3月16日に詳細が明らかにされた「Renoir」(開発コードネーム)ことRyzen 4000 Mobileであるが、この時点ではOEMへの出荷が開始されただけで、まだ製品出荷には至っていない。悪い事に、COVID-19の影響を受けてOEM各社共に最終製品の出荷準備がかなり遅れているようで、市場投入は早くても4月末とかそんな感じになりそうである。

ところが今回AMDのご厚意により、ASUSが投入を予定しているROG Zephyrus G14の試作機を短期間ではあるが試用する機会に恵まれた。もっともこれ、試作機というか評価機という扱いで、色々間に合っていない(具体的に何が間に合ってないかは後述)部分はあるのだが、Ryzen 7 4800 HSのCPU性能を試すには十分であった。そんな訳でまだPreviewではあるが、性能評価をお届けしたい。

ROG Zephyrus G14でRyzen 7 4800HSをベンチマーク

さてROG Zephyrus G14はこちらでも簡単に触れたが、ASUSの投入する14inch Gaming Notebookである。実は2月の説明会の際にも展示されていた(Photo01)。プロセッサはRyzen 7 4800HSかRyzen 9 4900HSのどちらかを搭載、最大32GBのDDR4と1TBのStorageを搭載、というスペックである。さてそのROG Zephyrus G14のパッケージは意外にシンプルである。ただROGのロゴは角度で色が変わるあたりが高級感を醸し出している。

  • Renoir世代の「AMD Ryzen 7 4800HS」性能プレビュー

    Photo01: 背面にLEDアレイが搭載されていて、任意の図形を表示できる(中央の白い筐体でに"AMD Love ROG"が表示されているのが判る)筈だが、そのためのユーティリティが添付されておらず、今回試してみる事は不可能だった。

  • Photo02: 外寸は480mm×275mm×95mm(実測値)。取っ手も付いており、そのまま持ち帰りも出来るサイズ(ACアダプタ以外の付属品が省略されていたので、最終製品でのパッケージ重量は不明)。

今回は白パッケージのものを借用した(白と黒でスペックが変わるかどうかは不明。多分同じだと思う)(Photo03)。画面は狭額縁スタイルであるが、そのためにカメラすらないシンプルなもの(Photo04)。キーボードは今回試用したものは変形英語キーボードで、キーそのものは15mm、キーピッチは19mmである(Photo05)。「|」キーの位置だけがちょっと変だが、まぁこれは慣れれば問題ないだろう。左側にはHDMIとUSB Type-C、Audio outとACアダプタ端子が(Photo06)、右側面にはUSB Type-A×2とUSB Type-C×1、それとケンジントンロック向けの穴が用意されている(Photo07)。ちなみに画面をこれ以上開くと、本体後端が微妙に浮くことでキーボードに若干の角度が付いて、キーを打ちやすくなる。

  • Photo03: 寸法は325mm×222mm×20mm(実測値:ゴム足の突起は除く)。重量1667.8g(実測値)。

  • Photo04: 画面サイズは310mm×175mm(実測値)。14.02inch相当となる。まぁGaming NoteにFace Cameraが必要か? と言われると必須ではないのだが、配信とかする場合にはあった方が便利なような。

  • Photo05: キータッチは好みもあるだろうが、筆者からすればもう少しストロークと反発力があればベターだが、まぁ及第点だと思う。

  • Photo06: ちなみにACアダプタは180W(20V/9A出力)のものが付属してきたのだが、最終製品もこれが付属するのだろうか? こちらのType-CはDisplayPortと兼用(Altモード動作可能)。

  • Photo07: こちら側のUSBは全てSuperSpeed USBのみ。

裏側には給気口があり(Photo08)、ここから吸入された外気は両側面に排気される形となる。これだけ開口部があると、特に負荷がフルの時にはそれほど耳さわりではないとはいえ、確実にファン騒音の耳にすることになるが、まぁTDP 35WのCPU+推定TDP 80WのGPUだから、これは致し方ないところだろう。

  • Photo08: 実際フル稼働時にはそれなりに暖かい排気がここから出てくる(両側面もだが)。

底面は一体型(Photo09)構成である。試しに裏蓋を開けたらこんな構造であった(Photo10)。

  • Photo09: SSDとかメモリの変更/拡張には、ねじを全部外して裏蓋を開ける必要がある。

  • Photo10: 2つのシロッコファンで、背面から吸気、両側面に排気という構造が良くわかる(ご丁寧に2つのシロッコファンの羽の向きが鏡対称になっているのが判る)。バッテリーパックは4800mAhのものが搭載されていた。

さて、CPU-Zでの表示結果はこんな感じ(Photo11~14)。搭載されているのはここにもある様に、TDP 35WのRyzen 7 4800HSである。L3は前評判通り4MB×2の8MB(Photo12)。ちょっと不思議なのは、SouthbridgeがCarrizo FCHと表示されることだ。サウスブリッジ周りを流用したのだろうか?(Photo13)。メモリにはMicronのDDR4-3200 CL22 8GB SO-DIMM×2が搭載されていた(Photo14,15)。

  • Photo11: 今はMinimumに近い1.4GHz駆動。TMPGEnc Mastering Works 7で1コアのみに負荷をかけた場合が最大4.2GHz、全コアに負荷を掛けた場合が最大3.4GHzほどになった。

  • Photo12: L1/L2はMattiseと同じく。L3はSet Associativityを減らすかと思ったのだが、意外にもMatisseと同じく16wayのままだった。

  • Photo13: 実際Southbridge FunctionそのものはCarizzoと大差ないから、不思議ではないと言えばそうなのだが。

  • Photo14: Ungang ModeではなくGang Modeで動作している。

  • Photo15: SO-DIMMはスロット2つで、それぞれにこのDIMMが1枚づつ装着されている。今はJEDEC #13での動作の模様。

さて、OSからは問題なく認識され(Photo16)ており、これは良いのだが、問題はGPUである。一応OSからはちゃんと2つのGPUが認識され(Photo17)、CPU-Zでも2つのGPUが認識されてはいるのだが(Photo18,19)、少なくとも現時点ではRadeon DriverがRyzen 7 4800HS内蔵のGPUにはロードされていない。試しにAMDのサイトからRadeon Driverの最新版をダウンロードしたものの認識せず。で、汎用ドライバのままゲームなどからRadeonを使って表示させようとすると、恐ろしく遅いというか、そもそもGPUのハードウェアを使っていないとしか思えないほどスローモーである。どうも現状、Radeon 7 4800HS内蔵のVega 7コアは「あるだけ」で、これを利用して何かを動かすといった事は出来ないようだ。

  • Photo16: きちんと仮想16コアになっているのが判る。

  • Photo17: 問題はRadeon側のドライバである。

  • Photo18: Radeon Graphicsとだけしか認識されていないのが問題。

  • Photo19: こちらはちゃんとGeForce RTX 2060 MaxQと認識される。

勿論これはそもそも最終製品ではないから致し方ないところで、そんな訳で今回は内蔵GPUの性能評価は見送りにせざるをえない。

加えて言うと、GeForce RTX 2060を使っている場合でも、画面サイズが1920×1080pixel固定になる(内蔵液晶を無効にすると変更可能だが、そもそも内蔵液晶は4Kサイズである)とか、色々不可解な状況になっている。それもあり、今回ゲーム類は全て1920×1080pixel固定で実施している。

更に付け加えると、理由は不明だがPCMark 10が今回動作しなかった("superfetch could not be disabled at the beginning of the test run"という謎のエラーでそもそもテストが一つも実行できない)。これについては現在UL Benchmarkに問い合わせ中だが、今のところ返答はない。3DMarkの方は問題なく実施できたので、何が問題なのかいまいち不明なままであるが、この辺はいずれ製品版でのテストが可能になった時点で再度結果をお届けできればと思う。

その他の環境は表1の通りである。

■表1
ROG Zephyrus G14
CPU Ryzen 7 4800HS
BIOS GA401IV.209
Memory Micron 8ATF1G64HZ-3G2J1×2
DDR4-3200 CL22 8GB×2
Video GeForce RTX 2060 with MaxQ 6GB GDDR6
GeForce Driver 442.23 DCH
Storage Micron 2200 MVMe SSD 512GB(M.2/PCIe 3.0×4)
OS Windows 10 Home 日本語版 Version 1909 Build 18363.752