において、一定の成果を挙げたことから、今後は他分野のデータオーナーとの関係構築の拡大に期待が高まっている。

また、理研は100%出資子会社であり産学連携機能の担う理研鼎業を活用した、ベンチャー育成・支援に注力しており、科学技術・イノベーション創出の活性化に関する法律の施行で出資、人的および技術的援助が可能となったことから、理研鼎業、JSOLとの共同出資により理研数理を設立するに至った。

新会社では、国内のアカデミアと産業界から数理科学の頭脳が集い、協業し、頭脳の還流を行うことで、世界を席巻するGAFAをはじめとした巨人と肩を並べる、数理科学の社会展開モデルを実現・提供していく方針だ。

なお、新会社の資本金は300万円で理研と理研鼎業が各75万円(25%)、JSOLが150万円(50%)。業務内容は(1)数理モデルの研究開発、(2)数理モデルの研究開発に関するコンサルティング、(3)数理モデルを用いたサービス、ソフトウエア開発、(4)データプラットフォームの構築・販売、そのほか調査研究、人材育成、知的財産権およびその管理・活用などの業務を企業からの委託により行う。