IT・テクノロジー分野で活躍するライター・関根慎一さんが、2019年に買ったデジタル製品の中で満足度が高かったというVR HMD「VALVE INDEX」。ハイエンド機に“先行投資”したことでVR体験の質はグッと上がったようです。

VALVE INDEX (2019年11月発売)

今年もいくつかの機材やガジェットを購入しました。手元に機材が増える理由は、業務上必要に迫られたり、ご縁があってお譲りいただいたり、いつのまにか購入手続きが終わっていたりなど様々ですが、今年の買い物を振り返ってみると、欲しくて手に入れた製品がわりあい多かったように思います。その中のひとつが、米ValveのPC向けVR HMD「VALVE INDEX」です。

  • VALVE INDEX

    VALVE INDEX

VALVE INDEXはデジカが日本代理店として2019年11月から国内販売しており、VR HMD単体の価格は税別62,800円。左右コントローラー(税別35,800円)もセットにしたモデルは税別94,800円です。さらに、別売のベースステーションを2個同梱した「VR KIT」(税別125,800円)が用意されています。

筆者は以前から、米Oculusが2016年に発売したPC向けVR HMD「Oculus Rift(CV1)」(以下、Oculus Rift)を使っていました。長く使っているとどうしても不満が出てくるもので、特に気になっていたのが「解像感」と「スクリーンドア効果」。ありていに言えば「画質」です。スクリーンドア効果とは、ディスプレイの網目模様が見えてしまうことで、解像度が高いほど網目模様は気にならなくなります。

Oculus Riftは片目あたり1,080×1,200ドットの解像度、90Hzのリフレッシュレートだったのに対し、VALVE INDEXでは片目あたり1,440×1,600ドット、そして開発用ながら最大144Hzまで対応しています(通常は120Hz動作)。

2つのVR HMDを実際に使い比べてみると、世代の違いが如実に感じられます。筆者はVR HMDでは主にゲームを遊ぶのですが、HMDを一段上の製品に替えたことで、ゲーム内に登場するキャラクターや道具、風景の輪郭がよりはっきりと視認できるようになり、没入度が上がった感覚が得られるようになりました。

  • VALVE INDEX

    VALVE INDEXの接眼レンズ上部にイヤホンジャックがあり、内蔵ヘッドホン以外のイヤホンなどが使える

  • VALVE INDEX

    VALVE INDEXの本体前面にある、開発者向けの拡張デバイス用スペース。手と指をトラッキングするセンサー「Leap Motion」などの拡張デバイスを接続できる

いち早く新しいVR体験がしたい!VALVE INDEXに“先行投資”

単に画質が上がっただけでもVRの世界はかなり変わったと感じますが、VALVE INDEXでは手に持つコントローラーも進化しています。具体的にはコントローラーを持った五指の動きをトラッキングしてくれるようになりました。筆者が以前に使っていたOculus Riftでも、コントローラーを持った状態で人差し指と親指、中指の状態をある程度コントロールできましたが、薬指と小指は「開く」か「握る」かのどちらかの動きしかできませんでした。

  • VALVE INDEX

    手指の状態をトラッキングできるコントローラー。五指すべてを離しても落ちないようグリップストラップがついている

五指の動きが重要なコンテンツは、「VR Chat」などのコミュニケーションプラットフォームを除けば、現状ではほとんどありません。しかし、ゲームとは異なる用途、例えばVtuberのようなアバターの表現力を向上させるには、VALVE INDEXのようなコントローラーはきわめて有用ですし、あるいはテレイグジスタンス(*)の分野では、ユーザー側のフロントエンド用に比較的安価に手に入るデバイスとして普及する可能性もあります。そういった体験に乗り遅れないためには、多少高くついても新しいデバイスを持っておくのが大事だと思って購入した次第です。

(*)テレイグジスタンス:VR HMDなどの機器を使って遠隔地にいるロボットを「自分の分身」として操作し、操作者自身があたかも遠隔地にいるかのような体験をするための技術・概念

ワイヤレスで快適、手頃なHMD「Oculus Quest」も欲しい

VALVE INDEXは、映像と音声を伝送するケーブルをPCに接続して使います。VR体験においてケーブルの存在はマイナス要素ではありますが、映像表現の面でコンテンツに一定のクオリティを求めるなら有線のVR HMDを使う必要があるでしょう。ゲームタイトルの数も、まだまだ有線VR向けの方が豊富です。

一方で、画質がそれほど重要ではないコンテンツならば、単体でVR体験ができる「Oculus Quest」(64GBモデル:税込49,800円)のようなケーブルが無いVR HMDという選択肢もあります。特に、Oculus Questは対応スマートフォンやハイエンドPC、別体のセンサーが不要で、スペースさえあれば手軽にどこでも使えて、何よりケーブルが無いので邪魔にならないメリットもあります。こうした快適度の違いは「VRを楽しむ」という観点では、想像以上に大きな違いなのです。

  • Oculus Quest

    単体でVR体験ができる「Oculus Quest」(左)。右はPCと有線接続するタイプの「Oculus Rift S」

有線接続が必要なVR HMDと単体で使えるVR HMDは、ケーブルの有無によって「画質」と「快適度」のトレードオフがあります。筆者は映像クオリティを優先してVALVE INDEXを選びましたが、正直Oculus Questも買ってしまいそうです。

VRは「体験」するメディアであり、そこから生まれる楽しさや感動は、既存のメディアでは伝えきれるものではありません。もしVRに興味があれば、その入り口として、ぜひ「Oculus Quest」を探してみてください。そして、ミドル〜ハイクラスのVR HMDに興味が沸いてきたら、「VALVE INDEX」を購入候補に加えてみてはいかがでしょうか。

製品のラブ度 ★★★★★ (画質の満足度は高い)
製品のオススメ度 ★★★☆☆ (高価なのでちょっとオススメしにくい)
【関根慎一 プロフィール】フリーライター。2008年インプレス入社。Web媒体編集者などを経て、2013年より独立。写真映像、IT、機械、通信分野を中心にテクノロジー系媒体で取材・編集・執筆を担当する。