ゲームにおいて「音」がどのくらい重要か、考えたことはありますか? 特に筆者が普段プレイしているFPSゲーム(一人称視点のシューティングゲーム)では、目でとらえる情報だけでなく、銃声や足音といった耳でとらえる情報が非常に重要な役割を担います。かすかな音を察知できるか否かで、戦況が大きく変わることも少なくありません。

では、どのようにして音を正確にとらえればいいのでしょう。答えの1つはイヤホンやヘッドホンにこだわること。戦況を判断できる音質があるか、遮音性が高く環境音でプレイが阻害されないか、そもそも自分の耳にフィットするかなど、いくつかの要素をしっかりと満たしたうえで最適なアイテムを選ぶべきだと思います。

しかし、普段生活をするなかで多くのイヤホンやヘッドホンを試す機会はあまり多くないのではないでしょうか。そこで今回、バトルロイヤルゲーム『PUBG MOBILE』を1,000時間以上プレイしてきた筆者が、いくつかのイヤホンを試してみて、『PUBG MOBILE』のゲームプレイでどのような違いがあるのか調査してみました。

まずは「10,000円以下」を条件に、4製品で“聴きイヤホン”を実施。あくまで個人的な使用感ですが、ゲーム向けのイヤホン選びの参考にしてもらえると幸いです。端末は10.5インチの「iPad Pro」を使用しました。各製品の実勢価格は2019年12月時点のものです。

  • さっそくイヤホンを装着して『PUBG MOBILE』に挑戦

銃声の低音域が響く「ATH-LS50」

最初に、オーディオテクニカの「ATH-LS50」を試してみます。価格はオープンで、市場価格7,000円前後です。1つのユニット内に同調する2つのドライバーを内蔵した8.8mm径「“Live Tuned” デュアル・シンフォニックドライバー」を搭載。ケーブルは着脱式で、コネクタはオーディオテクニカ独自のA2DCを採用しています。A2DCコネクタのケーブルを交換すれば、音質を変えることも可能です。

  • オーディオテクニカのATH-LS50

このイヤホンで『PUBG MOBILE』をプレイしましょう。プレイヤーとの撃ち合いに突入すると、銃声の低音域が響き、耳に残りやすい印象を受けます。ただ、音質はややこもり気味にも感じました。

プレイ面では、平原地帯の戦闘において、伏せている敵からの攻撃を受けてしまいました。わずかな音ではありましたが、正確な位置はつかめなかったということですね。銃声自体は耳に残りやすいので、敵が保有している銃の種類を聴き分けるのは簡単でした。近距離戦闘が得意な人や、遠くの敵は相手にしないスタイルの人に向いているでしょう。

遮音性はバッチリ。外部からの音声は聞こえにくく、ゲームに支障が出ることもないと思います。屋外での使用にも適していると感じました。

乾いた音が特徴の「SE-CH5T」

次に手に取ったのは、パイオニアの「SE-CH5T」です。こちらも価格はオープンで、市場価格は5,000円前後。9.7mmドライバーを搭載し、8Hz~45,000Hzのハイレゾ帯域再生を実現します。

  • パイオニアのSE-CH5T

再び『PUBG MOBILE』をプレイ開始。今回は乾いたような音が特徴で、銃声が弾けたように聴こえます。ゲーム内での距離が遠くなるほど音はぼやけていき、100mほど離れると、銃声元を把握するのは難しいと感じました。

オーディオテクニカのATH-LS50と比較すると、低音域が弱く、銃声が軽い印象を受けます。「耳に強い低音が響くのが苦手」という人には向いているでしょう。足音の方角はしっかりと把握できるので、敵の接近にはバッチリ対応できました。

また、金属音が強いため、マークスマンライフルの「mini14」など比較的高音域の銃声は聴き分けやすく、音源をつかむのも容易でした。車両であれば、バギーなどエンジン音が軽い車両の音が強めに聴こえます。

遮音性については、そこまで高くはない印象です。周囲の環境音までは聞こえませんが、会話が若干耳に入ってきました。騒音がある場所での使用は、ゲーム音を阻害する恐れがあるかもしれません。ただし、耳への圧迫感はなく、軽い気持ちで使えるのは大きなメリットだと思います。

金属音が目立つ「EP-630」

3つめに試用したのはクリエイティブメディアの「EP-630」。価格は2,500円前後です。人間工学に基づいたソフトなシリコン製イヤーピースを採用し、ドライバーには9mmネオジウムマグネットドライバーを搭載します。

  • クリエイティブメディアの「EP-630」

EP-630で『PUBG MOBILE』をプレイしてみると、パイオニアのSE-CH5Tのような乾いた銃声が響きます。低音よりも金属音が目立つように感じました。また、ゲーム内で敵から50m以上離れると音源の範囲がほやけるので、離れた場所から敵が撃ってきた場合は、位置の特定が少し難しいでしょう。

具体的には、高音域の音が強いことから、パイオニアのSE-CH5Tと同様に「mini14」の音は聴きとりやすいのですが、長距離射程武器のスナイパーライフル(SR)とは相性が悪いかもしれません。

また、3サイズのイヤーピースがあるものの、個人的にフィットするものがなかったためか、比較的外部の会話が耳に入ってきました。

クリアな音質の「HA-FX87BN」

4つめに、JVCケンウッドの「HA-FX87BN」を試してみます。価格は8,500円前後。高磁力ネオジウムマグネットを採用したドライバーを搭載するBluetooth接続タイプのワイヤレスイヤホンで、対応コーデックはSBCです。ノイズキャンセリング機能ONの状態で、約5時間の連続再生を実現します。

  • JVCケンウッドの「HA-FX87BN」

『PUBG MOBILE』をプレイしてみると、クリアな音質で強く耳に響くことはありません。ただし、Bluetooth接続であるためか、音が0.1秒ほど遅れて聴こえてくるのが気になりました。3発連続で銃を撃ったら、1発遅れて銃声が聴こえるイメージです。

FPS以外のゲームやライト層のプレイヤーであればまったく気にならないレベルですが、わずかな音の遅れが命取りになるシーンもあるので、コアなFPSプレイヤー層は有線接続タイプがいいでしょう。

遮音性については、外部の会話が少し聴こえてくる程度。そこまで大きな音でなければ、音漏れすることもないでしょう。

FPSで重要な音の要素とは

FPSで重要なのは「聴きとりやすさ」と「重低音の響き」の2点。聴こえかたは人によって異なりますが、特に、索敵に直結する足音や銃声の方向がしっかり判別できるのものが好ましいと考えます。銃声の高低は、迫力ある戦闘を体験するか、軽めの乾いた音を求めるか、好みに合わせて選ぶのがいいでしょう。

また、ゲームメーカーが銃声や足音をゲーム内の距離でどのように反映させているか詳細なデータがないため、判断は個人の感覚的なものになってしまいますが、高価格帯のイヤホンを使用してプレイすることの多い筆者にとって、10,000円以下のモデルでも十分戦えると思えました。予算と好みに合わせて、ともにドン勝を目指す相棒を見つけてほしいと思います。