PFUが「Happy Hacking Keyboard」(以下、HKKB)のラインナップを一新、3グレード / 16モデルを発売した。一見したところ旧製品とと大きく変わらないようだが、果たして。1996年発売の初代HHKBを購入して以来、歴代製品を文字通り使い倒してきた筆者がどう見てどう感じたか、ありのままにお伝えしよう。

  • Type-C接続になった「Happy Hacking Keyboard」

3グレードそれぞれに「味付け」あり

新HHKBのラインナップは3種類。静粛性と高速打鍵性能で優るフラッグシップグレードの「HYBRID Type-S」とスタンダードグレードの「HYBRID」、エントリーグレードの「Classic」。

いずれもキーボード構造にはシリンドリカルステップ構造(キー各列の段差とキートップの傾斜角度により指先に沿うような凹型を描く構造)を採用、キースイッチは静電容量無接点方式とHHKBの伝統を継ぐが、ストロークの深さがHybrid Type-Sとそれ以外では微妙に異なるなど、グレードごとの味付けが施されている。

旧製品からの主な変更点は、有線(USB)と無線(Bluetooth)の切り替えなどインターフェイスの改良とカスタマイズ性向上だ。USB端子がType-Cに変更されたほか、最大4台まで登録できショートカットキーで切り替え可能なBluetoothマルチペアリングを利用できる(従来はUSBかBluetoothか、どちらかのモデルしか用意されていなかった)。HYBRID Type-S / HYBRIDでは、Windows版ソフトを利用するとキーアサインを自由に変更できる「キーマップ変更機能」もサポートされる。

一方、HHKBのアイデンティに関する部分については、少なくともスペック上は大きな変更が見られない。ほぼA4半分のサイズと19.05mmのキーピッチ、静電容量無接点方式、シリンドリカルステップ構造、3段階のチルト切り替え機構は、2003年発売のHHKB Professional以来変わらず、メンブレン方式 / シリンドリカルカーブド構造の初代HHKBと比べてもコンセプトは共通している。HHKBのような“職人の道具”という側面を持つデバイスにとっては、むしろ新機能より重要な部分といえる。

キータッチは、歴代のHHKBと似てやや軽め。それでいて確かなクリック感があり、しかも指先に負担にならない程度のストロークの深さと適度な重みがある。キーボード本体にも適度な重量があって滑り止めが施されており、キーを強めに叩いてもビクともしないところも従来どおりだ。そう、これこれ、これが仕事用のキーボードだよ、と独りごちてみたりする。

  • 試用したフラッグシップグレード「HYBRID Type-S」

  • 右上には「Type-S」の刻印が

  • 引き続きシリンドリカルステップ構造を採用

  • 3段階のチルト切り替え機構も従来どおり

打ち心地は洗練、小気味よい入力

ところで、筆者がHHKBを使い始めたのは、90年代後半のこと。NeXTSTEP時代から(今なお)Emacsに依存しているため左手の“手クセ”が強く、Aキーの左横にControlキーがなくては仕事にならないことから、Macに移行してしばらくはNeXT ADBキーボードで凌(しの)いでいたが、よりよい道具を探し辿り着いたのが初代HHKB。以来、「Lite(2)」や「Professional 2」などを買い足したり使い潰したり、アクセサリの「Happy Hacking Cradle」やキャリングケースを購入したり。気がつけば20年の月日が流れていた。

それにしても、新HHKBの触り心地は洗練されている。キーストロークの適度な深さもあるが、高速入力時の音はパタパタではなくコッコッ、勢いよく叩いたときの音もパシッではなくタンッと小気味よく、その気にさせてくれる。日頃ノートPCの(キーストロークの浅い)キーボードを利用する時間が長いユーザにとっては、使い始めこそ違和感があるだろうが、1週間もすればこの快適さに気付くに違いない。

  • 比較的状態がいい筆者所有の「Lite 2」(他のHHKBは使い込み過ぎていてお見せできない)

  • 海外取材で活躍した「Happy Hacking Cradle」とIBM WorkPad。まだ動く!