高級タイプのレンズを中心に、着々とラインナップを増やしつつあるキヤノンRFマウント。その顔ぶれを見ていると、いよいよ今年開かれる東京五輪におけるプロの利用を見据えているのかなと思います(本当は、公式スポンサーでもあるラグビーW杯にも間に合わせたかったのでしょうが……)。
EFマウント版よりも広角側が1mmワイドに
RFマウントの交換レンズは、“大三元ズーム”の一角として望遠ズームレンズ「RF70-200mm F2.8L IS USM」が登場しましたが、ひと足先に販売が始まったのが広角ズームレンズ「RF15-35mm F2.8 L IS USM」です。
キヤノンの一眼レフ用の広角ズームは、さらに広角寄りの「EF11-24mm F4L USM」というキワモノもありますが、F2.8通しの「EF16-35mm F2.8L USM」がIII型まで登場するほど長く定番の座にありました。それが、今回のRFマウント版で久しぶりに1mmワイド化。15mmの水平画角は100度、対角線は110度もあります。対する16mmは水平96度、対角線107度。焦点距離の差はわずか1mmですが、この違いは決して小さくありません。
大口径の広角ズームレンズ、ワイド側は1mm違うだけでサイズがかなり変わってきます。しかし、このRF15-35mm F2.8Lは、EF16-35mm F2.8L III USMと比較すると全長は0.7mm短縮。重さこそ増えていますが、その差はたった50gです。ミラーレスは、一眼レフに比べてマウント(カメラとレンズの接合面)とセンサーの距離が短いのが特徴です。その恩恵により、1mmワイド化して光学式手ブレ補正機構まで内蔵しても、サイズを維持できたのでしょう。
レンズの設計や製造技術は日進月歩で、しかもミラーレス化で設計の自由度が増したため、EF16-35mm F2.8L III USMより光学性能は確実に上だと感じます。実際に撮影してみると、逆光への強さにはとにかく驚かされました。画角が広くなれば、太陽や光源が画面に写り込む確率も高くなります。そこでこのレンズでは、SWCやASCといった特殊コーティングを施し、逆光時のゴーストやフレアを徹底して抑えています。これはヌケの良さにもつながり、青空や緑がクリアで鮮やかに再現されました。
広角レンズでは目立ちやすい歪曲や周辺光量低下もほとんど見られず、ひと昔前の広角ズームでは期待できなかった良好なボケ味まで兼ね備えています。カメラ側の補正機能も働くため、写りがよいのはすべてレンズのおかげともいい切れませんが、少なくともボケ味は補正機能でどうにもならない部分。これがすばらしいということは、「すっぴんもきれいなレンズ」といってよいと思います。
価格もそれなりではありますが、仕上がりを見るときっと満足できる一本ではないでしょうか。
-
超広角レンズを使わざるを得ない状況で、被写体を不自然にゆがませたくないということもあります。垂直に気を付ければ、広角であることを意識させずに広い範囲を捉えることができました(EOS R使用、ISO100、1/60秒、F4、19mm)
-
建物の全体を写そうとすると、標準ズームの広角側でもガードレールなどが手前に入ってくる場面。目の前の歩道から超広角で撮影すると、このように障害物を避けて写すことができます。隅々までシャープなのも心強いです(EOS R使用、ISO100、1/60秒、F5.6、15mm)
-
ワイドマクロは、風景撮影でよく使われる表現のひとつ。主題に近寄りつつ背景を広く取り入れます。F2.8という明るさがあれば、このように大きくボカすこともできます(EOS R使用、ISO160、1/30秒、F2.8、15mm)
-
手前のものは大きく、遠くのものは小さく写るという超広角レンズの特徴を生かすため、壁(画面左端)をレンズに近付けて撮影。リズミカルな線がアクセントになりました(EOS R使用、ISO160、1/60秒、F5.6、15mm)

著者プロフィール
鹿野貴司
1974年東京都生まれ。多摩美術大学映像コース卒業。さまざまな職業を経て、広告や雑誌の撮影を手掛ける。日本大学芸術学部写真学科非常勤講師、埼玉県立芸術総合高等学校非常勤講師。