東証の適時開示情報を基に経営権の異動を伴うM&A案件(グループ内再編を除く)について、ストライク(M&A Online)が集計したところ、2019年10月のIT・ソフトウエア業界のM&Aは2015年、2016年、2017年と同数の6件で、2008年以降の12年間では最も少なかった2008年の5件に次ぐ低い水準となった。

2018年1月以降の月別でも2019年6月と並び、最も少なかった2018年3月、2018年6月の4件、2018年4月の5件に次ぐ件数となった。M&A市場は活況が続いているものの、今年9月の件数が過去2番目の高水準(18件)だったため、10月はその反動が出たとみられる。

一方、金額は313億円で、2013年の2384億円、2015年の1224億円、2012年の512億円に次ぐ4番目に高い水準だった。100億円を超える案件が2件あったため、金額が膨らんだ。

  • IT・ソフトウエア業界 M&Aの推移(金額)

金額トップはSCSKの208億円

10月のM&Aで金額が最も多かったのは、SCSKが10月30日にソフト開発やシステム運用管理を主力とするMinoriソリューションズ(東京都新宿区)に対してTOB(株式公開買い付け)を行うと発表した案件。買付期間は10月31日から12月12日までで、現在10.45%の持ち株比率を100%に引き上げ、完全子会社化を目指す。買付代金は最大約208億円。SCSKは子会社化を機に、Minoriソリューションズとの一体的な事業運営を行い、営業、マーケティングなどの事業を強化する。

2番目は富士フイルムホールディングスが10月24日に子会社の富士ゼロックスを通じて、オーストラリアのオフィスITサービス企業CSG(メルボルン)の買収を提案した案件。買収金額は約1億4100万オーストラリアドル(約105億円)で、2020年2月の買収完了を見込む。

CSGはオーストラリアとニュージーランドを拠点に主に中小企業約1万社にオフィス向け出力機器やITサービスを提供している。大手企業を主要顧客とする富士ゼロックスは中小企業に強みを持つ同社を傘下に取り込むことで、経済成長が続くオセアニア地域での事業拡大を目指す。

このほか取得金額を公表していない案件として、NSDによる米国の日系企業向けを中心にITシステムの開発やコンサルティングを手がけているJapan Tech(ニュージャージー州)の子会社化。エボラブルアジアによるバンク(東京都渋谷区)の後払い専用オンライントラベルサービスアプリ「TRAVEL Now」事業の取得。豊田通商によるITインフラ関連子会社ISAO(東京都台東区)の譲渡。フィックスターズによるSider(東京都渋谷区)のコードレビュー自動化ツール「Sider」事業の取得があった。