小惑星イトカワの微粒子の採取に成功した探査機「はやぶさ」が、2010年6月に地球に帰還して今年で10周年。小惑星を調べる科学的な意義や、地球帰還までの数々の苦難を乗り越えるさまをフルCGで描いた映像作品『HAYABUSA -BACK TO THE EARTH-』が、制作したライブのYouTube公式アカウントで無償公開される。公開期間は5月29日正午から6月19日正午まで。

  • フルCG映像作品『HAYABUSA -BACK TO THE EARTH-』

    フルCG映像作品『HAYABUSA -BACK TO THE EARTH-』YouTubeで無償公開
    (C)有限会社 ライブ

プラネタリウム向けのフルドーム映像などを手がけるライブは、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の収束を願い、「Eternal Return-いのちを継ぐもの-」ロングバージョンの期間限定無料配信(5月15日配信終了)を皮切りに、同社が制作してきた“宇宙、地球と生命の関わり”を描いた映像作品を無償公開する「フルドーム作品無償公開プロジェクト」を実施中。立山黒部ジオパークを舞台に少年と山の物語を描いた「剣の山」無料公開(5月29日正午配信終了)に続く第3弾として、『HAYABUSA -BACK TO THE EARTH-』を配信開始する。

同作は、はやぶさの地球帰還後に劇場公開された実写映画とは異なり、主にプラネタリウム向けの科学映像作品として制作。人物は一切登場しないかわりに、視聴者と“擬人化”されたはやぶさに向かって、ナレーター(篠田三郎)が小惑星を調べる科学的な意義や、地球帰還までの数々の苦難を乗り越える様子を、静かなトーンで語りかけていく。

『HAYABUSA -BACK TO THE EARTH-』のあらすじ

2003年5月。小惑星探査機「はやぶさ」は小惑星「イトカワ」のかけらを持ち帰るために地球を出発、未踏の地を目指す挑戦の旅が始まった。

20億kmの旅の末、2005年11月「はやぶさ」は「イトカワ」への着陸を敢行。しかしトラブルがおき失敗に終わる。数時間にわたり「イトカワ」表面に留まったおかげで、機体にもダメージを受けてしまう。

しかし、このままで地球に帰るわけにはいかない……

上坂浩光監督からのメッセージ

はやぶさプロジェクトが、数ある探査機の中で、なぜこうまで注目を集めたのでしょうか。

はやぶさプロジェクトの一番の特徴は、サンプルリターンという大きな目標があったことです。おそらくそれは、宇宙の在るべき姿を見てみたいという私たちの根源的な願望と、一致するものであったと思われます。

しかしもっとも大きな理由は、そのような思いを託した探査機との間に、心のつながりが生まれたことです。

地球から遠く離れた小惑星で、ひとり活動する姿を思い描く時、私たちの心に浮かぶ感情。「うつし身」としてのはやぶさがそこにありました。

そんな所にこそ、はやぶさミッションを特別のものとする、本当の理由が隠されているのかもしれません。

この作品では、はやぶさミッションを紹介するだけでなく、そんな隠された本質を描きたいという想いで作られました。

ライブの代表取締役でもある上坂浩光氏が監督・シナリオ・絵コンテを担当し、大阪科学振興協会や、宇宙航空研究開発機構(JAXA)の協力を得て、フルドーム映像として制作。はやぶさの帰還途上で作られた「2009年バージョン」と、無事に帰還した様子を追加した「帰還バージョン」が公開された。

2011年4月に、第52回科学技術映画祭 文部科学大臣賞受賞作品(科学教養部門)を受賞。2011年5月には、角川映画配給で平面バージョンが全国の映画館で劇場公開され、Blu-ray/DVD化された。また、酒井義久による劇伴を収めたサウンドトラックCDも販売されている。

なお、ライブは2014年に、『HAYABUSA -BACK TO THE EARTH-』の続編となる映像作品『HAYABUSA 2 -RETURN TO THE UNIVERSE-』を公開。初代はやぶさの後継機となる「はやぶさ2」計画は、政府の平成24年度宇宙関係予算の削減に伴って一時は存続が危ぶまれたが、はやぶさ2ミッションの実現に向けて人々が動き出し、初代よりも大幅に増強された機体がついに完成。あわせて、打ち上げに使われた日本の大型ロケット開発の道程も描いている。

はやぶさ2は、2020年中の地球帰還を目指して現在も航行中だ。これにあわせてライブは最新映像作品『HAYABUSA 2 -REBORN-』を制作し、全ての上映館にインストールを終えていつでも上映できる状態になっているという。新型コロナウイルス感染症の影響で公開が遅れているものの、全国の科学館・プラネタリウムで順次上映される予定だ。