日本マイクロソフトは2020年10月7日、7月から始まっている2021年度(2020年7月1日~2021年6月30日)の経営方針に説明する記者会見を開催した。同社は近年「Windows」の日本マイクロソフトではなく、「Microsoft Azure」を核としたエンタープライズ企業。2024年までの中期経営戦略として、政府・自治体のDX(デジタルトランスフォーメーション)と市場・顧客企業のDXを注力分野に掲げている。全体的な経営方針はビジネス誌などにお任せして、ここではわずかに垣間見られたユーザー向け情報をかいつまんでご紹介する。

古くから日本マイクロソフトは、時代に合わせて自社変革に努めてきた。筆者が取材してきた範囲の近年では、2015年8月10日に開催した「テレワーク施策記者発表会」から現在に至るまでの取り組みが印象的だ。リモートワークを推進するため、自社のITソリューションを活用した多様な働き方を模索している。実際には2013年まで日本マイクロソフト単独で取り組んできたが、翌2014年は32法人、2015年は651法人が参画。民間企業としての取り組みは一段落を終えたように見える。

その後は政府が「働き方改革」を標榜し、さらにコロナ禍でリモートワーク……もとい自宅勤務を強いられているわけだが、同社は自社変革について「我々も道半ば。Windowsはまだ必要だが、あぐらをかいてはいけない」「日本マイクロソフトは社員1人1人が(DXに)挑戦できる集団へ変革させていく」(日本マイクロソフト 代表取締役 社長 吉田仁志氏)と語る。なお、今回の記者会見でWindowsについて言及したのは、この一件のみだ。

  • 日本マイクロソフト 代表取締役 社長 吉田仁志氏

日本マイクロソフトおよび米国本社が、Microsoft Azureを中核とした戦略にシフトしていることは改めて述べるまでもない。米国時間2020年10月5日には、ギリシャへのデータセンター設置を発表したばかりである。今の時代、クラウド上で稼働するSaaS(Software as a Service)が我々のビジネスやプライベートを支えているといっても過言ではないが、昨今はトラブルに遭遇することが多い(特定企業のサービスに限らず)。

その点について日本マイクロソフトは、「(パブリッククラウドは)規模が大きいので話題になりやすく、オンプレミスのサーバーよりもトラブルの発生率は低い。我々は冗長化など対策を講じている」(吉田氏)と説明する。民間放送はIT関連のトラブルをセンセーショナルに取り上げるが、読者諸氏なら「止まらないシステムはない」ことは理解しているだろう。確かにトラブルに直面すると「マジか~」と頭を抱えるものの、現場で対応するスタッフの苦労を想像すれば数時間程度のガマンは致し方ないと考えるのは甘いだろうか。

ほか、話題の5Gに関する質問もあった。残念ながら日本の5Gはいまひとつ盛り上がらっておらず(インフラ面の進みも遅い)、第6世代となる6Gへの注力を政府や民間企業が表明しているが、日本マイクロソフトは次のように述べている。

「Microsoftは5Gに全方位で取り組んでいる最中だ。最初に通信キャリアやプロバイダーのROI(投資利益率)を効率化するためのソリューションを提供する。具体的には、Affirmed NetworksやMetaswitch Networksを買収し、これらの機能を組み込んだAzure Edge Zone with Careerの提供を目指してきた。この機能は5Gを提供するキャリア側のソリューションとなる」(日本マイクロソフト 執行役員 最高技術責任者 兼 マイクロソフト ディベロップメント 代表取締役 社長 榊原彰氏)

  • 日本マイクロソフト 執行役員 最高技術責任者 兼 マイクロソフト ディベロップメント 代表取締役 社長 榊原彰氏

もう1つ注目したいのは、「アプリケーション開発の民主化」である。たとえば、兵庫県神戸市は今回のコロナ禍で、Power BIを用いたダッシュボードやMicrosoft Power Platformを用いたチャットボットを開発した。特にチャットボットは同市職員がPower Virtual Agentsで開発している。本件について日本マイクロソフトも「ローコード/ノーコードが主流になりつつあり、非ITプロが(アプリを)開発できないと追いつけない」(吉田氏)という状況になりつつあるとした。なお、神戸市は2020年6月4日に日本マイクロソフトと包括連携協定を締結している。