ファーウェイ・ジャパンが14日に発表した新スマートフォン「HUAWEI nova 5T」。SoCにはファーウェイのKirin 980、メモリは8GB、ストレージは128GBと、ハイエンドスマートフォンにも引けを取らないスペックを備えながら、実売想定54,500円(税別)というミドルレンジの価格を実現しています。

  • HUAWEI nova 5T

    米国による禁輸措置の影響を受けないタイミングで開発されたnova 5Tは、OSにはAndroidを搭載し、Googleサービスにも対応。今後のアップデートも計画されています

nova 5Tは、約6.26インチで2,340×1,080ドットの液晶ディスプレイを採用しています。上位モデルのように有機ELディスプレイではありませんが、明るくはっきりとした表示。ベゼルも最小限で、大画面ながら、意外にコンパクトな印象です。インカメラはパンチホール型なので、ほぼ全面ディスプレイなのも使いやすそうです。

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    片手でも持ちやすいサイズ

本体側面には電源ボタン一体型指紋センサーを搭載。側面の指紋センサーといえば、ソニーモバイルコミニュケーションズのXperiaシリーズが思いつきますが、nova 5Tも同様の仕組み。約0.3秒という高速なロック解除、としています。

背面のセンサーとは異なり、本体を持ち上げる必要がないのでロック解除はしやすいのですが、最近はディスプレイ内にセンサーを内蔵したインディスプレイ指紋センサーも増えています。個人的にはこちらの指紋センサーが扱いやすく感じていますが、慣れてしまえば、端末の横位置にある電源ボタン一体型の指紋センサーも便利です。

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    本体側面。音量ボタンと電源ボタン一体型指紋センサーは右側に配置

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    本体上部と底部。USB Type-C端子は22.5Wの超急速充電に対応。30分で50%まで充電できるそうです

本体背面には4つのカメラが並びます。背面は反射の強い光沢のあるデザイン。光が放射状に反射するので、ちょっと派手な印象です。カラーはミッドサマーパープル、クラッシュブルー、ブラックの3色。

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    インカメラはパンチホール型で、サイズは4.5mmとのこと。最小限のサイズに収まっており、極力目立たないように配置したそうです

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    本体背面。カメラから放射状に光が伸びるようなデザイン

背面にある4つのカメラでは、4,800万画素のメインカメラと1,600万画素・画角117度の超広角カメラ、通常はこの2つを使います。3つ目のカメラは被写界深度補助カメラとなっており、被写体までの測位用に使われます。

さらに4つ目として、マクロカメラを搭載。200万画素ですが、4cmまで近寄れるというのは面白い特徴です。ファーウェイのスマホで上位モデルなるP30 Proでは、超広角カメラとデジタルズームで同様のスーパーマクロを実現していましたが、nova 5Tでは専用のマクロカメラを搭載しました。

4cmまで近寄るとなると、自分やスマホ本体の影がかぶりやすくなって意外と難しいのですが、被写体にグッと寄った迫力ある写真が撮れるのは大きな魅力。撮影モード「その他」から「スーパーマクロ」を選べばカメラが切り替わるようです。

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    カメラのインタフェース。被写体を認識して、撮影設定を自動で適用するAI機能を搭載

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    スーパーマクロを設定すると、4cmまで近づいた近接撮影が可能です

夜景モードもあり、暗所での撮影に有効です。UIとしては上位モデルと同等で、連写合成によって明るく見栄えのする夜景撮影が可能。手軽に夜景が撮影できるのは、ファーウェイのスマホらしいメリットでしょう。

さらに、ISO102400という超高感度での撮影に対応しているのも見逃せません。見た目に真っ暗な環境でも、かなり明るく撮影できるレベルです。連写合成を併用しているのか、ノイズレベルも抑えられています。夜景モードと使い分ければ、暗所撮影で威力を発揮しそうです。

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    夜景モードのUI。シャッタースピードとISO感度を調整できます

発表会のタッチ&トライで「箱の中」を撮影してみたところ、あまりに暗いシーンのため、29秒という長時間露光になりました。こんなシーンでは三脚が必須ですが、街明かりくらいの明るさがあれば、数秒のシャッタースピードになっても手持ち撮影が可能なようです。

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    プロモードにすると、ISO感度を手動で変更できます。最高ISO感度はISO102400

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    実際の作例。ここまで明るく写りました。超高感度ですが、画像合成によって低ノイズを実現しています

被写界深度補助カメラを搭載したことで、ポートレート撮影にも強く、背景ボケがより自然になります。メインの被写体と背景の、細かい境界も割と正確に分離してくれるので、活用したくなります。全体的にはシャープネスが高めの傾向があるので、スマートフォンの画面だとかなり「映え」ます。

動画の機能では、上位モデルが持つ「AIポートレートカラー」を搭載しました。被写体のカラーを保持したまま、リアルタイムに被写体以外をモノクロ化し、印象的な動画を撮影できます。このあたりは、NPU(AI処理用のプロセッサー)を2つ備えたSoC、Kirin 980を搭載したおかげでしょう。上位モデルと同等のSoCを、5万円台というミドルレンジの価格を積んできたのが、nova 5Tの大きなメリットのひとつです。

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    ポートレートモードの作例。かなりシャープネスが高めですが、背景のボケは比較的自然です

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    AIポートレートカラーでは、被写体以外がモノクロになります

【動画】AIポートレートカラーを使った動画の作例。やや誤認識もありますが、リアルタイムでここまでの動画を撮影できます。手軽に面白い動画を撮れそうです
(音声が流れます。ご注意ください)

現在、日本のスマートフォン市場は、高価格のハイエンド機と2万~3万円台のエントリー機という2極が人気。その中で5万円台というnova 5Tは、やや中途半端な位置づけにも感じます。例年この時期には、ハイエンドのMateシリーズを投入していたファーウェイですが、最新モデルのMate 30 ProはGoogleサービスを搭載できなかったため、このタイミングでの投入が見送られたのでしょう。

こうしたことから、開発時期の関係でGoogleサービスを搭載できたnova 5Tをリリースしたと考えられます。とはいえスペックや機能面では、nova 5Tは上位モデルとしても十分に通用するレベル。コストパフォーマンスの高い製品といってよいでしょう。