秋元康氏が総合プロデュースする「22/7(ナナブンノニジュウニ)」は、11人のメンバーと、彼女たちが演じるキャラクターで構成される「デジタル声優アイドル」だ。一般的なアイドルのようにリアル空間でライブ活動するだけでなく、モーションキャプチャを使ってそれぞれのキャラクターをバーチャル空間で演じてもいる。
2018年7月7日から2019年12月28日まで放送されたバラエティ番組『22/7 計算中』では、彼女らが演じるキャラクターとして出演。そして、2020年1月11日からは、グループ結成までのストーリーを描いたテレビアニメ『22/7』がスタートした。テレビアニメでは、オープニングテーマとエンディングテーマを22/7が担当する。
だが、22/7メンバーの活動は、それぞれのキャラクターを演じるだけにとどまらない。2019年8月14日、15日に行われた高校生のeスポーツ大会「STAGE:0」では、「マルチアングル配信」でメンバーが出場選手を応援。2019年12月28日、29日に開催された高校生のeスポーツ大会「全国高校eスポーツ選手権」では、22/7が「応援サポーター」に就任し、出場選手の応援をするとともに、eスポーツの魅力をわかりやすく観客や視聴者に届けていた。
そこで今回、22/7のリーダー「佐藤麗華」を演じる帆風千春さんに、eスポーツの仕事をして感じたことや、挑戦してみたいeスポーツ関連の仕事に加えて、グループでの活動、テレビアニメの見どころなど、いろいろとお話を伺った。
メンバー5人で『LoL』のチームを組んでみたい
――「STAGE:0」と「全国高校eスポーツ選手権」と、2019年はeスポーツ関連のお仕事をされたと思います。間近で高校生の試合をご覧になった感想を教えて下さい。
帆風千春さん(以下、帆風):もともとゲームが好きで、実況動画なんかもよく見るんです。なので、今回eスポーツのお仕事をいただけてすごいうれしかったですね。
eスポーツはテレビや配信などで少し見たことがある程度の知識だったんですが、応援サポーターとしてハイレベルな試合を目の当たりにして、競技としてのアツさを体感しました。私が普段楽しんでいるRPGとはまた違うおもしろさがあった印象です。
私が応援させていただいた『リーグ・オブ・レジェンド(LoL)』は5人チームでプレイするタイトルだったので、チーム競技としての熱もあって新鮮でした。スポーツと呼ばれるのも納得の盛り上がりだったと思います。
――印象に残っているシーンはありますか?
帆風:全国高校eスポーツ選手権で優勝したN高校さんは、「STAGE:0」でも優勝していたので、選手の名前も印象に残っていました。「あ、まりも選手だ~」みたいな感じで。また、eスポーツでは男性が活躍しているイメージだったんですが、N高校さんには女性プレイヤーのshakespeare選手がいて、見ていて応援したくなりましたね。
ほかにも、選手が必死にプレイしている表情とか、あきらめることなくチームで向かっていく姿勢にも心を打たれました。ずっと「がんばれ、がんばれー!」って、同じ応援サポーターの白沢かなえちゃん(丸山あかね役)と応援していました。
――お仕事を通じて、eスポーツに対するイメージの変化はありましたか?
帆風:最初、eスポーツってすごく難しそうなイメージがありました。でも、それだけじゃないなって気づいたんです。もちろん、ハイレベルなプレイをするのは難しいでしょうし、相当練習しなければならないと思うんですが、試合は見ているだけで夢中になれました。
また、自分も『LoL』で遊びたいと思うようになって、実際「STAGE:0」のあと、家に帰ってすぐパソコンに『LoL』をインストールしたんです。パソコンのスペックが足りていなかったこともあり、インストールして満足しちゃっていましたけど(笑)。
そのあと、全国高校eスポーツ選手権で、GALLERIAさんにゲーミングPCをお借りしたので、ようやく『LoL』を遊べるようになりました。普段は「ケネン」というネコの忍者を使っています。すごくかわいいんですよ! 「STAGE:0」で活躍していたのを覚えていて、真っ先に開放しました。対人戦はまだ怖くてできないので、「AI戦」モードばかりやってます。
――メンバーと一緒に『LoL』をプレイすることはありますか?
帆風:まだメンバーと一緒にはプレイできていないんですが、白沢かなえちゃんと宮瀬玲奈ちゃんは、「STAGE:0」と全国高校eスポーツ選手権で一緒に『LoL』を応援していて、みんなそこで『LoL』にハマったんです。あと2人メンバーを誘って「チーム組みたいよね」って話してますよ。
まずは、全国高校eスポーツ選手権で『ロケットリーグ』の応援サポーターを担当した海乃るりちゃん、倉岡水巴ちゃん、高辻麗ちゃんを引き抜こうかなと。もともと、『ロケットリーグ』は実況動画を見るのが好きだったので、そちらも楽しそうだなって思います。
――部活としてのeスポーツが少しずつ定着しつつありますが、学生時代にeスポーツ部があったら入部したいと思いますか?
帆風:積極的に参加すると思います! もともと、新作ゲームの出た次の日は、学校をズル休みしてずっと遊びたいくらいゲームが好きなので(笑)。ゲーミングPCを一定期間貸し出してもらえるサードウェーブさんの「eスポーツ部発足支援プログラム」もあって、環境的にも恵まれていますし、部活でゲームできるのはうらやましいですね。
――今後eスポーツ関連でやってみたい仕事があれば教えてください。
帆風:もっと詳しくなって、eスポーツの番組に出られるようになりたいです! あとは、先ほどお伝えしたように、メンバーとチームを組んで『LoL』の大会に出場してみたいですね。
――ゲームといえば、グループのゲームアプリ『22/7 音楽の時間』がリリースされる予定ですね。どんなゲームか教えていただけますか?
帆風:「22/7 音楽の時間」は、メンバー11人全員が登場するリズムゲーム。22/7の楽曲をゲームで楽しめます。もしかしたら、ほかのいろんな楽曲をプレイできるかも……?
いまはボイスを絶賛収録中なんですが、プレイヤーに対するボイスに加えて、メンバー同士の掛け合いも楽しめます。ストーリーもしっかりしていて、テレビアニメ『22/7』では描かれない彼女たち11人の関係性や姿を見られると思います。
実際、私たちもテストプレイさせていただいて、開発のかたとの意見交換を行いました。メンバーもこんな機能あればうれしいとか、好き放題言ってますよ。要望を出せるのはいちゲーム好きとしてうれしいですね。
――帆風さんはどんな要望を出されたのでしょうか。
帆風:私は、ユーザーから楽曲のリクエストを受け付ける企画があったらおもしろそうって伝えました! 「なるほど~」とおっしゃってましたが、それが実現するかどうかはまだわかりません。
――ゲーム内の佐藤麗華の見どころを教えてください。
帆風:テレビアニメ『22/7』は、グループ結成前から結成直後までのお話なので、麗華ちゃんも最初は警戒心が強くて、ツンツンしているんですが、ゲームはそのあとのお話。メンバーとの関係性もできてきて、リーダーとしての振る舞いや悩み、年相応の女の子らしい一面なんかも見ていただけるとうれしいです!
帆風さんの演じる佐藤麗華は“あこがれの女性像”だった
――では次にグループについて教えてください。帆風さんは22/7で「佐藤麗華」というキャラクターを演じていますが、配役が決まったときはどのようなことを感じましたか?
帆風:22/7は、いまでこそ11人のキャラクターで活動していますが、最初はキャラクターが8人しか決まってませんでした。それに対してオーディションに合格したメンバーは11人。まずは暫定的に配役が割り振られたんですが、佐藤麗華ちゃんにはメンバーの海乃るりちゃんがついて、私は何の役もなかったんです。
一定のレッスン期間を経てから、動画配信で配役発表が行われました。役をもらえるように必死でレッスンに取り組んでいたので、配役が決まったときは本当にうれしかったんですが、自分が佐藤麗華を演じるとは思ってなくて、配役を聞いたときは、「え、私が佐藤麗華を演じるんだ?」という驚きが大きかったですね。
最初は、自分が兵庫県出身だということもあり、関西弁キャラの河野都ちゃんを希望していましたし、優等生設定の佐藤麗華ちゃんは自分にとって“あこがれの女性像”だったこともあって、正直想定外でした。
――あこがれということは、帆風さんはあまり優等生キャラではないのでしょうか?
帆風:全然違います! 真逆ですよ。末っ子なので、どちらかというと人に甘えるタイプ。率先して手を挙げるタイプではありませんでしたし、ゲーム出たらすぐ休みますし(笑)。
ただ、麗華ちゃんの役をいただいたことは、自分が変わるきっかけになりました。「麗華ちゃんに見合う人間になるために、変わっていかなきゃ」って思うようになったんです。見える世界もきっと変わるからと。それからは、グループのリーダーとしての立ち位置を意識して行動したり、積極的に自分から発言したりするようになりました。
――配役が決まったころと比べて、自分の成長したと思うところはありますか?
帆風:最初は「佐藤麗華ちゃん」がどういった子なのかわからなくて、ずっと手探りの状態でした。特に、あこがれが先行していたこともあって「彼女はどう感じるだろうか」ばかり考えていましたね。
でも、たとえば、リーダーとして感じる自分の葛藤は、麗華ちゃんにもあるんだと思えるようになったんです。真面目なので気負いすぎる側面もあるのでしょうが、自分が感じたことは彼女も同じように感じるはずだと。なので最近では、自分の感情も佐藤麗華に反映していけるようになりましたね。
なかでも、22/7が出演するバラエティ番組『22/7 計算中』のおかげで、「佐藤麗華」のキャラクターが醸成されていったと思います。『計算中』は台本がないので、最初は何を話すにしても「間」ができてしまっていました。優等生のイメージに縛られすぎて、「佐藤麗華はなんて言うだろう」と考えすぎたうえで、すごい真面目な返答しかできなかったんです。
スタッフさんから「麗華ちゃんがアイドルとしてバラエティ番組に挑戦するってなったら、きっとバラエティに対してもがんばる。それに、優等生の麗華ちゃんも1人の女の子。驚いたら驚いていいし、嫌なことあったら嫌な感情にもなる。それを素直に出していけばいい」とアドバイスいただいて。1つのことにとらわれすぎないことも大事だなと学びました。
――あこがれの女性像である佐藤麗華に、近づけたとは思いますか?
帆風:え!? それはどうでしょう? う~ん……、いやいや、まだまだ恐れ多いですよ。これからも一緒に歩いていければいいなとは思っています。