プラットフォームとしてのMicrosoft 365

Office 365から名称が変更された「Microsoft 365」については、米MicrosoftのJared Spataro氏と日本マイクロソフトの山崎善寛氏から、最新のアップデートが紹介された。

両氏によれば、マイクロソフトは開発者に向けたプラットフォームとしてのMicrosoft 365のビジョンを持っており、それにひもづいて「Microsoft Teams」「Microsoft Graph」「Fluid Framewort」「Windows」の4つの開発領域を定めているという。

プラットフォームの基盤にあるのは、Microsoft GraphとFluid Frameworkという2つのAPI/フレームワークだ。

  • Microsoft 365のプラットフォーム

    Microsoft 365のプラットフォーム

Microsoft Graphはユーザー中心のデータおよび分析情報を格納するコンテナであり、Microsoft 365や関連するクラウドサービスに対して統一的なAPIによるデータの取得や分析を提供する。Fluid FrameworkはMicrosoft 365のさまざまなアプリケーションにおいてコンテンツの共同編集を可能にするフレームワークである。2019年に発表されたばかりの新しいフレームワークだが、Microsoft 365に統合されることによって、さまざまなアプリケーションでリアルタイムなコラボレーションが実現できるようになるという。

Microsoft Teamsについては、もともとチャットツールとして始まったものが、現在はアプリケーション開発の統合的なプラットフォームへと進化していることが強調された。

  • Teamsはマイクロソフト史上最速で成長中

    Microsoft Teamsはマイクロソフト史上最速で成長中

そして、Windowsに関する開発領域だが、ここには開発者が多種多様なWindowsアプリを開発できる環境を提供するという目的から、現在「Projection Reunion」というプロジェクトが行われているという。これはWindows 10のアプリ開発プラットフォームを統合する試みで、具体的には、Win32アプリとUWPアプリのAPIをWindows OSから切り離して再構成することによって、Windows 10のすべてのデバイスで動作するアプリの開発環境を提供するというものになる。

  • Windows 10アプリの開発環境を再構築するProjection Reunion

    Windows 10アプリの開発環境を再構築するProjection Reunion

Security Postureで攻撃に備える

続いて、日本マイクロソフトの河野省二氏から、セキュリティ管理に関する「Security Posture」という考え方が紹介された。Security Postureとはセキュリティに取り組む姿勢を指す用語で、その要旨を一言で言えば「セキュリティに対する姿勢を改善することによって、攻撃に動じないIT環境を構築する」というものになる。

河野氏によれば、そこには大きく分けて2つの姿勢が挙げられるという。1つは脆弱性のない環境を作ること。そのためにはさまざまな資産を適切にデジタル化し、状態を把握しやすい環境を構築することが重要になる。もう1つはインシデント対応を軽量化すると。世の中に生じている脅威をリサーチし、あらかじめ対策を強化しておくことによって、問題が発生した際の影響を最小限に抑えることが求められる。

  • Security Postureのための2つの姿勢

    Security Postureのための2つの姿勢

もちろん、マイクロソフトではこのSecurity Postureの環境を構築するためのさまざまなツールやサービスを提供しており、その内容も拡張が続けてられている。河野氏からは、最近加わった新機能として、サードパーティの認証情報を使ってのセルフサインインを可能にする「Azure AD External Identities」や、自組織のセキュリティの状態を把握するための「Microsoft Security Score」のAzure Security Center対応などが紹介された。

Azureでも進むMixed Realityへの取り組み

基調講演の最後を締めくくるのは、米MicrosoftでMixed Reality関連の開発を手掛けるDon Box氏だ。同氏は、まずAzureで提供されている2つのMR関連サービスを紹介した。

  • HoloLens 2を装着して登壇したDon Box氏

    HoloLens 2を装着して登壇したDon Box氏

1つがAzure Spatial Anchors(ASA)で、これは異なるデバイス間で時間や空間を超えて座標情報を共有できるというもの。複数のデバイスを使って巨大な座標システムを構築し、情報の配置や検出を行うことができるようになるという。

もう1つがAzure Remote Rendering(ARR)で、こちらは大規模で高精度のコンテンツを、クラウドのリソースを使って複数の角度や視点からレンダリングし、デバイスに対して提供するというものになる。レンダリングをクラウド上で行うため、デバイスの能力では生成できないような複雑なモデルを、手元のアプリケーションに対して映し出すことが可能になる。

さて、マイクロソフトのMRとして印象が強いのは、やはりDon氏も装着しているHoloLensだろう。最新版のHoloLens 2は、これまでは法人向けにのみ提供されてきたが、今年7月から一般向けにも販売が開始される。詳細はWebサイトで続報をチェックしてほしいとのことだ。

さて冒頭でも触れたように、初のバーチャル開催となったde:code 2020は、14日間にわたって100以上のセッションが提供される。そのほかにも、特別ゲストの登場といったサプライズや、コミュニティイベントの開催なども予定されているとのことだ。