さる8月28日、オークが販売する3DCGソフト「Pixologic ZBrush」のモデリング機能である「ZModeler」を使って、モデリングにチャレンジするワークショップ「フルカラー3Dプリント ZBrushワークショップ」が、東京都渋谷区のFabCafe MTRL(MTRL TOKYO)にて開催された。

同ワークショップの講師を務めたのは、Pixologic公認インストラクターであり、ZBrushCore超入門講座やZBrushCore書籍などを手がける、デザイン事務所HOPBOXの福井信明氏。

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    FabCafeの1階には、物語に溢れた福井氏による作品群がフルカラー出力で展示されていた

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    ワークショップの講師を務めたHOPBOX 福井信明氏

会場となったFabCafe MTRLは、3Dプリンタやレーザーカッターを使ってものづくりができるカフェ「FabCafe」の2階にあり、1階のカフェスペース入り口では福井氏の作品展「透明も色も3Dプリントされた展示会~福井信明 極彩色 造形作品展~」が9月6日まで開催されている。

会場には、フルカラー出力で3Dプリントされた長辺20~30センチの作品群が、所狭しと展示。ミマキエンジニアリングのフルカラー3Dプリンタによって「透明」な部分も組み合わせることなく(一体となって)出力されており、室内の窓ガラスやステンドグラス、水中に漂う生物などがリアルに表現されていた。

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    窓ガラスや水中などの透明部分もアルに表現されている

ZModeler初心者がオリジナルの自動車にトライ

開催されたワークショップは、参加者が3DCGソフト「ZBrush」の新ブラシ「ZModeler」の使い方を学びながら、約3時間でシンプルな自動車のモデリング制作を行うもの。作成した3Dデータは、フルカラー3Dプリンターで立体作品として出力され、後日受け取れるという流れだ。

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    10名がワークショップに参加した

ワークショップに参加したのは、仕事でゲームデザインや3Dキャラクターを制作している人、別の3DCGソフトは扱えるがZBrushも扱えるようになりたいという人、趣味で3DCGをはじめたが途中で挫折してしまった人、ZBrushを使い始めて1年ほど経つもののZModelerの機能の勉強をしにやってきた人、自分で作成した3Dモデルを3Dプリンターで出力してみたものの思いどおりの作品ができず悔しい思いをした人など、多少なりとも3DCGソフトに触れたことのある10名(男性4名、女性6名)。募集時の参加対象は「ZBrush/ZBrushCoreの基礎操作ができる方」となっていたが、ZBrushに触れるのは初めてに近いという人がほとんどだった。

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    参加者が3Dモデリングに使用したワコムの液晶ペンタブレットとASUSの15.6型ノートPC

実践のレクチャーでは、参加者一人ひとりに貸与されたワコムの13.3型液晶ペンタブレット「Cintiq 13HD」と、ASUSの15.6型ノートPC「ROG Strix SCAR III G531GV」または「ROG Strix Hero III G531GV」を使って、真剣な表情で3Dモデリングに励んだ。

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    ZModelerでは「六面体からすべてのものをつくる」練習が大切だと語る福井氏

六面体からすべてのものをつくる

福井氏は講義の冒頭に、ZModelerでは「六面体からすべてのものをつくる」という練習が大切だと断言した。また。ポイント、線、面のそれぞれに機能が用意されており、ハイライトして機能を呼び出すことが操作の要だとも語った。そして福井氏は、1つの六面体から上面、左面、右面の3面を押しだして「凸」のような形状をつくり、「これが、皆さんがこれからチャレンジする自動車モデルの基本です」と説明した。

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    この「凸」のような形から自動車に仕上げていく

その後、ダイナミックサブディビジョンで角張った形状に丸みを付けるテクニックや、ギズモでモデル全体の幅を調整する方法、エッジをモデルの中央に追加するコツ、そしてダイナミックサブディビジョンに頼らずに自然な曲面を作り出す方法、エッジを追加して形状を整える方法、ソフトデフォーマで形状をより滑らかに変更する方法などを練習。

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    福井氏の話を熱心に聞く参加者たち

福井氏は「ギズモとマスクを併用して作業すること」、そして「はじめは最小限の面で可能な限りキレイな形状を作り、限界に達した段階で細かく分割していくこと」が、ZModelerでの作業のポイントだと説明した。

続いて、左右対称モードを有効にして自動車に「窓」を作る方法や、ボディの形状を変えないように内側に厚みを付けるテクニック、窓枠部分をシャープにする方法、「タイヤ」や「ホイール」の作り方や位置の調整方法、「ヘッドライト」の描き方、そして最後にタクシーの屋根に付いているような行灯の付け方などを解説した。細部ができてくると、最初はただの六面体だったものから“自動車”の形が明らかに浮かび上がってくる。

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    1つの行程ごとに参加者の手元をチェックして丁寧にアドバイスする福井氏

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    少しずつ自動車の形に近づいていく

参加者は福井氏の話に耳を傾けながら、実際にひとつずつ作業を行い、それぞれが思い思いの自動車を作り上げていった。福井氏は、1つの工程を説明するたびに参加者の手元をチェックして周りながら質問に答え、わかりにくい操作などを丁寧にアドバイスした。

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    タイヤの作り方を解説する福井氏

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    完成まであと1歩!

最後に自動車のボディ全体、ヘッドライト、窓枠、行灯などパーツ毎に色を設定し、ひとおとり作業が完了した。参加者のなかには、作成したばかりの3Dモデルの画面をスマートフォンで撮影する人や、USBメモリにコピーして持ち帰る人もいた。

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    完成作品をスマホで写真に収める参加者

残念ながら、フルカラー3Dプリンタで出力した作品の引き渡しは後日であったため、この日は出力された作品を見ることができなかった。

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    今回、福井氏が作成したお手本の自動車

このイベントで印象的だったのは、多くの参加者がワークショップの休憩中や終了後もZBrushについて質問したり、メモを取りながら作業する人もいたり、あるいは個人で3Dプリントをした場合の料金を訊ねたりと、3Dモデリングへの意気込みと真剣さがひしひしと感じられたことだ。参加者の一人は「一度は3DCGを挫折したが、またやる気が湧いてきた」と語っていた。

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    熱心にメモを取る参加者

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    今回、参加者が制作した3Dモデルの例

3DCGは「まず楽しむこと、そして作品を作ること」

ワークショップを終えた福井氏に、3DCG制作のコツやZBrushのお勧めポイントなどを聞いた。

――福井さんは3DCG制作をするときに、ZBrush、ZBrushCoreをメインで使用されているとのことですが、同ソフトを使いはじめたキッカケは何でしょうか?

もともと、他のポリゴンモデリング系ソフトをいろいろ使っていました。特に不満はありませんでしたが、2003年にモデリング方法においてまったく別のアプローチができるZBrushと出会い、とても引きこまれました。絵を描くように、粘土や彫刻での造形のようにアナログ感覚で、あっというまに形を作ることができたからです。そもそも「絵を描くことが好き」ということがスタートでしたので、見事に自分の創作スタイルにフィットしました。

――ZBrushのお気に入りポイントはどこでしょうか?

様々なツールが「アナログ感覚」でのアプローチであると思います。そもそも数値性があまりないので、割り切って「目分量」で作業をどんどん進められるところが好きです。 手早く、形をイメージに近づけていけるツールが揃っていると感じています。スムーズに完成へたどりつけるワークフローが構築しやすいと思っています。「しっかり細かく作り上げる」こともできますし、「ラフスケッチ」のようにひとまずイメージを手早く形にすることもできます。

――福井さんが3D作品を制作するにあたって、最も力を入れている点と、苦労していることを教えて下さい。

まず苦労を感じたことはないです。作品制作は喜びそのものです。力をいれているのは「心象風景」「世界構築」をどう表現するかが、自分のアーティストとしてのテーマです。「そこに別世界がある」「そこにいるキャラクターに何か物語を感じる」という作品にしたいです。

――作品を3Dプリンタで立体出力するときに失敗しないためのコツや、難しい点があれば教えて下さい。

「3Dプリントする」と決めている作品制作では、重力と強度との戦いです。立体造形物として、安定しているように感じるように全体のフォルムを決めます。直接的に苦心してることは、どう分割するか、どこにサポートをつけるかですね。

――最後に、これから3DCGを始めようとしている人に向けて、メッセージがあればお願いします。

まず楽しむこと、そして簡単なものでも、「作品」を作ることを優先すると良いです。機能習得を急がずに、入門・初級あたりの機能のみでたくさんの「ごくシンプルな作品」を作っていくことをお勧めします。そしてじわじわと習得する機能を追加してくと良いです。ZBrushで言えば、数種類のブラシと、視点の操作だけでデフォルメした動物などをいくつか作ってみるととても楽しいです。

――ありがとうございました。

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    参加者全員にプレゼントされた、福井氏の作品「タコちゃん(小)」(ミマキエンジニアリングのフルカラー3Dプリンターで出力)