デロイト トーマツ グループは4月27日、テクノロジー・メディア・通信(TMT)業界についてデロイト グローバルがトレンドを予測した「TMT Predictions 2020」をもとに、日本オリジナルの考察・分析を加えたレポート「TMT Predictions 2020 日本版」を発行した。
同レポートは、AIチップ、プロフェッショナルサービスロボット、ローカル5G、低軌道衛星、音声コンテンツ、広告型動画配信の各分野に関する世界的な業界動向のグローバル予測に加え、日本における市場状況や変化への対応策などの論点について、各分野のプロフェッショナルが「日本の視点」としてとりまとめたもの。
「エッジAIチップ」に関しては、2020年に約6億5000万個販売され、収益ベースでは22億ドルの規模に達するとデロイトは予測。ハイエンドのスマートフォン、タブレット、スマートスピーカー、ウエアラブル機器など、エッジAIチップを搭載した消費者向けデバイスが増加する可能性が高く、ロボット、カメラ、センサ、IoTデバイスなどでもエッジAIチップが利用されると予測している。
日本では、都市のスマート化や分散型エネルギーの実現、防災・減災システムの強化、新たな健康サービスの発展などでの利用が想定されるとし、実用化に向けては、使用・提供されるデバイスとサービスの多様化と、それぞれの用途に最適化されたエッジAIチップが必要となり、その発展は現状の「汎用チップ」の次に特定用途向けの「DSAべース」へ、最後に「独自のカスタム半導体」へと3段階的に進展していくとデトロイトは考えている。
「ローカル5G」は、2020年末までに世界中で1000社以上の企業がローカル5G導入のテストを開始し、全体で数億ドルが人件費と機器に投資されると予測。2024年までに、ローカル5Gネットワークで使用されるモバイル機器およびサービスの額は年間数百億ドルに達する可能性が高く、特に製造工場、物流センター、港湾などの環境において、ローカル5Gを導入すると予想している。
日本の視点としては、5G時代の本質的な変化は「ネットワークのソフトウエア化とオープン化」にあるとし、来以降に商用化が見込まれる5Gのフェーズ2では、「大容量・高速通信」「超低遅延」「同時多接続」等の特性をソフトウエア制御で組み合わせて提供することで、顧客のニーズに最適化したネットワークサービス提供が可能になるという。
「広告型動画配信サービス」に関しては、収益が2020年に推定300億ドル弱の規模になると予測。特にアジアでは、急速に成長した広告型動画配信サービスを通じて10億人を超えるユーザーが無料または低コストでテレビ番組や映画、スポーツを視聴しており、現在はサブスクリプションモデルが主流の北米市場においても広告型サービスの市場が拡大する可能性があるとみている。
日本でもインターネットで映像コンテンツを視聴する習慣は広がりつつあり、特に放送業界の各事業者によるサービスの立ち上げが本格化している。放送事業者が動画配信サービスで収益化を実現するためは、広告代理店などと連携し、複数の端末での視聴を前提とした新しい視聴指標を業界基準として設定していくことが重要だとしている。
「サイバーセキュリティ」については、IoT、Cloud、ビッグデータ、AI、ロボティクス、無線通信、コネクテッドカーといった技術やサービスに新たなサイバー攻撃が発生。ネットワークに対するサイバー攻撃による被害を低減させ攻撃に対峙していくには、個人、組織、そして社会や場合によっては国など各々の関与者が、可能な対策を講じていくことが重要だということだ。