ブイキューブとアステリアは4月15日、バーチャル株主総会において、「報告聴講」「質問」「議決権行使」を両社が協業してワンストップで実現すると発表したが、6月の株主総会集中期を前に、4月22日、バーチャル株主総会における法令解釈のポイントと実際の開催における注意ポイントを解説するオンラインセミナーを開催した。

バーチャル株主総会の法的整理と運営の実際(2) - 実現システム
バーチャル株主総会の法的整理と運営の実際(3) - 実務上の留意点

セミナーでは、バーチャル株主総会における法令解釈のポイントを森・濱田松本法律事務所 パートナー弁護士 澤口実氏が、経済産業省が2月26日に公開した「 ハイブリッド型バーチャル株主総会の実施ガイド 」(以下、実施ガイド)をもとに説明した。

なお、同氏は経済産業省「新時代の株主総会プロセスの在り方研究会」委員でもある。

森・濱田松本法律事務所 パートナー弁護士 澤口実氏

澤口氏は実施ガイドについて、「会議の参加者のコンセンサスが得られたものを公表したものだ」と述べた。また、澤口氏は、「実施ガイドはリアルな株主総会を開催することを前提としているので、バーチャル株主総会だけの開催は前提としていない」と注意点を挙げた。

実施ガイドには、バーチャル株主総会における本人確認はIDとパスワードでOKであること(株主総会の招待状に印刷)、代理出席はリアル株主総会に限定していること、バーチャル株主総会では、質問の回数、文字数、送信期限の設定が行えること、動議の提出はリアル株主総会に限定していることが書かれているという。

  • ガイドではいくつかの制限 ・ 取扱いを明示

バーチャル株主総会は3種類

澤口氏は、バーチャル株主総会には、議決権行使、質問ができる「ハイブリッド出席型」、質問(あるいはコメント)ができるが議決権行使はできない「ハイブリッド参加型」、視聴のみの「ライブ配信」の3種類があると説明した。

  • バーチャル株主総会の種類

同氏は、ハイブリッド出席型においては、会社法下で実施可能な点にほぼ争いはないと語った。バーチャルで参加する株主も 「 出席 」であり 、 株主総会に関する会社法の規定が適用されるという。

一方、ハイブリッド参加型については、議決権行使ができないので法的には「出席」ではないと整理できるという。そのため、動議・質問の提出もできず 、「コメント」は出せるが、それ に対する説明義務はないという。そのため同氏は、「参加型をバーチャル株主総会と呼ぶには疑問が残る」と述べた。

ただ、リアルな株主総会でも議決権行使は拍手など簡略化されており、大多数の会社では、株主総会を開催する前に議案の賛否についての結論が事実上判明しているほか、質問する株主もごく一部であることから、多くの株主にとって、出席型・参加型・ライブ配信の差異は必ずしも大きくないと語った。

参加型の株主からのコメント扱いについては、任意のタイミングで紹介することや、紹介するかしないかは、議長権限だとした。

また、映像配信における株主の肖像権について同氏は、容姿は映さないように対応すれば解決できるとし、発言をそのまま流してよいかについては、そのまま流してもよいのではないかとした上で、質問するにあたり氏名を名乗らせない、招集通知やシナリオでの注意喚起する、加工が容易な事後配信ではカットするなどの配慮は必要とした。

コロナ対策としてのバーチャル株主総会

バーチャル株主総会以外のコロナ対策として同氏は、株主総会開催延期、来場抑制策、事態の深刻化に伴い、来場謝絶策も考えられるとし、多くの企業で検討が進められていると語った。

株主総会開催延期は法的には可能だが、配当や人事の点で6月に開催したいという会社も多く、7月、8月に延期したからといって、コロナの状況が大きく改善しているとは考えずらいため、簡単なことではないとした。

来場抑制策(できるだけ会場には来ないでください)については、「3月から行われているが、最近はこれで足りるのかという意見が出ている。そのため、来場謝絶策(会場に来ないでくださいとアナウンスする)も検討されている。そういう時期に来ている」と述べた。

なお、経済産業省のWebで公開されている「株主総会運営に係る Q&A」では、株主に来場を控えるよう呼びかけること、会場に入場できる株主の人数制限、株主総会への出席についての事前登録制、発熱や咳などの症状を有する株主に対し入場を断ること、株主総会時間の短縮は可能としている。

澤口氏は、バーチャル株主総会の開催がコロナ対策になるかについて、「過大な期待は禁物だが、会社の姿勢を示す意義がある」と述べた。理由として、海外の例では、バーチャル株主総会の開催でリアルな株主総会への参加者が大幅に減った実績はないことや、リアルな株主総会の来場抑制を行う代替策として実施しているという意義は示せることを挙げた。