1年間で印象的だったプロダクトは?

蔦屋家電+では毎月約30点のプロダクトをセレクト、展示している。キュレーターとしてプロダクトのセレクトにも関わっている木崎氏と佐藤氏に、オープンから1年を振り返ってもらい、印象深かったプロダクトについて聞いた。

「私はSisyphus(シシュフォス)という、鉄球が砂の上を動いて模様を描き続けるアートとテックの要素を併せ持ったテーブルです。いつまでも見てられるので“時間泥棒”なんて言いつつ、気に入っていました。お客さまからもうちのスタッフからも好評だったのですが、クラウドファンディング達成後に通常販売されないことに決まって……。幻のプロダクトになってしまったことも含めて印象的でした」(佐藤氏)

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    日本庭園の様式のひとつ、枯山水をモチーフにしたSisyphus。模様のパターンは30種類以上あり、スマートフォンアプリで操作できる

「僕はエピソードを含めて心に残っているプロダクトがあります。それは、ある大手メーカーさんが名前を隠して作っているロボット空気清浄機。そこの研究員の方とやり取りしているのですが、『お客さまの声にやる気をもらってます!』ってお返事をいただいたときはうれしかったなあ。この世界では、消費者の声が研究員まで届くことはほとんどありません。お客さまからのエールやフィードバックを受けて、新しいプロダクトが世に出てくれたら、僕たちのやりたかったことのひとつが完成するんですよね」(木崎氏)

また、1年間の運営を経て、展示品の幅もさらなる広がりを見せる。現在、蔦屋家電+には、ウメとスモモとの交配で生まれた希少品種のウメ「露茜」を使った「つゆあかね」という「梅酒」を販売中だ。

試飲させてもらうと、フルーティで爽やかな飲み口。鮮やかな赤色には目を奪われる。「果皮も果肉も真っ赤だから綺麗な色が出るんです」と、佐藤氏はクーラーから露茜の実の実物を取り出して見せてくれた。

「とても希少なお酒なので、試飲できるのはここだけでしょう。ある企業さんがテストマーケティングの一環として展示しています。普通にコンビニや酒販店に置くと『おいしいお酒』で終わってしまいそうですが、ここに展示することで、交配技術などのバックグラウンドまで思いを巡らせてもらいやすくなるんじゃないかな。食品や化粧品の新開発製品も、これから増やしていけたらおもしろいですよね」(木崎氏)

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    着色料不使用なのに見事な赤色。果実感のあるスッキリした味わいなので、男女問わず好評なのだそう

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    露茜は果皮も果肉も真っ赤

さらに木崎氏には、子ども向けプログラミング教材の充実やワークショップ開催といったアイデアも。ここでプログラミングに触れた子どもたちが、開発者となってプロダクトを展示しにくる――。この1年でそんな新しい夢も生まれたという。