凸版印刷は10月12日、非接触で操作可能なタッチパネルのニーズに応えるためとして、従来品と比べて筐体の50%薄型化を実現したという空中タッチディスプレイを開発したと発表した。

新製品は濡れた手や手袋のままでも操作が可能なため、医療現場やクリーンルームなどでの使用が可能。さらに、左右15度に固定した視野角により暗証番号などの覗き見を防止する。同製品は、2020年12月にサンプル品の提供を開始する予定だ。

  • 製品の外観イメージ

  • 主な使用例

非接触型タッチパネルとしては、何も無い空間に画像を浮かび上がらせてセンサで指の動きを検知する製品は存在したが、奥行きを必要とする構造のため設置場所と使用用途が限定されていたという。また、生成する空中画像は暗く不鮮明でゴースト像が発生し、視認性に問題があったとのこと。

同社は、産業機器向け高精細液晶ディスプレイ分野で培ってきた独自の光学設計技術と構造設計技術を駆使し、視認性が高く、壁に埋め込みも可能な薄型の空中タッチディスプレイを開発した。

  • 構造図

同製品の特徴として同社は、液晶パネルに対して平行に映像を表示する独自の省スペース型構造、明るく鮮明な空中映像の生成、非接触センサの搭載、覗き見防止機能の4点を挙げる。

省スペース型構造に関しては、液晶パネルに対して平行位置に空中映像を生成することに世界で初めて成功したとしている。パネルに対して画像が約90度に出現する従来のタイプと比べて、50%薄型化できる他、より直感的な操作を可能にした。

  • ゴースト像あり(左)と無し(右)の比較

空中映像の生成については、同社独自という高透過率TFT液晶技術と光学設計技術により、従来品に対して同社比で約5倍の輝度を持ち、ゴースト像の少ない鮮明な空中映像の生成が可能になった。

非接触センサに関しては、赤外線方式の空間位置センサやToF(Time of Flight)方式の距離画像センサを搭載し、空中映像上で目標をタッチする動作を認識する。濡れた手や手袋をした状態に加えてペンなどでも認識できるため、画面に触れることなくタッチ操作が可能だ。

覗き見防止機能については、独自の光学設計技術により空中映像の視野角を左右15度に制限し、映像の正面以外の場所からは視認できないため、パスワードの入力などセキュリティ性が求められるシーンでの使用に適している。

同社は、同製品のサンプルを2020年12月に提供開始、2021年の量産試作を経て、2022年の本格量産を目指す。主に医療用機器、公共施設の設備操作盤、高いセキュリティが求められる施設の入退室管理設備などへの採用を目指し、2022年度に関連受注も含め20億円の売上を目指す方針だ。