米Pegaraは9月12日(日本時間)、同社のクラウドサービスである「GPU EATER」の機能拡張及び同クラウド基盤を使用する人工知能APIサービスの開発を目的に、総計104万米ドルを超えるシードラウンドの資金調達を実施した。投資家からの累計調達額は約153万米ドルになるという。

  • AI・人工知能EXPO 2019におけるさくらインターネットブースの様子

今回のラウンドには、元スカイプジャパン代表の岩田真一氏が立ち上げたプログラマ起業家支援に特化したという投資ファンドであるMIRAISE、GPUによる演算力シェアリングプラットフォームを展開するA.L.I. Technologies、メルカリの創業初期メンバーの1人である胡華氏らを含む個人投資家数人が参加したとのこと。

同社は、「人工知能の恩恵を、すべての人に。」という方針の下で、ディープラーニング(深層学習)技術のコモディティ化を促進する事業を展開している。

2018年3月に同社が提供開始したGPU EATERは、ディープラーニングのデータサイエンティストが直面するという演算リソース不足を補うためのクラウドサービス。開始から約1年半が経過し、これまでに米NVIDIAや米ブラウン大学らを含む、40か国300以上の顧客が利用しているとのこと。

同サービスは、米AMD製のGPUをディープラーニング向けにクラウド提供したことで話題を呼んだ。研究施設や企業からの引き合いが増加しているという。

なお同社は、創業以来継続しているというディープラーニング研究により蓄積したノウハウを基に開発した「人間の年齢・性別・感情を推定するデモンストレーションアプリ」を、2019年4月に東京ビッグサイトで開催したAI・人工知能EXPO 2019のさくらインターネットブースへ提供した。

また、2019年5月に新潟県新潟市で開催した第33回 人工知能学会全国大会に、「人間の顔をリアルタイムにアニメ顔へ変換するエンジン」を使ったデモンストレーションを出展した。

同技術は、まだ世界的にも確立しているとは言えないという「敵対的生成ネットワーク」(GAN)の1つである「Cycle GAN」と呼ばれる手法を用いており、同社ブースを訪れたディープラーニング領域の専門家たちから同社の技術力を高く評価する声を受けたとしている。

ディープラーニング技術の急速な進化に伴い、多くの企業がディープラーニング技術を、コスト削減を含む生産性の向上のために取り込もうという動きが加速しているといい、こうしたニーズへスピーディに対応していくため、同社はGPU EATER基盤を利用した人工知能APIサービスの開発を進めているとのこと。

一方、これらの開発を加速させるためは優秀な人材の確保が急務といい、今回調達した資金を基に採用を進める計画だという。

グローバルチーム基準の組織を構築するため、内外の優秀な大学・大学院を卒業した英語話者または日英バイリンガルのデータサイエンティスト及びエンジニアを中心に採用する方針としている。

GPU EATERへの引き合いが増加しているとしつつ、自社で演算資源を大量に所有するには限界があるとし、GPUによる演算力シェアリングプラットフォームを展開するA.L.I. Technologiesと提携し、同社が所有する演算資源をPegaraの顧客に提供するための検討を開始しているとのこと。

その第1歩として、日本ディープラーニング協会の主催で現在開催中のCDLE ハッカソンにおいて、A.L.I. TechnologiesとPegaraの100%子会社であるペガラジャパンが共同スポンサーとして、同ハッカソンで利用するGPU搭載サーバを参加全チームに提供しているという。

また、A.L.I. Technologiesはエアーモビリティ社会の実現を目指し、ホバーバイクや管制システムなど次世代交通インフラの構築事業に取り組み、公道を走れるホバーバイクである「Speeder Series」の開発企業である同社は、ドローンの活用にも力を入れており、既に多くのノウハウを蓄積しているとしている。

今後、同社の持つドローンへの知見・技術とPegaraの人工知能を組み合わせたソリューションの共同開発も視野に入れているとのことだ。