2019年のカメラ業界を振り返ってどう感じているか、2020年のカメラ業界に何を期待するのか、どのような変化を見せてくれそうだと思っているか、業界通のカメラマンにまとめていただきました。まずは、衝動買いでおなじみの落合憲弘カメラマンです。
気になるカメラはいくつか登場した
品川の合戦(東京・品川に本拠を置くキヤノン、ソニー、ニコンが見せる三つ巴の戦い)に門真の藩(パナソニック)が遠く大阪から殴り込みかけ、いよいよフルサイズミラーレスの本格的戦国時代が幕開けかっ!? まずは、そんな1年になるような気がしていた2019年だった。ソニーが逃げ足を早めるのは当然として、キヤノンとニコンはどう出る? 何ができる?? パナソニックの参戦は、3社アライアンスというスタイルを含め結構インパクトのある出来事だったのである。
そして、何はともあれパナソニック「LUMIX S1」シリーズの画作りには目からウロコだった。あの仕上がりが得られるなら、あの大きさ&重さにも十分、納得だ。とはいえ、スナップ好きのワタシに常用する自信はございませんが……。一方、キヤノンの一眼レフ「EOS 90D」は、あくまでも個人的にはキヤノン製APS-C一眼レフの集大成であると捉えている。今後のラインアップがどうなるのか気にさせる存在でもあるということだ。
ニコン「Z」は、後半戦になって唐突に登場したAPS-C機「Z 50」にビックリ。Zはフルサイズ一本で突き進むと勝手に思い込んでいたからである。でも、実際に使ってみてコレまた納得、しかもベタ惚れしちまった。D750以来だなぁ、ニコンのカメラを2台買いした(!)のって。
富士フイルムでは、「X-T30」の登場が悔しくて嬉しいという、X-T20を所有する身ならではの複雑な喜び方で身悶えることに。今のトコロ買い足しや買い換えには至っておりませぬが、正直ココロ穏やかではございませぬ。
そして、ソニーの優位性は、大方の読みどおり不変だった。2019年も「α」は安定の地位を維持し続けた印象なのだ。追っ手の伸ばした手の先にαはすでにおらず、逃げる背中のサイズはまだ小さい。でも、どういうワケか「α9 II」と「α7R IV」へのトキメキはかつてほどではなかったんだよなぁ(自分比)。なぁーんていう現実を踏まえると、2020年に向けて一番の爪痕を残したのって結局シグマの「fp」だったってこと? うわあ。これって「いま」だよねぇ。3年前には想像できなかった流れだ。
2020年は一眼レフの動向にも注目すべし
というワケで、いざフタを開けてみると、戦国時代と表現するにはチト無理がありそうな、全般的には盛り上がりに欠けるように感じられた2019年だった。いろんなところからほころびが見えてきて何だかヘナチョコなことになりそうな某オリンピックとか、亜熱帯と見まがうゲリラ豪雨や台風の勢力、そしてダメ押しのごとき消費税の増税。改元というシャッターチャンスは、すべての写真愛好家に等しく訪れていたわけなのだけど、現実にはいろんなことが重くのしかかり、どうにも未来に光明を見いだしにくい1年だったというほかはないだろう。腹立たしさや守りの姿勢、その他さまざまな要素が先に立ち、気持ちに余裕を持てなかったのは、決してアナタだけではなかったハズなのだ。
ワタシ個人の中では、オリンパスのヘビーデューティーコンデジ「TG-5」を「TG-6」の発表直前に何も知らず意気揚々と購入してズドーンと落ち込み、「GR III」を手にしたときだけ別人になれることを知り、最終的にZ 50に手を出してウヒョヒョの大波乱。あえて総括するなら「いつもどおりだった」以外のナニモノでもナイのだけど、2020年はいよいよ一眼レフの行く末を見極めなければならない年になりそうな気がしている。
新たなフラッグシップ一眼レフの両雄がどのように受け止められることになるのか。一眼レフにおいてフラッグシップ以外の提案はあるのか? ミラーレス機の利便性を採り入れる方向性(ライブビューの実用性向上)は必須の要件であると想像できるけれど、生真面目な進化を続ける一眼レフにイマドキのユーザーがどの程度、興味を示しどの程度、必要性を感じるのかについてはまったく想像がつかない。価格設定にしてもまたしかり。得も言われぬ恐怖心を抱きながら新製品発表を待つのは初めての経験だ。こりゃドキドキ、ビクビク、胸きゅんケツムズな「2020」になりそうだわい。
著者プロフィール
落合憲弘(おちあいのりひろ)
「○○のテーマで原稿の依頼が来たんだよねぇ~」「今度○○社にインタビューにいくからさ……」「やっぱり自分で所有して使ってみないとダメっしょ!」などなどなど、新たなカメラやレンズを購入するための自分に対するイイワケを並べ続けて幾星霜。ふと、自分に騙されやすくなっている自分に気づくが、それも一興とばかりに今日も騙されたフリを続ける牡牛座のB型。2019年カメラグランプリ外部選考委員。